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読書の記録です。

「何が困るかって」

坂木司/東京創元社

子供じみた嫉妬から仕掛けられた「いじわるゲーム」の行方。夜更けの酒場で披露される「怖い話」の意外な結末。バスの車内で、静かに熾烈に繰り広げられる「勝負」。あなたの日常を見守る、けなげな「洗面台」の独白。「鍵のかからない部屋」から出たくてたまらない“私”の物語ーなどなど。日常/非日常の情景を鮮やかに切り取る18篇を収録。

「短劇」のようなブラック坂木さん降臨か!?と期待して読みましたが、キレが足りない・・・という印象の小説が多かったです。もやっとした感じ。私が期待したテイストではありませんでしたが、小骨がひっかかるようなお話たち。あとがきを読んで、こんな感想を持ったということは、坂木さんの勝利なのかなあと思いました。
以下、印象に残ったものを。
「キグルミ星人」旦那さんの生死が気になるところですが、それよりも何よりもキグルミ星人に心ひかれました。見た目はファンシー、中身はエロいキグルミ星人。「ナイショ」が何故かエロい!とか思ってる人ってあんまりいないだろうなあ。笑。ステキです。
「勝負」子供のときは早く押したかったバスの乗降ボタン。いつから押すと負けのような気分になったんだろう?降りれないのはイヤなので、あるポイントで必ず押すようにはしてますが・・・。
「カフェの風景」世間は悪意で満ちている・・・とは思いたくないですが。飼い犬がおじいさんに訴えているのは「ねえ、死んで」「早く、早くう」だったとは・・・。こ、こわい・・・。自分がどう思われているのか、わからない方が幸せですねえ。
「ぶつり」狩りと言えば、最終的に行き着くのは人間だろうなとは思っていたのですが。まさか行きずりのホームレスだとは思いませんでした。そこは、ほれ、相手の人なんじゃないの。
「ライブ感」最近増えてるあれですね。フォロワーや、いいね!の数を増やすためなら、脱いだり、過激なことだってしてみせる。刺激にだんだん慣れていって、正常な判断力を失わせていく。いつでも誰かとつながれる環境は、置いていかれる不安を増強するものなのかな。
「都市伝説」てっきり男は懲らしめられるのかと思ってました。まさかの救いがない結末!
「ちょん」えー、性格悪いなあ。なんかイヤな奴だなあ。自分が先輩になったら、こういう試すことしそうでもっとヤダ。笑。
「何が困るかって」ぽとり。ぽとり。と落ちていく指。だけど主人公は動じない性格で、手袋でごまかしては、まあ何とかなるだろうと思っているという。なんだこの人。新婦さんならぬボクサーはパンチ力の低下が気になるけど、まあ負けたっていいじゃんって思ってる。なんだこの人。不気味すぎるぜ。
「仏さまの作り方」ありがとう、と言われたい。感謝されたい。そう思う人は多いと思いますが、自分の身を切ってまで感謝されることを追求する人はなかなかいない。財産を全部処分して、村を作って自分が死んだあとには金塊が発見されて・・・。本人は本望だったかもしれないですけど、弱い人間につけ込む歪んだ方法でした。
「神様の作り方」お話として完成されているなあという印象。適当な場所を選んで花を供え、そこを事故現場にしてしまった男。被害者はあきえちゃんという少女で、好きな食べ物はチョコレート。好きな飲み物は炭酸飲料・・・と次第に設定は細かくなってゆき、交通事故で亡くなったあきえちゃんは地域に浸透していく。そこにいると信じれば、そこにいる。霊は人が認識しなければ存在し得ないのだ。まあ、この人、よっぽどヒマだったんですねえ。


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