忍者ブログ
読書の記録です。

「桜庭一樹短編集」

桜庭一樹/文藝春秋

一人の男を巡る妻と愛人の執念の争いを描いたブラックな話から、読書クラブに在籍する高校生の悩みを描いた日常ミステリー、大学生の恋愛のはじまりと終わりを描いた青春小説、山の上ホテルを舞台にした伝奇小説、酔いつぶれた三十路の女の人生をめぐる話、少年のひと夏の冒険など、さまざまなジャンルを切れ味鋭く鮮やかに描く著者初の短編集。

てっきり表紙は写真だと思っていましたが、近くで見ると絵でした。髪の毛がすごくリアル。
ライトノベルというジャンルに縛られなくなった頃からの作品かな?と解釈しました。
「このたびはとんだことで」女2人芝居。恩田陸さんのようなテイストでしたが、ちょっと違う。コミカルなやりとりを入れるところが桜庭さんだなと思います。最初、男の人は両手足が無くなって植物人間のような状態なのかしら・・・と思っていたので、もうお骨になっているとわかって却ってほっとした。
「青年のための推理クラブ」プロトタイプにあたるお話。久しぶりに「青年のための~」が読みたくなった。
「モコ&猫」遠くから眺めているだけで満足、という気持ちはわかるけど、猫が屈折しすぎだ。笑。しかも、そこそこモテているから腹がたつ。「もう、お別れなのだ。殺すこともなく。愛しあうこともなく。ただ、おだやかな好意だけを空気みたいに残して、別れていくのだ。」本気でぶつかり合わなかったから、別れた後には何も残らない。・・・刺さります。
「五月雨」ファンタジーに近い話。ぼんやり読み終わってた。
「冬の牡丹」独身で子供もいないと、なんだか人間として未完成で恥ずかしくて怖い時がある。その感覚を思い出して、読んでる間いたたまれない気分だった。でも、これって結婚して子供を産んだら解決する問題なのだろうか?とも思う。どうあっても文句を付けられるのだから、やりたいようにやるのが一番だよなあ。それにしても、既婚組の上から目線ってやつが無くなる日は来るのだろうか?
「赤い犬花」ひと夏の少年の物語。少年が語り手なのは、初めてとのことです。私はやはり桜庭さんといえば少女のほうがしっくり来ます・・・。冒険(三本松まで行く)があまりおもしろくなかったのと、2人の掛け合いにあんまり乗れなかったもので。


「いったいどうすれば、ほんとうに一生懸命生きる、なんて奇跡のような芸当ができるのだろうか。」

「わたしたちがどう戦えば、あなたたちは満足するのか。」

「わたしたちを赦してくれるのか。」


PR