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読書の記録です。

「断章のグリムⅦ」

甲田学人/アスキー・メディアワークス

ロッジの日常的な事件を追った短編2話と、風乃の過去を描いた中編1編。イソップ童話は、神の悪夢にはなりえないが、人の悪夢にはなりうる・・・。

8巻以降も上下巻構成が続く模様なので、ここらでちょっと一息、の短中編です。短編なんだから、そんなディープな話はないだろう!と踏んでいた私が甘かった・・・。
今回のモチーフはイソップ童話です。イソップといえば、いろいろありますよねえ。私は、ツルとキツネのスープの話をぱっと思い浮かべるかな。
「よくばりな犬」深夜の12時にカミソリをくわえて、水を覗き込むと将来の結婚相手が見えるが、もしその時にカミソリを落としてしまったら、相手の顔に傷が残るという占いがすごいな!まあ、歯茎にカミソリがつきたった時は、どうしようかと思いましたが、1話目はなかなかいい終わり方だったんですよ・・・。油断もするというものです。
「アリとキリギリス」これは、たぶん誰も悪くないから、余計残酷に思えたのかも。美幸の恋愛にオクテなところは私もよくわかるし、比奈実の恋に一生懸命な生き方も、幸せになる一つの選択だと思う。大塚先輩にも好みはあるだろうし、嫌いなタイプなのにそれを表に出さないで、平等に接しているのはすごいと思う。合わなかっただけなのに。しかも、失恋が原因ではなく、自分のプライドが傷ついたことが原因というのが、またなんとも言えない・・・。比奈実の罪悪感は、少しずつ薄れていくだろうけど一生残るなあと思ったら、すっきりしない結末でした。
「金の卵をうむめんどり」これは何が嫌だったかというと、ネコを殺すシーン。人間はまだ大丈夫なんだけど、どうも動物を惨殺するシーンというのはそれだけでものすごい嫌悪感を私に感じさせるようです・・・。雪乃が小さいころのお友達の話。義理の親との関係は現実でもあるもので、答えなどなかなか見つからないものですが・・・。でも、死んでしまったら終わりなのに。前の話でも思ったんですが、今はどんなに絶望しても生きてさえいればいつか何かが変わることがあるのに、と残念でした。このあと風乃姉さんはあの事件を起こすのかな・・・。


「人間は、きらびやかで楽しいものしか見ないのだ。誰も見ていない黒くて地味な努力など、報われることはないのだ。」


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