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読書の記録です。

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「オチケン、ピンチ!」

大倉崇裕/理論社

大学入学早々に、廃部寸前の落研(落語研究会)に、無理やり入部させられた越智健一。そこで待ち受けていたのは風変わりな先輩ふたり。部員が3人をきったら自動的に廃部、という規則をなんとか死守しているオチケンだが、そんな中、岸がトラブルに巻き込まれ、退学の危機に陥ってしまう。しかし、もっと大きな陰謀のにおいをかぎつけた越智は、仕方なく調査をするうちに、不可解な事件が多数、キャンパス内で起きていることに気づく。

めっちゃ久しぶりのオチケンの続編です。続編が出ているとはしばらく知りませんでした。
毎度私のトリ頭並みの記憶力により、落研の話ということしか覚えておらず、しかも記憶の中では高校生に改ざんされていました。(本当は大学生だった。)あとがきを読むと、どうやら前作は謎の提示で終わっていたそうですが、当時の自分の感想にはそんなことひとつも書いてないです。気にならなかったんでしょうねえ・・・。
中編2作です。
「三枚の始末書」オチケン部長・岸が何者かにはめられ、始末書を提出しなければならなくなる。学同院大学では、始末書を三枚提出した者は退学になるという規則があるのだ。岸のピンチを救うため、中村と越智は調査を始める・・・。登場する落語は「寝床」と「三枚起請」。実は岸の他にも停学の危機にある学生がいて、彼らの証言をつなぎ合わせて真相にたどりつく。始末書三枚で停学というルールがいまいちピンとこなかった。そんなルールありましたっけ?学生部なんかあったかなあ?語学が必修なのはわかるけど、保健体育が必修?・・・とまあ、大学ごとに違うとはいえ、その辺のディテールに小首を傾げながら読んでいました。まだ入学後1ヶ月だったのか!越智くん、そんなに焦らなくても語学は卒業までに単位が揃えばいいんじゃないの?語学クラスに上級生が混じってるなんてザラだったような。冒険部に絡めた本筋の謎解きはおもしろかったのですが、落語とのリンクはそんなにはインパクトがなく残念でした。「寝床」とは、誰かが一服盛ったのではないか?というところと「三枚起請」では、目的と思わせたことが手段で、本当の目的は他にあった、というところがつながってるのかなーと思ったのですが・・・。どうだろう・・・。田丸さん、男やったんか!(一番の驚き)
「粗忽者のアリバイ」中村と越智は、お笑い研究会から、今度の舞台にゲスト出演するはずの松の家緑葉が失踪したので、探して欲しいと依頼される。なんと、失踪直前に緑葉がいたのは、打ち合わせのために訪れていた、学同院大学のホールだったのだ。冒頭から、岸さんに巻き込まれる越智くん。岸さんがパンクさせていたバイクは、暴走バイク集団「東京流れ星」のものだった。彼らの暴走行為による騒音で、春蔵師匠が不眠になり体調を崩していたのだ。立ち上がったのは、岸さんだけではなかった・・・。登場する落語は「粗忽長屋」。この落語はおもしろそうだなあと思いました。どたばたしたお笑い話かと思いきや、最後のシーンで、自分を抱えている自分は一体何者なのか?という倒錯的な問いは、ミステリ的でもあり、落語の世界の奥ゆかしさを感じます。この「自分は何者なのか?」という問いは、緑葉に重く響く問いで、物語と深くリンクしていると思います。ちなみに私は、写生会の一枚多い絵の謎が好きです。身代わりになるだけでなく、写生会に紛れ込んで一枚絵を描いていくなんて師匠は粋だなあ!結果的に緑葉さんも無事見つかるし(やっぱり岸さんが一枚かんでたか!)、東京流れ星は壊滅するしでハッピーエンド・・・かと思いきや、学生部の土屋から中村が学生部と敵対する「黎明棟を良くする会」のメンバーであることを知らされる。岸さんの野生が目を覚まし、学生部と全面対決か!?という流れで終わりでした。
続刊が出ているようなので、まだまだこのシリーズ続くようです。


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