忍者ブログ
読書の記録です。

「名探偵症候群」

船越百恵/光文社

恋人に別れを告げられた夜、幼なじみから結婚パーティへの招待状が届く。急遽仕立てた嘘の恋人は、とんでもなくセクシーで誰もがうらやむ彼だけど、気づけばパーティ会場は連続殺人の現場。犯人は、まさか私の彼!?

帯裏の“ロマンティック・コメディ”に多少の不安を感じたものの、実際は軽いノリのミステリーでした。最後の犯人の独白は、火サスを彷彿とさせるものが。めっちゃお喋りやん・・・。
茅乃さんの暴走勘違い推理は、痛々しい。少しネタバレしちゃいますけど、刑部君はどうしても犯人とは思えないし、実際真犯人ではないわけです。勘違いのおもしろみもなんも無くて、ただうっとうしいだけかも。
ちょっとした掛け合いや、茅乃さんのキャラクターはおもしろくて好きです。
最後は、“ロマンティック”なだけに、2人はいい感じになるのかと思ったのですが、そんなこともなく。そこが一番意外でした。


PR

「チョコレートコスモス」

恩田陸/毎日新聞社

舞台の上の、暗がりの向こう。そこには何かが隠されている。どこまで行けばいいのか? どこまで行けるのか? 2人の少女が繰り広げる華麗で激しいバトルを描く、熱狂と陶酔の演劇ロマン。

“ガラスの仮面”に非常に良く似たシチュエーション。“ガラスの仮面”・・・。そう、あの「おそろしい子・・・!」「僕と君の間は赤信号・・・」という名台詞や、海辺のデートで「ほらっ、お弁当持っていっちゃうぞ!」と追いかけっこをしたり、青春スター里美君の形状記憶スカーフが記憶に新しい、あの名作です!
さて、本編。恩田作品でも良く目にする演劇パートをまるまる1冊してしまいました、という感じ。小説で、よくぞここまで演技や舞台の迫力を表現したものだと驚きました。拍手を送りたい。
課題に対してのそれぞれの回答がおもしろい。演劇をする人ってそこがすごいなあと思うのです。自己表現っていうか、独創性というか。あと、頭の回転が早くないといけないんですねー。大変・・・。
巽くんの書き溜めてる台本の続きが気になります。国語のテストでは、問題文の続きが気になる子なので。続編は、ぜひ巽くんの台本を!
しかし、頭の片隅ではいつも冷静に「ああ、ガラスの仮面には遠く及ばないなあ・・・」と思っているのです。まあ、これは自分の中の意識の問題なのですが、完全にのめり込めなかったのが残念でした。
読後に演劇を観に行きたいと思わせてくれる一冊。


「今、彼女は、役者というしなやかな獣なのだ。」
きゃー!響子さんかっこいー。
そういえば、“ガラスの仮面”でも、マヤより亜弓さん派でした。


「τになるまで待って」

森博嗣/講談社

森林の中に佇立する“伽羅離館”。“超能力者”神居静哉の別荘である洋館で密室殺人が起きる。被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは『τになるまで待って』。

物語の一部分という側面ばかりが際立って、こぢんまりした印象を受けます。S&Mや、V、あとは四季シリーズと絡んでもいいんですが、あまりにも一つの物語として投げやりではないかなー。お得意の密室、建物トリックも、味も素っ気も無いものに感じてしまいました。
ちらほらと見える、あんな人やこんな人ですが、全体像をつかめていない私には、推測もできませんわ。赤柳すら忘れていました・・・。最初の方は、萌絵さんの再登場を喜んでおりましたが、今ではこのS&Mのコンビがいない方がいいのでは・・・という気になってきています。だって、邪魔なんだもん。
最後に睦子おばさま・・・。相変わらずおいしいところを持っていきますね・・・。


「魔女の宅急便」

角野栄子/福音館書店

ひとり立ちするためにはじめての街にやってきた13歳の魔女キキと相棒の黒猫ジジ。懸命に考えて自立するために始めた仕事は、ほうきで空を飛んで荷物を届ける宅急便屋さん。荷物を運びながら大事なことを発見します。

懐かしさのあまり借りてきました。
街に暮らす様々な人たちがおもしろい。キキはアニメ版よりも髪が長くて大人っぽい。ジジはどちらもかわいいです。ハラマキ・・・。
新しい場所で何かを始めるのはとても大変なことだし、エネルギーを使います。本のようにはきっと上手くいかないと思う。でも、自分には何ができるか考えて、何かアクションを起こさなければ、何も変わらないというのも事実。考えているだけでは、結局何もしなかったのと一緒。
児童文学を読むたびに、その発想に驚かされます。頭柔らかいなーって。児童文学ならではの世界観も私は好きで、だからいい年になっても、時々児童書を読みたくなるのかもしれません。そして、夢という名のパワーを頂くのです。笑。
ジブリのアニメも、こちらの本も、どちらも素敵だなあと思いました。今度はアニメの方をもう一度観たい。本の方の続きも機会があれば・・・。


「魍魎の匣」

京極夏彦/講談社

匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物。箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。

「この世には不思議なことなど何一つないのだよ。」(うろ覚え)
との言葉とは裏腹に、割りと不思議がてんこ盛りの京極堂シリーズ2作目です。
不思議だらけというわけではなく、前半の霊能者(宗教家?)のカテゴライズのあたりは理路整然としていましたが・・・。あと、殺人や動機に関する京極堂の持論展開も良く読む話で、魔のさす瞬間というのは大なり小なり誰にでも訪れるもので、ごもっともです、という感じ。壊れた精神状態の描写が素晴らしい。エピローグなんかツボでした。こう、ぞぞっとする感じで。
問題は、やはり、後半の謎解き部分・・・。うーん、ネタばれですので詳しい話は伏せますが、その状態で生きているわけが無いだろう、と。ファンタジーで、脳みそのホルマリン漬けに意識があるという話もありましたが・・・。下世話な詮索で、ファンの方からは怒られそう。
全体としては前作よりおもしろく、ボリューム(約680ページ)はありますが、中身もそれだけ濃いので長いとは感じなかった。1作目を超える2作目というのは珍しいですねー。3作目も少しインターバルを置いてから楽しみにして読みたいと思います。
榎木津さんがかなりいい感じ。能力は置いておいて、会話やら登場やらのタイミングが一番おいしいと思います。いいなあ。


「はははは、やっと僕等の素性を尋きましたね!普通は最初に尋くんです。何を隠そう、別に隠しちゃあいませんが、僕等は日本でも指折りの霊能者なのです。その名も御亀様。こちらがご本尊です」
一事が万事、この調子。笑。