忍者ブログ
読書の記録です。

「樹霊」

鳥飼否宇/東京創元社

植物写真家の夏海は北海道の撮影旅行中「巨木が数十メートルを移動した」との話を聞き日高の奥へ。その森はテーマパークのために乱開発されていた。開発反対者が失踪し、墜落死体が発見され、夏海は〈観察者〉探偵・鳶山に助けを求める。

舞台は北海道だー。私、一人旅ができる女になって、流氷と屋久杉を見にいきたいと思っていたのですが、屋久杉の方は人がたくさん来ることによって、生態系が狂っちゃってるみたいですね。観光地になるってそういうことなんだよな。本当に、自然を愛するなら何人も入れないようにするべきなのかもしれない。
作中でも、乱開発は問題になっています。有意義なテーマパークなんて、この世に存在しないよなー。動機は、「そんなことで」と思う反面「でも、理解できるかも」と行ったり来たり。自然のことを思っていても、犯人も含めて結局はみんなひとりよがり。そもそも、自然を守ろうと思うこと自体が思いあがりなんです。スーパーの袋を有料にするよりも、車に乗らない日を設けた方が、極論で言えば人類いなくなった方がよっぽど効果的だと思いますけど。ところで、少子化って問題でも何でもないですよね。誰が困ってんの。今だって税金上がってるじゃん。機械化が進んで仕事も少なくなってるし、人類減った方が地球もハッピーなんじゃないかなあ。
話が大分逸れましたが(笑)、巨木が移動する謎の導入はおもしろかったし、謎解きは無難でインパクトには欠けましたが、常識の範囲内に収まっていて良かったと思います。シリーズ初読なのですが、恋する猫田さんにものすごい違和感を感じました。その口調でときめかれても・・・。読み終わっても特徴を掴めず。どっちかというと、後半で出てきた鳶山さんの方がわかりやすい。鬼木君はオチも含めて、もっとわかりやすい。意外性の演出になってないし・・・。
北海道の地名って、独特な読み方をするんですよね。そういうのが残ってるのっていいなあ。流氷は諦めるにしても、イクラ丼を食べにいきたい。お土産は新巻鮭・・・。


「あたかも身悶えしながら天に救いの手を求めているような印象があった。傾き、捩れ、ひん曲がりながらも、大地にしっかと根を下ろしている。樹幹はいくつものいびつな瘤を抱え、樹皮は深くひび割れている。洞が開いている部分もあれば、枯死してしまった部位もある。それでも迫りくる老いには屈服しまいと、巨木は日光を求めて懸命に枝を広げていた。」


PR