「鳩とクラウジウスの原理」
恋愛に縁のない青年・磯野の新しい職場は「鳩航空事業団」。そこでは鳩が恋文を運ぶ伝書鳩サービスを提供している。ある日、伝書鳩が「クラウジウス団」なる連中に拉致されてしまう。かくして鳩を巡るナンセンスな闘いが幕を上げた。
またまた題名インパクトで選んだ本。理系作家さんですねー。
クラウジウスの原理というワードを知らなかった・・・。えー、これは熱力学第二法則の一つで、「熱を低温の物体から高温の物体へ移動させ、それ以外に何の変化も起こさないような過程は実現不可能である。」ということ。つまり、「熱は高温の物体から低温の物体へ流れていく」ということで、えーっとこれがどうして「恋愛において女性は易きへ流れていくものである」という話になるのか?という疑問が・・・。 そもそも、女性が易きに流れるって言うけどさあ、当事者になろうとせず、傍観して不満を言っているだけの自分達の方がよっぽど「易きに流れている」と思わない?
主人公は広告代理店に勤める磯野。そこに、大学時代の友人ロンメルと犬さんが転がり込む。なし崩しに3人の共同生活が始まる。そんな中、磯野は鳩航空事業団にスカウトされるが、伝書鳩郵便はクラウジウス原理主義者の会の妨害にあっていた。で、このクラウジウス原理主義者の会というのが、磯野たちが大学時代に結成していたサークルで、今もロンメルが代表を務めている。
私は、主人公とロンメルの戦いみたいなものを期待していたのですが・・・。それよりは、社会に飛び出して2、3年目の葛藤というか悩み?仕事に対する意義や、社会と自分とのギャップ、恋愛に対する羨望?まあそのようなものがごった煮になったようなお話でした。むむむ。入り込めないー!書評では「主人公のモノローグが核である」と書いてあって、確かにそこだけ浮いてるんですね。私には、全体的なカラーと合ってない上に、なんでここだけセピアな感じにしたのか、意味がわかんなかったですけどね。とにかく、散漫。この一言に尽きると思う。
登場人物はみな個性的で、それはおもしろかったです。特に、不思議少女の犬さんがかわいかった。これ同性だからかわいいって言えますけど、彼女だったらかなり振り回されるな・・・。最後はそれぞれ新しいスタートをきる、という前向きな終わり方で読後感は良かったかな。あのカップルはいつの間に?という疑問は残りましたが・・・。
私としては、伝書鳩でラブレターを送ろうぜ!っていう「鳩恋」のコンセプトが好きだったので、もっと鳩郵便に重心を置いて欲しかったなー。それじゃあ青春小説にならないけどさ。世界観はなかなかに好きなので、次回は設定をもっと生かした作品を書いて欲しいな。
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