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読書の記録です。

「ミミズクと夜の王」

紅玉いづき/アスキー・メディアワークス

魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。

一時期、多くの読書ブログで見かけた本。ライトノベルでありながら、表紙は良く見るアニメ絵ではなく、挿絵もない。そして、物語もライトノベルというよりは、ファンタジーというくくりの方がしっくりきます。そのため、普段ラノベを読まない人も読んだりして話題になったようです。いつものことながら、タイミングを大きくはずしている私・・・。
ミミズクは、村で奴隷として扱われていたけど、ある日その村が盗賊に襲われた騒ぎの最中に逃げ出します。そして、自らを食べてもらうため、魔物が巣食う森を訪れるのです。ミミズクは、ヒロイン(?)らしからぬ風貌で、恋だとか愛だとか言う前に、生きるか死ぬかの状態。・・・というのは、私が読んでいて感じたことで、本の中のミミズクは実にマイペース。自らの境遇をあっけらかんと話し、フクロウに「あたしを食べて」とお願いする。ミミズクは少し言葉足らずで、知らない語彙や感情がたくさんあって、それがミミズクを能天気に見せていて、私が彼女をかわいそうだなあと感じる原因なのでは?と思った。
アン・デュークとオリエッタのエピソードは、それだけで一話できてしまいそうな深さがあった。深さを予感しただけに、物語の中では断片しか垣間見ることができず、そこがちょっと消化不良気味で残念だった。まあ、こればっかりはしょうがないわなー。その辺、世界観がぼやーっとしているのですが、これも一つの味というところでしょうか。
後半、オリエッタがミミズクに「女の子はね・・・恋をすると、みんな馬鹿になるのよ」というシーンがあるのですが、恋という言葉とは無縁な物語の中で、その言葉がすとんと受け入れられたんです。ミミズクはフクロウに恋をしていたのか。そうか、これは2人の恋のお話だったのか!と。フクロウめっちゃツンデレですけど。いや、ただのシャイボーイか?私は、このわかりにくい優しさはとってもツボなんですけどね~。
紅玉さんは、次の本もラノベで出されているようで、これも読むのを楽しみにしています。痛いけれど、優しい。痛いから、優しい。これから、どんな物語を紡がれるのか、注目していきたいと思います。


「あたしが死んだら、この森の土に還って。土になり、花になって、あなたの隣で咲くんだわ。・・・・・・・・・・・・ずっと、ずっと、傍にいる」


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