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読書の記録です。

「町長選挙」

奥田英朗/文芸春秋

都下の離れ小島に赴任した精神科医の伊良部。島は折から町長選挙のまっただ中で、伊良部も島を二分する争いに巻き込まれてしまう。

お馴染みになってきたせいか、存在感が薄くなってきた伊良部先生。
今回は、VIPな人たちが主役。しかもほぼ実名のようなもの。特にライブドアは今裁判が泥沼化しているので、なんていうか、現実とつき合わせると変な感じ。
前2作は、共感が持てる部分が多少なりともあったのですが、今回は無かったなあ。死への恐怖は、結局、権力への固執。ひらがなを忘れることは無いし、一人勝ちしてつまんないなんて経験もない。美への執着は、まだわかるような気がするのですが、背景に職業に関する特殊な空気が流れているので、やっぱり別世界のような気がしました。
マユミちゃんのバンド活動の実態も明らかに。ううむ。若けりゃ誰でも、ミニが履けると思うなー。
・・・っと、ミニで思い出したんですが、今年の夏、デニムのミニが流行ってませんでした?ミニを履いているおねえさんを見かけると、ついつい下半身を観察しています。笑。えー、みなさま大変美しいおみ足でいらっしゃって、眼福眼福・・・じゃなくて、まあ、大体自信のある人が履くので納得なのですが、1人だけキョーレツなのを見かけました。ミニがぱつぱつなのは言うまでもなく。・・・三段腹。おなかのお肉がたっぷりとミニの上に乗っかってるんですよう。キャミから出た腕は、たっぷんたっぷんだったんですよう。こ、これはいかんだろう・・・!
服装は自由だと思うけど、これは、自粛するべきだと思った数少ない事例でした。
大きく脱線しましたが、最後の町長選挙が一番読後感のいい作品だったと思います。みんな棒倒しで決めちゃえばいいのに、っていうのは乱暴すぎるか・・・。でも、もっと、政治の仕組みがシンプルになればいいのにって思います。


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「支那そば館の謎」

北森鴻/光文社

僕の名は有馬次郎。怪盗と呼ばれた過去もあったが、縁あって住職に拾われ、大悲閣千光寺の寺男となった。寺に持ち込まれる奇妙な事件を解決にひた走る毎日だ。

6年間在住だったり、遠足・旅行で訪れたり、就活でうろうろしたりしているくせに、行くたびに道に迷う、私にとって馴染みがありそうでそんなに無い京都が舞台です。
嵐山には2度ほど行きましたが、大悲閣というお寺は知らないなあ。そんなマイナー路線の京都ミステリー。短編集で、展開は同じパターンを踏襲しています。しかしながら、各章では染料や送り火、町屋など京都の文化が取り上げられていて、色々新鮮です。川床、一回行ってみたいんだよね・・・。地味ながら、安定した読み心地。後半、ムンちゃんが登場してから、ちょっとお笑いどころも出てきます。いい性格してるわ。隠れた読みどころは、毎回出てくる十兵衛の割烹料理。おいしそうです~。
残念だったのが、“支那そば館”。私は実際にそういう名前の博物館か何かがあるのかと思っていたので、この話に関しては少しがっかり・・・。
小説でも、京都弁はまったりします。神戸弁では、「なにやっとうん?」となるところが、京都弁では「なにしてはるん?」とはんなりした感じになるところに、そそられる人もいるようです。えー、神戸弁はかなり汚いらしいんですが、みかもさん一家は、エセ関西弁を喋る一族の末裔なので、詳しいところは不明です。悪しからず。


「交響詩篇エウレカセブン 3」

杉原智則/角川書店

危機に直面したゲッコーステイトを、さらに不測の事態が襲う。月光号で裏切りが発覚したのだ。彼の手引きにより連邦首都へと拉致されたエウレカとレントン。そこで彼らを迎えた男は、二人を贄とし己の野望を実現せんとしていた。

アニメ版エウレカとは、だいぶ違ってきたぞー。
とは言っても、もうアニメの方の話の流れもあやふやなのですが・・・。裏切りは無かったはず。コーラリアンやトラパー、それにデューイの計画など、アニメでは感覚的に捉えていた概念が、理論的(?)に捉えられるようになったことが良かったです。もう、アニメとの違いなんて関係なく、展開も文章も文句をつけるところが無いので、安心して読めます。
今回は、葛藤が見所かと。ホランドのコンプレックスや、内面がメインなのですが、私はやっぱり後半のアネモネとドミニクの対話が印象的でした。アネモネは第二のヒロインですからねー。サディスティックな反面、ぼろぼろで健気なところがほっとけないというか。ドミニクの気持ちが、良くわかるんだわー。ホランドも、アニメよりカッコイイではありませんか!笑。“少年ハート”はやっぱりホランドにぴったりだなー。
アニメ版のエウレカとレントンは、正直、ハッピーエンドだと私には思えなかった。アネモネとドミニクは甘かったけど。小説は、みんながハッピーになれる最後だといいな・・・。


「嘘つき!あんた、どこにもいなかったじゃない。あたしが本当にひとりきりのとき、あんた、側になんていなかった。コーラリアンと戦うって、どういうことかわかる?痛いんだよ、苦しいんだよ。あたしの中にたっくさんの誰かが遠慮もなしに入ってきて、それだけでも苦しいのに、あたしはその誰かを殺さなくちゃいけない。あたしの中のたくさんのあたし。あたしは自分を殺すのよ。何度も、何度も。引き裂いて、ずたずたにして、火をかけて、あたしの歯で噛み砕く。何度も、あたし・・・・・・あたしを、殺すんだよ!」


「猫は引越しで顔あらう」

柴田よしき/光文社

同居人のミステリー作家・桜川ひとみの転居にともない、東京で暮らし始めた正太郎。隣猫、フルフルとニンニンのコンビと一緒に、新しい街で、新しい冒険に大忙し。

うちは猫を飼っていません。我が家のわんこと両親は猫嫌いなので、たぶんこれからも飼うことは無いでしょう。猫、かわいいのに・・・。だから、柴田さんの書かれる猫のいる生活、というものが、とてもうらやましいです。それ以上にうらやましいのが、同居人桜川ひとみさんのマイペースな生き方なのですが。笑。
このように、猫描写が気に入って読んでいるこのシリーズ。えー、正直ミステリーとして、おもしろいかどうかは微妙。謎解きの過程は良い。ケモノ会議。猫ならではの視点。本当に猫同士で、あんな風にウニャウニャ喋ってたらいいのにー。しかし、結果が・・・。急に生々しくなってみたり、どーでも良かったり。もっときれいにまとめて欲しかったなあ、という感じでした。
サスケとのコンビが見れなくなったのは残念だけど、新しいパートナー、ニンニンとフルフルもいい感じです。安心しました。トマシーナは出てきませんでしたねー。ひとみさんの恋愛模様も描かれず、しばらくは両方ともおあずけ?
次は引越しの長編になりそう。短編に輪をかけて微妙なんだよな、長編・・・。
ちなみに、私の永遠の憧れの猫は、ロシアンブルー。ペットショップへ行ったら、しばらく張り付いて愛でてます。あのグレーが美しい・・・(うっとり)。


「しかし言葉を返すわけではないが、この世の中に、自分勝手でない猫、というものが存在しているのならば見せていただきたい。」




おまけ。最近お気に入りの猫ブログ。
くるねこ大和
世界はニャーでできている

「誰か」

宮部みゆき/実業之日本社

財閥会長の運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く編集者・杉村は、義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。姉妹の相反する思いに突き動かされるように、梶田の人生をたどり直す三郎だったが…。

お久しぶりの宮部さん。ミステリーのような。違うような。
あー、他人の人生をさかのぼっていくのって楽しい!(悪趣味)
わたくし、実生活では、あんまり他人の過去を詮索しない人なんですが、これが小説となると話が別です。宮部さんは、人物描写がくどいくらいに詳しくて、登場人物がそれぞれの人生をこれまで生きてきたんだなあ、と思わせてくれるところがいいと思います。梶田さんって、本当にいそうですよ・・・。
1人の過去を調べていくうちに、どうしても、生きていく上で関わった人たちの過去が明らかになっていく。それが例え、知られたくない過去であっても。ほのぼのとした展開に似合わず、血なまぐさい真相が意外でした。でも、私は好きだなあ。特に、実は死んでなかったりして・・・という思考がいい。さらに意外なことに、どろどろの修羅場でシメです。このあたりは、少女マンガみたいだな・・・。八つ当たりは醜い、と思ったり。三角関係って、傍から見てると、ただの意地の張り合いってことが多いです。きっと、誰か1人は決断を下しているはず。お姉さんには、ぜひともクールダウンしてもらいたいなあ。というか、縁を切った方がいいんじゃない?
と、書きつつも、幸せかどうかなんて、本人にしかわからない。当の杉村さんだって、誰かから見たら、肩身の狭い婿養子なんて嫌だと思われてるかも、だし。
だから、ほっとくべきだったんですよ、杉村さん。


「人の恋路を邪魔する奴は
 窓の月さえ 憎らしい」