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読書の記録です。

「そして誰もいなくなった」

アガサ・クリスティ/早川書房

さまざまな職業、年齢、経歴の十人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。そして童謡のとおりに、一人また一人と…ミステリの女王の最高傑作。

題名だけなら、誰でも聞いたことがあるだろう数々のミステリーの名作たち。
ミステリー好きの私も、もちろん大体のものは読んでいます・・・と言いたいところですが、実は全く読んだことがありません。日本の古典ミステリーは何冊か読みましたが、読んでる方に比べたら全然・・・。翻訳ものに到っては、そもそも訳された文が苦手で全く手をつけずにここまで来ました。最近になって、やっと翻訳ものを楽しめるかなという予感がしてきたので、翻訳ミステリーに本格的に挑戦することにしました。
そこで、選書の参考に・・・と買ってきたのが、「東西ミステリーベスト100(文芸春秋)」。私の大好きな「獄門島(横溝正史)」が1位だったから、好みが合いそうってことで。国内編ランキングの作品も気になるところですが、まずは海外編から、途中で飽きる可能性も考えて、1位から攻めていきます(それは、攻めなのか守りなのか・・・)。
前置きが長くなりましたが、1位がこの「そして誰もいなくなった」です。
色々な作品で、モチーフに使われたり引用されたりしているので、本を読んだことがなくても「孤島に集められた男女10人が、インディアンの歌の通りに殺されていく。最後は全員死ぬ。」のようなあらすじはなんとなく知っていました。実際そのまんまでした。笑。
この選ばれた10人は、過去になんらかの罪を犯しているけれど、確たる証拠がないため法で裁かれなかった人々。しかし、本人達は自分の犯した罪を自覚しているので、うろたえ、おびえ、追いつめられていきます。そういや、最初の被害者の兄ちゃんだけは陽気に酒をあおって死んだっけな・・・。
陸の孤島、見立て殺人、最後の犯人の告白・・・と、名探偵の謎解きはありませんが、ザ・ミステリー!という充実の内容でした。現代だったら、ネット環境から衛星携帯まで大体の通信設備が整っている時代で、このような話は成立しにくいかと思いますが、これは読了後に考えたことで、読んでいる間は全然気になりませんでした。むしろ気になったのは、真犯人は最後に自殺するんですけど、自殺の形跡は調べればわかるんじゃ・・・そしたら、自ずと犯人わかるんじゃないの?という点。
様々な趣向を凝らしたミステリーももちろんおもしろいですが、こういうシンプルなミステリーもわくわくしますね。嫌味のないさっぱりとした読後感でした。


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