「銀の犬」
この世に想いを残す魂を解き放つ伝説の祓いの楽人(バルド)オシアン。妖精にしか伝わらない歌の数々をも口伝されたといわれる彼は、相棒のブランとともに、救われぬ魂や悪鬼を竪琴の調べにのせて解放していく。
ケルト民話をベースにしたファンタジー。
私の光原さん作品に対するイメージは「十八の夏」「最後の願い」のミステリー色が強いです。本作がファンタジーだという予備知識はあったのですが、「大丈夫かいな」という心配を持ちつつ読み始めました。しかし・・・これがとても良かった!
若干謎解きの部分はあるのですが、素直なストーリー展開で、ミステリーとしては物足りないですが、ファンタジー風味を損なわない加減で良かったと思います。前から透明感のある文章だとは思っていたのですが、さらに磨きがかかっています。幻想的な森も、のどかな田園風景も、鮮やかな色を持って目の前に浮かんできます。
情緒たっぷりなのですが、最後の最後のヤマ場で、ブランが亡霊に状況説明をしてあげるところで、ちょっと萎えてしまうのが残念!大枠は理解できるので、細部は読者の想像に任せた方が良かったのではないかと。「実は、誰々はこう思ってて、こういう行動をとってー」という説明は、この物語では無粋だなあと感じました。
ほんの小さなすれ違いから離れ離れになった恋人達。傍から見てると簡単なようでいて、いざ当事者に回ると、すべてを解決する魔法のような「たった一言」がなかなか伝えられない。もどかしくも、優しくて美しい物語たちです。猫スキーとしては、トリーの出番が増えそうな続編が楽しみです~。
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