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読書の記録です。

「空の中」

有川浩/角川書店

200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?

夏の100冊より。今シーズンは、目玉のおやじのブックカバーを狙っています・・・!
読み終わって、これはSFの皮をかぶったラブストーリーだなあ、と思った。
私は大人コンビがたまらなかったのですが・・・。「ファイターパイロットの君」で出てきた武田三尉がいる!なんだこの2人。かわいすぎる。笑。スピンアウトを読みたいって思った読者の方々の気持ちがよ~くわかりました。そして、書いてくださった有川さんに感謝。もう1回読みたくなっちゃったよー。もちろん、若い2人も甘酸っぱくてよかったです~。書き下ろしの2人のその後。蛇足になりがちなのですが、これは良かった。
と、良かった良かった連発してますが、中盤まで瞬くんの物語が痛くて痛くて、仕様が無かった。途中で読むのをやめてしまおうかと思ったくらい。それは特にフェイクとの関係で、間違った方へ間違った方へシフトしていく彼の姿を読んでいられなかった。なんでそうなっちゃうの?って。フェイクがねえ・・・。もう、本当にかわいい奴だから余計にそう思ったのかもしれない。私、真帆には、あまり同情的ではないのですが・・・。でも、彼女もいくら賢くてもまだ子供であり、本当は大人に庇護されるべき立場だったのに、矢面に立って辛い思いをしたので、それは悲劇だなあと思います。しかし、同情はできないのよ・・・。
SF的側面の「白鯨」と名付けられた知的生命体とのやり取り。それをめぐる策略と思惑もおもしろかったです。ディックが分裂してから、それを多重人格になぞらえて統合の道を探すプロセスが興味深いところでした。進化の過程も無理なく受け入れられた。この設定を考えた有川さんは、本当にすごいな、と。現実と空想の境界がうまくとけあっている。
最後に、この本の屋台骨と言っても過言ではない、宮じい。こういう年のとり方をしたいものです。年をとってるからえらいんじゃない。経験に裏打ちされた言葉だから響くんだと思う。大げさにとか、えらそうにでもなく、ただ淡々と事実のみを語る宮じいの言葉は、深い。
これは、オススメです。もう、ほとんどの人が読んでると思うけど!笑。


「僻むなって。僻んだ奴は伸びないって。」


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