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読書の記録です。

「とにかく散歩いたしましょう」」

小川洋子/毎日新聞社

締切前の白紙の恐怖。パン屋での五千円札事件。ハダカデバネズミとの心躍る対面。何があっても、愛する本と毎日の散歩ですべてのりきれる。心にじんわりしみるエッセイ集。

大好きな小川洋子さんのエッセイです。
今回のエッセイにも、小川さんの謙虚で誠実なお人柄が良く表れていました。謙虚であるということは、とても難しいことで、人はすぐに他人と自分を比べて、どこか自分に優位な点はないかと探してしまう節があるのではないかと思います。ところが、小川さんの作品に出てくる登場人物たちは、ちゃんと自分の役割を知っていて、その仕事を誠実にやり遂げることが一番大事だと私に教えてくれているような気がします。エッセイでもそれは同じで、小川さんが仕事、あるいは小説そのものに誠実に向き合ってる姿勢が感じられました。
ハダカデバネズミに会ったときのワクワクしている様子や、もうひとりの小川洋子さんをちょっと自慢げに語る様子、イタリアで赤い手袋を買う様子など、小川さんの様子が目の前に浮かぶようでした。まるで少女のようなかわいさ!笑。5000円札の件は怒ってもいいと思うけど、そこで心配するのがめんたいフランスをどこで買えばいいのか?だなんて、脱力してしまう。駅の改札を止めては申し訳なく思い(舌打ちする人の方がひどい!)、文鳥を飼うためにあれこれと走り回る。一方で自分が老いるということは、親が老いるということで・・・。老いについても考えさせられる。
涙なしに語れないのは、愛犬ラブが亡くなったことでしょう。うちの愛犬も14歳と2ヶ月で亡くなったな・・・とか思い出して泣けてきました。小川さんがラブについて書く文章は、いつも愛情にあふれていて、ラブがどれだけ愛されていたかがよくわかります。犬を看取るのが飼い主の役目とはいえ、愛犬の最期の時は辛いです・・・。うちは、よっぽどのこと(捨て犬とか貰い手がどうしても見つからなくて保健所に連れていかれるくらい)がない限りは、もう動物を飼わないことになりましたが、小川さんとこは、しばらくはブンちゃん一筋なのかな?ブンちゃん、長生きしてね!


「ひとまず心配事は脇に置いて、とにかく散歩いたしましょう。」


「散歩が一番です。」





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