忍者ブログ
読書の記録です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「首挽村の殺人」

大村友貴美/角川書店

岩手県の雪深い村・鷲尻村の診療所に、東京から医師・滝本がやってきた。滝本が村に赴任してから、村では謎の連続猟奇殺人事件が起こる。村の昔語りに秘められた陰惨な過去が、事件解決の鍵を握る!

第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
もう1冊の受賞作も読みたいのですが、より横溝っぽいこちらを優先しました。「ロストチャイルド」は、またの機会に・・・。
さてさて、物語は、凄惨な死体、そして村に到るまでの雪道を、車で走るシーンから始まります。もう、ここで私のハートは鷲掴みにされたのです。
さらなる胸キュンポイントが、滝本に仄かな思いを寄せる彩さん。女っ気が無くて、友人の佐枝が滝本と親しくしているのを見ては歯がゆい思いをする。ちょっとした期待をしては、がっかりする・・・。いやー、私、こういうの大好きやわー。少女コミック好きにはたまらんシチュエーションだわ。しかも、滝本が、ちょっとクールでいい感じなのです。突き放し方がひどい。笑。おっと、ラブコメ路線に走りすぎたな・・・。
本筋の殺人事件なのですが、たくさんの死人がでます。これは予想以上。
本物の熊が登場したことで、私の推理も右往左往。「犯人は、熊の着ぐるみを着ていたとしか思えない・・・!」という結論に行き着く始末。昔話になぞらえた殺人現場は、まさに横溝正史の世界。ただ、冒頭のシーンが赤熊の仕業だったという点が残念でした。この赤熊さん、犯人と同じくらい人を殺してます。なかなかの活躍です。
振り返ってみれば、最初の殺人以降はすべて口封じの為だったということですよね。なんだかなあ、と肩透かしをくらった気分でした。あとは、後半滝本兄妹の心理に深入りしすぎたかな、と。
とはいえ、2転3転と畳み掛ける展開は良かったし、何より雪で閉ざされた村の陰鬱な空気がとても好きでした。期待が大きすぎて、読み終わった直後は「なんか思ってたのと違うわ・・・。」と首をひねったものですが、読者の欲求すべてを満たす作品など、ベテランでもそうそう書けるものではない。これだけにとどまらず、いいところをどんどん伸ばして、色んな作品を発表していって頂きたいです。


PR