「貴族探偵対女探偵」
貴族探偵を名乗る謎の男が活躍する、本格ミステリーシリーズ。今回は新米女探偵・高徳愛香が、すべてにおいて型破りな貴族探偵と対決! 期待を裏切らない傑作トリックの5編を収録。
あの貴族探偵に対抗する女探偵・・・といえば、超美人のお姉さまで頭キレキレ・・・みたいなのをイメージしてましたが、そういや推理するのは使用人だった・・・。そして、肝心の女探偵はめっちゃ真面目でわりとナーバスな駆け出し探偵の女性でした。色気がなさすぎて、女性なら誰でもカモン!な貴族探偵も食指が動かないのか!?手のひらで踊らされている愛香が不憫でした。
前作と違って、今回の題名は和風ですねえ。
「白きを見れば」愛香は友人のいわくつきの別荘を訪れる。彼女の別の友人グループもいる中、殺人事件が発生する。うーん、愛香の推理もいいセンいってるだけに残念です。愛香が事件に遭遇→女性をはべらせた貴族探偵登場→愛香推理(大体貴族探偵が犯人)→使用人が推理→愛香敗北・・・のパターンでこれ以降の話も展開していきます。愛香はある大物探偵に弟子入りして探偵修行を積んでいたのですが、大物探偵が病気により亡くなってからは独立して探偵業をしている模様。とにかく真面目な彼女と対照的に、どこまでも自由な貴族探偵がうらやましい。笑。
「色に出でにけり」気に入った男性と自由に交際する依子。そんな彼女と交際している2人の男性が家族の集まりに招かれる。片方の男性が殺され、愛香は依頼を受けて捜査を開始するが・・・。第三の恋人として登場する貴族探偵。もう、モラルも何もあったもんじゃありません。被害者が殺害前に行っていた姓名判断で気付いた真相が、きれいにまとまっていて好きです。
「むべ山風を」大学に光るキノコの研究を見学に行って、殺人事件に巻き込まれる愛香。被害者はゼミの学生。使用済みのカップ。分別を間違えて捨てられたティーバッグ。断水。そしてキノコ・・・は関係ない!今度は助教授の彼氏として登場する貴族探偵。ここでの貴族遊び(お茶をカップからカップに飛ばすゲーム?)がこのあとの話の伏線となっていたことに感心。ええっと、コレ痴情のもつれでしたっけ?貴族探偵が、ティーバッグの紅茶なんか飲まないよ失敬だな君、と怒っている場面の方がインパクト強すぎ。笑。
「幣もとりあへず」友人のつきそいで、神様がおりてきて願いを叶えてくれるという旅館に泊まることになった愛香。しかし、参加者の1人が遺体で発見される。「こうもり」を思い出す叙述トリック。最初は、やられたというよりは、普通に間違えてんじゃないの?と思いました。当然、間違えているはずもなく。ここまで疑いを抱かせないなんて、なんかずるいなあと思ったり。いや、油断していた私が悪いのです・・・。
「なほあまりある」差出人不明の手紙と、相場の何倍もの依頼料につられて上流階級の一族の別荘にやってきた愛香。そこで、使用人と親戚の1人が殺害される。今回は嵐の孤島で、さすがのスーパー使用人も登場することができず。やっと愛香の推理が日の目を見るときが来た!・・・と思いきや、貴族探偵のジャイアン的理論で脱力の最終話。薔薇から発展した推理は美しかったです。
愛香が登場したためか、使用人の影が薄かったような気が・・・。ちゃんと仕事してるのに・・・。そして今回も女性を口説くどころか、彼女とイチャイチャしているだけの貴族探偵が一人勝ちでしたとさ。
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