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読書の記録です。

「ボトルネック」

米澤穂信/新潮社

恋人を弔うため東尋坊に来た僕は強い眩暈に襲われ、崖下へ転落した。気づけば見慣れた金沢の街中に。自宅に戻ると、存在しないはずの姉に出迎えられた。ここは「僕の産まれなかった世界」らしい。

自分が世界にいなかったら・・・、と考える人はなかなかいないのでは。
考えたとしても、私がこの世界に産まれていなくても、大して変わりはないのではなかろうか、というところで終わりだと思う。まさか、自分がいないことで、世界が良い方に変わっているなんて、考えもしないだろう。ましてやリョウは、世界に無関心であることを身上として、流されるまま自分からは何もアクションを起こすことはなかったんだから。何もしなかったことが、マイナスの要因であったと知ったリョウの衝撃はかなりのものだと想像できます。振り返ると、世界にとって自分は存在しない方がいい、排除するべき邪魔なもの、ボトルネック、だと彼に突きつけるための物語です。なんて残酷な。
ただ、サキの世界でうまくいっていることがサキの言動のおかげだからといって、リョウの世界でうまくいかなかったことが、リョウの言動のせいだと結論付けるのは、私は間違いだと思うのですよ。彼はすごくネガなので、そう思っちゃったみたいですけど。大体、ノゾミ自身が、自分のあり方を人に求めるところが、もーダメダメなんだってば。お前が何になればいいかなんぞ、知るか!てめえで決めろ!って感じですよ。フミカが悪だくみしてるからって、旅行について行くなんて無理やし。それで、ノゾミに恨まれてもね、それは逆恨みですってば。・・・と、私がリョウ寄りの人間なので、ちょっと自己弁護してみました。
終わり方自体は、ブラックだけど気持ち悪くなるほどでもなく。しかしですね、タイミング良くリョウの携帯が鳴るところで、私の携帯もブーブー(マナーモード)震えたもんだから、どっきりびっくりして背筋が寒くなってしまいました。あれは怖かった・・・。
ところでところで、馴染み深いスポットがいっぱい出ていて、にやりとしてしまいました。ジャスコ周辺は生活エリアでしたから。懐かしいな~。


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