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読書の記録です。

「ポケットは犯罪のために」

朝暮三文/講談社

古書店に宝石を隠した強盗の意外な結末、小説原稿を置き引きしてしまった男の不思議体験など、武蔵野の面影残る街で起きた事件の数々を、実験小説家の著者が「びっくりさせたれ」精神で描く本格ミステリー。

なんだこの表紙はっ!セクシーなメイドさんのパンチラなんて出てこないじゃないかっ!中身はめっちゃ本格ミステリーじゃないかっ!
と思ったのは、内緒の話。すっごくマイナーな香りのする表紙なのですが(笑)、中身はスタンダードなミステリーです。表紙に負けず、お手にとって頂きたいです。しかしながら、スタンダードと侮ってはいけませんよ。1編の完成度も良いのですが、全体を通した構成への伏線は実験小説家の貫禄が見られます。私はデビュー作が未読なので、あの表紙の折込部分の解説にはどきりとさせられました。本編を読む前に、ネットで作者の生死を調べたのはこれが始めてですよ!笑。
「J.サーバーを読んでいた男」「薔薇一輪」「函に入ったサルトル」が好きだなー。舞台は武蔵野のある商店街に固定されていて、あのクリーニング屋だ、とか気付くのもおもしろい。
本格ミステリーということもあり、浅暮さんの奇天烈な作品を想像していた私にとっては、やや物足りない感がありました。でも、すごくサービス精神が旺盛で、読者としては嬉しい限りです。一つの事柄を色々な方向から考察しあらゆる可能性を模索するのは、ミステリーの醍醐味ですよね。ああ、楽しかった!


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