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読書の記録です。

「沈黙博物館」

小川洋子/筑摩書房

博物館専門技師の僕は、老婆の博物館を作るため、ある村を訪れる。老婆の理想とする博物館とは、形見の博物館であった・・・。

小川イヤー作戦を着々と遂行しております。
博物館専門技師・・・という謎の職業の主人公。学芸員のようなイメージで読んでいましたが、立案・改築・展示・管理と博物館全体のプロデュースまで手がけいるので、学芸員の数倍ハードだと思います。
老婆の指示で、形見を収集することになった僕。形見の博物館、というコンセプトがとてもおもしろい。家族ですら、故人に相応しい形見を1つ選べと言われても、困ると思います。ましてや、村に赴任したばかりの僕が、何を形見に盗ってくるのか。はらはらしながらも、その選択に納得したり、殺人鬼の被害者の形見にはぞくりとしました。想像するだけで痛いわ!しかし、このエグいところを綺麗に描写してしまうところが小川マジックなのです・・・!
僕が沈黙博物館を作るかたわらで、沈黙の伝道師見習いの少年の変化、爆弾魔、連続殺人鬼の物語が語られます。特に、少年が沈黙の行に入ってしまうところ、だんだん無口になっちゃうところは、娘さんと同じく私も悲しくなりました。連続殺人鬼の正体は、やっぱりなーという感じでした。しかし、僕が疑われたままでいいんかいな?と思うのですが・・・。うーん、あと「アンネの日記」と顕微鏡の行き先が博物館になるとは。主人公はこの村に骨を埋めるのかしらん。
収集するという行為は、単調な作業のイメージがあったのですが、収集にも分類にも、その人の意思が関係してくるわけで、非常にクリエイティブな作業ですよね、そういう意味では。


「みんな世界を分解したがっている。不変でいられるものなんてこの世にはないんだ」


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