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読書の記録です。

「風味絶佳」

山田詠美/文芸春秋

孫にグランマと呼ぶことを強要する祖母は真っ赤なカマロの助手席にボーイフレンドを、バッグには森永ミルクキャラメルを携え、70歳の今も現役ぶりを発揮する。表題作ほか、お互いにしかわからない本能の愛の形を描いた珠玉の6篇。

表題作「風味絶佳」は、映画「シュガー&スパイス」の原作だそうで。予告編を見たんですが、全然雰囲気がかぶらなーい。気になってた映画なだけに、微妙な先入観を持ってしまったことが残念・・・。
さて、本編は・・・。表題作が一番読んでいておもしろかったです!特におばあちゃんがキュート。同性として、将来、こんな風に得体の知れない魅力にあふれたおばあちゃんになりたい。笑。駆け引きは難しい・・・。でも、他の短編における現実感の希薄な女性たちのなかで、乃里子さんは、唯一現実に近いと思った。そういう意味で好感が持てます。
で、一番考えさせられたのが、「春眠」。自分の同級生で、片思いをしていた女性が、自分のお父さんと結婚したよーっていう話です。常識的に考えれば、「みっともねえよ」(半分は嫉妬)っていう章造君の気持ちが、ごもっとも。でも、この話では、彼の考え方は大人気ないとして、疎外されていきます。そこに、なんとも言えない歯痒さを感じます。もし、自分の片親が私と同い年の人と再婚すると言い出したら、私も反対する。私より若かったら、縁を切る。でしょう。それは、刹那的な感情だけで決めていいことではないよ。彼女が、彼の良き理解者であったとしても。
大人になればなるほど、自分達の世界だけで完結できる恋愛って無くて、周りの人に影響を与えていってしまうんだ。どうか、責任ある行動を。


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