忍者ブログ
読書の記録です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「八日目の蝉」

角田光代/中央公論新社

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。

浮気をしていた父親は、とてもひどい男で、一瞬希和子に同情してしまうような構図を見せています。しかし、冷静になれ。どんな人間であろうとも、子供にとってたった一人の父であり母であるのだ。彼女がどんなに辛い思いをしたからといって、子供を本当の親と引き離す権利などない。誘拐は犯罪。と正論を並べて、希和子に肩入れしないように頑張った。そうしないと、彼女の味方をしてしまうくらいに、彼女は母親らしい母親だったのだ。実際、戸籍がないまま成長したら、今後えらいことになるので、早く捕まってよかったんだろうけど・・・。読んでいるときは、できれば、逃げ切って欲しかったような気がしていました。うーん、それくらい幸せそうだったんだよね。やっぱり肩入れしてるわ・・・。
第2章では誘拐された子供、恵理菜のその後が語られています。事件は、彼女と家族のその後の人生を、大きくゆがめてしまったのだなあ、と改めて思わされるエピソードでした。もしかしたら、事件が無かったとしても結果は同じだったかもしれない。それでも、許されることではないのだよなあ。再会した千草が、恵理菜を一生懸命支える姿がとても好きだった。私は、恵理菜のうつむき加減なところが好きになれなかったのだが、千草と交流を深める内に、だんだんと前向きになっていく彼女を感じることができて良かった。
最後に思ったんだけど、希和子って、自分のしでかしたことに対してあんまり罪悪感を持ってないような気がするんだよね・・・。いや、これは私が鈍いのかもしれませんが・・・。物語全体にわたって、女性が主役。母性についてちょっと考えさせられました。


PR