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読書の記録です。

「顔のない敵」

石持浅海/光文社

カンボジアでNGOのスタッフ・坂田とアネットは対人地雷の除去作業中に、爆発音を聞く。駆けつけた2人が見たものは、頭部を吹き飛ばされたチュオン・トックの無惨な死体だった。これは、純然たる事故なのか?表題作を含め、「対人地雷」をテーマにした6編と、処女作で編まれた短編集。

対人地雷と言えば。
大学時代、共同論文を書きました。内容はもうあやふや。笑。その時、新しい技術についての章で“対人地雷除去の技術開発”案を出したのですが、ものの見事にスルーされ、某大企業の新しい生産ラインにすりかえられたという苦い記憶があります。後者の方が、経済学部的テーマに合っていたんだろうな、と納得することにしました。
“未来へ踏み出す足”で、対人地雷除去の技術が取り上げられていて、なんだかうれしかった。私が興味を持った事は、おかしいことではなかったんだなあと思えました。それだけで、ありがとう、という気分です。
こんな話から始まると、誤解を招きそうですね。笑。本書は決して、地雷解説書ではなく、対人地雷に関係する人が主人公のミステリーです。対人地雷に関する解説はありますが、ウンチクではないので、非常に読み易いですよ。というか、皆さんに知ってもらいたい話ばかりです。
対人地雷が殺人の道具に使われているのは、1作だけ。それが、意外であり、読んでいておもしろかったです。対人地雷に対する皮肉のようにも見えます。トリック自体は素直なものが多かったと思います。
ただ1つ残念なことが。「水の迷宮」でも感じたことなのですが、全編を通して(処女作も含めて)犯人に対して優しすぎるんですよね。基本的には、「犯人はおまえだ!でも、その事情は理解できる。後はあなたが思うように行動しなさい。(犯罪には目をつぶる)」。うーん、納得できない・・・。納得はできないですが、この点を差し引いても、最終的に、おもしろいことに変わりはないので、おすすめですよー。


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