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読書の記録です。

「夜の底は柔らかな幻」

恩田陸/文藝春秋

特殊能力を持つ“在色者”たちが、“途鎖国”の山深くに集まる“闇月”。殺戮の風が、次第に暴れ始める・・・。殺人者たちの宴が、幕を開ける。

超能力者、バトルロイヤル!
という話だとは思ってなかったもんで、イロやらヌキやら、ここどこ?って感じでした。しかし、そこはさすがの恩田さん、巧みな言葉づかいから紡がれる途鎖という場所に、ぐいぐいひきこまれていきました。超能力といえば「常野物語」ですよね・・・。あれ、あんまり合わなかったんだよな・・・。最後は投げっぱなしで終わるのかな・・・。とか色々な不安が頭をよぎりましたが、飽きることなく、上下巻読み続けることができました。
主人公の有元実邦は、途鎖に潜入捜査官として潜入する。実は、実邦は途鎖の出身で逃げるようにここを出ていったのだ。途鎖に潜入した彼女の真の目的とは・・・?
そもそもの発端は、葛城・神山・青柳の3人が幼少期に山で行われた「訓練」。イロは超能力のようなもので、これを生まれながらに持っている人を「在色者」と呼ぶ。研究者の屋島は、このイロを子供のうちから訓練である程度制御できるようにする活動を行っていたが、それにも限界があった。そこで、もう1人の研究者・神山が独自の訓練法を考え出した。それが、途鎖の山(霊峰みたいな感じ?)にある水晶筋の影響を受けながら、イロをパワーアップさせるという方法だった。しかし、この方法は弱いイロを持つ者には逆効果で、犠牲になる子供が出てくる。そして3人はある決断を下すことになる・・・。この体験が、「彼」の始まりなのかなという印象です。
この途鎖の山には、ソクというボスがいて、この支配者を倒して成り上がることができる期間(闇月)ってのがあるらしいです。「かかってこいやー」みたいな感じかな。登場人物たちは、みんなソクに用事があるのでお山に登ります。目的に邪魔な者は潰しあい。結構、さっくり殺してるので、恩田作品の中ではダークな部類に入るのかなー。
登場人物が多いせいもありますが、主人公の実邦の影が薄かったなあ。葛城のツンデレとか軍(いくさ)のおネエキャラ方がインパクトが強かった。あと屋島先生。笑。屋島先生が天井からぶら下がっていたり、ガラス窓にはりついているお姿を想像するだけで、笑える・・・。なんでや。葛城って、実邦のことが大好きなんだけど、実邦は神山が好きで・・・神山は自分以外は駒扱いという歪んだ愛のトライアングルも楽しめますよ!
登場人物それぞれが何かしらの結びつきを持っていて、腹を探りあいながら進んでいくところが面白かったです。疑心暗鬼を書くのがうまいですよね!(←ほめてます。笑。)最後の最後までみんなのお目当てのソクが出てこないので、まさか山奥でミイラになってました。チャンチャン・・・じゃないよな?とハラハラしてたんですが・・・。ちゃんと登場したので、一安心。土砂崩れが起こったり、最後は派手にぶっ壊して、最後は「ほとけ」さまが出てきてご来光~。何が何やらという感じですが(笑)、まあまあ伏線も回収してそれなりに収まったんじゃないかな、と思います。
屋島先生が何に気付いたのか、最後まで明言されなかったのが残念です。屋島先生のほほえみ・・・!


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