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読書の記録です。

「最後の願い」

光原百合/光文社

劇団Φを立ち上げた度会と、劇団員が様々な謎に遭遇し仲間の輪を広げていく。

推理と同時に、心の中のわだかまりを溶かしていく様は、まるでカウンセラーのようです。謎解きはシンプルな印象。動機もトリックも大体の予測がつく範囲。で、これで頭の回転がいいとか言うのは少しオーバーでは。個人的に、度会・風見・吉井(だっけ?)の三人のコントのような絡みが好きです。
最後まで、表題の意図がわからなかったのですが、私の読みが足りないのでしょうか。そうですか・・・。

私はお芝居を観るのは好きですが、役者の人とはどうも相性が良くないようです。過去に劇団の人数名とちょびっと話をしたことがあるのですが、全然波長が合わなかった・・・。


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「いま、会いにゆきます」

市川拓司/小学館

巧と祐司は父子家庭になってから1年が経つ。ある日、いつものように工場の跡地に出かけた彼らは、死んだはずの妻、澪がうずくまっているのを発見する。

最後のジャンプは蛇足だったような気がする。なんか、また肩透かしをくらった気分・・・。途中まではなかなかええ話だと思ったんですけど。巧の病気のことも説明不足。作品の雰囲気とマッチしないというのはわかるんです!だけど、話の筋より病気のメカニズムの方が気になるのよう。まあ、彼の一人称だから、病気の説明はできないかあ。しかたない・・・。映画の方が、色々なことをうやむやにして観れるので、この作品の場合、映画の方がおもしろいかもしれないですね。
恋愛小説としては、とてもロマンチックな話だと思いました。あまーい。
祐司君がかわいかった。子供だけのかわいいエッセンスを凝縮した感じ。

最後に、ヒューウィックにまた会えたことが嬉しかった。そうか、君は以前ここにいたのか。


「本格ミステリ05」

本格ミステリ作家クラブ編/講談社

短編集でございます。
今回は読んだことがない作品ばかりでした。しかし、ヒット作はなく・・・。
「騒がしい密室」(竹本健治)。密室のトリックはとてもシンプルで好きです。ただ、妙な挿絵の意図が良くわかんない・・・。「二つの鍵」(三雲岳斗)。二つの鍵がなければ開かない箱、という小道具がうまく使われていると思う。推理の決め手に使われているのも納得。「敬虔すぎた狂信者」(鳥飼否宇)。いまいちパッとしないなあ、と思っていたが最後のダイイングメッセージはとても印象に残った。ただ、主人公だと思っていた刑事さんが、どんどん推理を外していく間抜けな姿はいただけない。
あと、高橋葉介さんのマンガも収録されていました。「夢幻紳士」を描いておられる方です。「夢幻紳士」といえば、中学生の時にアニメを夢中になって見ていたことを思い出します。懐かしいなあ。


「羊の秘」

霞流一/祥伝社

武蔵野の土蔵に横たわる謎だらけの死体。絞殺された仲丸伸之は夢の表現サークルの一員だった。露沢は会員の少女が直前に羊男の写真を残して自殺したことを知る。事件の周辺で続々と発見される「羊」を示す暗合の意味とは?

羊にまつわるウンチクよりも、死枕に関するネタの方が豊富だったような・・・?
こういう見立てものは強引なもの(強引にならざるをえない)がほとんどだと思うのですが、私は好きですね。なので、バカミスだとわかっていても、ついつい読んでしまうのです。
今作は、クスリと笑えるところがあまりなかったような気がする。重いテーマもありましたし・・・。そこがちょっと不満なところ。
で、大きな不満のトリックです。“呪い亀”で、多少耐性ができたつもりでしたが、やっぱり駄目でしたー。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「どこが論理的やねん!」とつっこませてもらいたい。空飛ぶところとか、氷とか、勘弁して下さい・・・。
表紙の羊さんの瞳にノックアウトされました。かわいすぎ!


「スペース」

加納朋子/東京創元社

クリスマス・イブを駆け抜けた大事件のあと、大晦日に再会した瀬尾さんと駒子。ふたりのキーワードは“謎”。『ななつのこ』『魔法飛行』に続くシリーズ第三作。

これ、絶対騙されるって!うーん、でも、ちょっとできすぎじゃない?○○ネタはどうしてもこじつけって感じがしてしまうのです。
ミステリーというよりも、ラブストーリー色が濃い。“バックスペース”の方は、こんな偶然あり?っていうのは置いといて。まあ、置いといて。笑。素敵な恋物語でした。一歩を踏み出す勇気が大切なのですよねえ。それがなかなか・・・、難しいのだよ・・・。なんか、駒子さんと瀬尾さんの出会いといい、運命的でありえないところがうらやましい。
とにかく駒子ちゃんがかわいいのです!第三者から見た駒子さん観も新鮮。
表紙の絵がとてもキレイなので、本屋さんでぜひぜひ見て頂きたいです。中身を読むとなるほど、という感じで二度おいしい!そういう私は、図書館で借りた口なのですが・・・。


「お前は今、正しい場所にいるか?」
一番共感できたのは、アイデンティティを模索する姿。