忍者ブログ
読書の記録です。

「晴子情歌」

高村薫/新潮社

昭和五十年、洋上にいる息子へ宛てられた母・晴子の長大な手紙。三十になって知る母の姿に激しく戸惑いながら、息子・彰之は初めて母という名の海へ漕ぎ出していく。

男の子は大体マザコンなんだよなー。
私ここまで親の内面の世界について思考したことがないので、すげえなあと。これが女性だったら、おそらくこの物語は成り立ちませんぜ。良くも悪くも、男性にとって母親の与える影響は大きいと思います。かといって、女性にとって父親が同じ影響を与えているとは限らないんだなー。
晴子お母さんの手紙が全部旧かなづかいで、読みにくい。現代っ子の私には非常に読みにくいです。漢字が読めないの・・・。想像で埋めていくしかないの・・・。ていうか、昔の人はこんな難しい漢字を日常的に使っていたのでしょうか。ちょっと疑問。
彰之も含め、登場人物たちが見せる他人への執着は、理解できない部分も多々あり。トシオよりさらに後に産まれた私の世代は、他人に対してより無関心であるのかもしれない、と思った。一人一人の複雑な心が丁寧に描かれています。言葉では、言い表せない気持ちの動きが感じられました。
本を開けば、常にそこには何かが息づいていて、生命が躍動している姿が目に浮かぶよう。


「今日まで、生命の正しい声に従って産卵に一番適した海辺の場所や、雪解け水が海に流れ込む時期と水温をそのつど寸分の狂いもなく選んで回帰して来たというのに、最後の最後になって我を忘れるのも彼らの生命の声だとしたら、ぼくたち人間はそれを何と呼べばいいのだろう。」
(現代仮名遣い&現代漢字に直してあります。)


PR