忍者ブログ
読書の記録です。

「真夜中のパン屋さん 午前1時の恋泥棒」

大沼紀子/ポプラ社

真夜中にだけ開く不思議なパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」に現れたのは、美人で妖しい恋泥棒。謎だらけの彼女がもたらすのは、チョコレートのように甘くてほろ苦い事件だった。

引き続いての2巻目!
今回は、弘基の元カノ登場。今はパン職人の道を邁進している弘基だが、若かりしころはやんちゃもするプレイボーイだった。お店に現れて、居候を始めた佳乃は、そんな時代に弘基が付き合っていた女性のひとり。
希実は、ひょんなことから、佳乃の荷物を覗き見てしまう。カバンの中には札束がぎっしり詰まっていた。佳乃をたずねてくる男性。斑目に色目を使う佳乃・・・。希実の疑惑は確信へと変わっていく。彼女は結婚詐欺師である、と。
こちらの話もテレビで見ていたので、双子のくだりでびっくり!ということはありませんでした。それなりに、すいすいっと読めましたが、どうも、長編としては物足りないです・・・。1冊ひっぱるには、ネタが弱いのかなあ。彼女にも色々事情があって、かわいそうな過去ではあるんですが、お金を騙し取って一体何がしたかったのかといえば、幸せだったころに住んでいたマンションを買い戻すため・・・だそうで、なんなんだ、その動機は!笑。医学部受かるくらい頭がいいなら、もっと早くその不毛さに気付こうよ!って思ってしまいました。
クレさんは、いつも通りつかみどころがなくて、困った。弘基の女たらしの過去も、ちょっとひいちゃいました・・・。
希実ちゃんが相変わらずいい子だったのと、斑目の恋が報われたのが良かったです。
しかし、これから先、内容の薄い巻が続くのかと思うと、読む気力が萎えますねー。


PR

「真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ」

大沼紀子/ポプラ社

都会の片隅に真夜中にだけ開く不思議なパン屋さんがあった。オーナーの暮林、パン職人の弘基、居候女子高生の希実は、可愛いお客様による焼きたてパン万引事件に端を発した、失綜騒動へと巻き込まれていく。

ドラマを見てたんですが、途中からおもしろくなくなって惰性で見てたな・・・。
とりあえず、1巻ではメインキャストの紹介という感じ?23時に開店するパン屋・ブランジェリークレバヤシは、オーナーの暮林とブランジェの弘基の二人で切り盛りしている。そこに、暮林の亡き妻・美和子の腹違いの妹だという希実が現れる。灯りに引き寄せられるように、問題を抱えた人々がブランジェリークレバヤシを訪れる・・・。という人情モノです。
万引き(本人は万引きだと思っていない)をしようとした小学生・こだま、自宅の望遠鏡で人間観察をするのが趣味の脚本家・斑目、おいしいパンといいオトコに目がないニューハーフ・ソフィア。3人とも今後の物語に大きく関わってくる人々です。メインはこだまのお母さんの失踪事件ですかね。
希実のお母さんもひどいけど、こだまのお母さんも結構ひどい。事情があったとしてもねえ・・・。しょうがないよね、と許す気分にはなれないですねー。だから、これはめでたしめでたしなのかな?と疑問に感じてしまいました。
ドラマ版の希実はあんまり好きじゃなかったんですが、小説の希実は結構好きでした。世の中の汚い側面をたくさん見てきたけど、極端に荒れもせず、世の中を冷めた目で見てるばっかりでもなく。ちゃんとこだまの世話を焼いてあげて、斑目氏を変態呼ばわりしつつも、気にかけて。パン屋の手伝いもして、だんだんとブランジェリークレバヤシに馴染んでいって・・・と、いい子なんです・・・!この先、母親が出てくるはずなので、ひどいことにならなければいいなあと思います。
もっとコンパクトにまとまる話かな?と思うし、そこまでおもしろい話ではないです。しかし、真夜中に開店するパン屋さん、というコンセプトが好きなので、このシリーズは続きを読んでみようと思いました。


「世界から猫が消えたなら」

川村元気/マガジンハウス

僕の葬式。僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。そのなかで僕の死を心から悲しんでくれる人は、何人いるのだろうか。僕と猫と陽気な悪魔の7日間の物語。

辛口です。
話題の本で、表紙の猫がとってもキュートだったので楽しみに読み始めた。が、最初の数ページで、・・・つまんねー・・・。そして3分の1くらいで、幼稚・・・だと思った。
話がおもしろいかどうか、というレベルではなく、幼稚な文章に辟易した。
こんな構想ノートかメモ書きのようなものを、本として出版し、大規模な宣伝を繰り広げ、罪も無い読者に1400円という値段で売りつけたという出版社にも罪があると思う。しかも、これを読んで「読みやすい」とか「泣けた」「感動する」という感想があるのも事実。
だいじょーぶか、日本人!と日本人の感性もちょっぴり心配になった。
携帯電話や映画や時計はなくなっても、ちょっと不便だな(むしろ無くても良いと思っている。バカ。)、程度だが、猫は母親との思い出で情が移っているから、だから消せないという結論がもうダメ。なんなのその自己チュー!
家族の再生が描きたかったのでしょうか?30にもなって、あんな程度で父親と絶縁って、アホか。そりゃ、父親が愛人と温泉行ってた(笑)とかならわかるけどさー、お母さんとの思い出の時計を修理してたわけじゃない!愛があるじゃない!なにスネてんのって感じ。
あとね、家族ってもっとドロドロしてると思う。許すとか許さないとかじゃない。そんなのに関係なく、つながっちゃってて、逃れられないもんだと思うんだよね。
文章も幼稚なら、思考も幼稚。
本を読んでこんなに腹が立ったのは久しぶりです。
読者をナメんなよ!
「退屈だ。すべてが凡庸なシーンと、軽薄なセリフの積み重ねだ。」(本書より引用)
そういう本です。


★追記(9/21)★
映画化されるらしいですね。世間の過大評価って恐ろしい。
映画の方が本業だから、こちらの方が出来はよさそうですね。
佐藤健に宮崎あおい・・・このキャスティングなら、お客さんも呼べるでしょう。
しかし、こんな本を映画化とは・・・、邦画も心配・・・。


「ツリーハウス」

角田光代/文藝春秋

祖父が死んだ夏のある日、孫の良嗣は、初めて家族のルーツに興味を持った。出入り自由の寄り合い所帯、親戚もいなければ、墓の在り処もわからない。祖父母が出会ったという満州へ、祖母とひきこもりの叔父を連れ、旅に出る。

自分のルーツ、調べたことありますか?(そういうテレビ番組もあったような)
私は話で曽祖父の話を聞いたくらいで(しかもギャンブルで財産を使い果たしたとか、良くない話。笑。)、自分から調べたことはありません。ご先祖様には興味なしでしたが、例えば祖父母がどのように結婚したのか、どっちがアプローチしたのか・・・とか、お年頃には色々聞いていたと思います。父方・母方共に(ちなみに両親も)「この人と結婚したのは間違いだった!」「騙された!」とのこと。まあ、照れなのか、本気なのかはわかりませんが・・・。昔の人って根気があるのか我慢強いのか、多少イヤなことがあっても、即離婚!という決断をされない印象があります。情が移るってこういうことなのかなあと思いました。
この物語の主人公・良嗣の祖父母もそんな感じだったのかなと思います。その日を生きていくのに必死で、恋愛なんてする気持ちの余裕がないまま、拠り所がなくて心細くて寄り添っていたら子供ができて、ずっと一緒にいたら情も移って、もう好きとか嫌いとかじゃない関係になってて、それが家族の成り立ちだったのかしらーと思いました。舞台はだんだん、両親の話になって(文江さんが好きでした)、そして孫の代に移ります。今は食堂を営んでいる父親が、漫画で生計を立てていこうと思っていたとか、ニートの叔父が昔は教師で、生徒と駆け落ち未遂をした(これは切ない・・・。叔父さんがアホやねんけど。)過去があったり、お父さん世代も色々やらかしてます。大人のこういう話は、非常に安心感を感じます。・・・私も独立せにゃならんのですが・・・。
祖父母は2人きりだけど、3人兄弟で、良嗣も3人兄妹。妹は子供を産んで、家族がどんどん広がっていっている。ルーツも大事やけど、それよりも、続いていっていることが素晴らしいことだと思う。最後に、昔と今では「逃げる」の意味合いが違うっていう話があったんですけど、まさにその通りで、徴兵や戦争から逃げるっていうのは、「逃げ」ではなく生き残るための「戦い」であったと思います。だから、おじいちゃんも、おばあちゃんも、逃げてないんだよ、生きるために戦ったんだよって言っても良かったと思う。後ろめたく思う必要なんてないのに。人として当然のことを後ろめたく思うような風潮って、戦時中は異常だったんだなと思いました。
家族であることに資格なんていらないし、誰かの許しを得る必要もない。立派な家族図だって必要ない。腹が立つこともあるし、迷惑をかけたり、かけられたり。でも、引力で引き寄せられるように、顔を合わせてしまう。無関係ではいられない。家族って、呪いや幸せの象徴が混ざり合って、複雑怪奇な代物だなあと思いました。
祖父母が建てた翡翠飯店が、これから先も藤代家の拠り所になりますように。
本当の持ち主が現れたら、遺言に従って返さないといけないもんね。笑。


「闘うばっかりがえらいんじゃない。」


「インビジブルレイン」

誉田哲也/光文社

姫川玲子が新しく捜査本部に加わることになったのは、ひとりのチンピラの惨殺事件。被害者が指定暴力団の下部組織構成員だったことから、組同士の抗争が疑われたが、決定的な証拠が出ず、捜査は膠着状態に。そんななか、玲子たちは、上層部から奇妙な指示を受ける。捜査線上に「柳井健斗」という名前が浮かんでも、決して追及してはならない、というのだが・・・。

映画であらすじは知っていましたが、多少違いがあります。いつもは原作イチオシな私ですが、今回は、映画と原作の両方を観る・読むことをオススメします。
一番の理由は、原作の菊田ほったらかし事件。笑。これまで、くっつくのか、くっつかないのかーとウロウロしていた玲子と菊田の関係が、小説では全く無視される形で牧田と玲子は恋に落ちます。菊田には少し後ろめたさを感じているようですが・・・。菊田が何を感じたのか、玲子は菊田と牧田の間で揺れていたのか?よくわからないまま終わります。これが、映画では玲子は牧田と一線を越えた関係になり、それを感じ取った菊田は、玲子への気持ちをあきらめ、また玲子も菊田と自分は違う世界の人間だと思い、別の道を歩むことにした・・・という心情描写があるので、一応納得がいくかなと思います。玲子と牧田が男女の関係になるのは、どうかな・・・と思いましたけど。
また、小説だけでは、玲子が牧田にそこまで惚れこむポイントがわからないです。刑事とヤクザ(さらに殺人の容疑者)との禁断の恋とわかっているなら、ストッパーがきくはず・・・。これが、映画では大沢たかおさんが演じる牧田が、べらぼうにカッコいいのです!実は私、大沢たかおさんはそんなに好みではないのですが、この牧田はカッコ良かったなー。玲子が惚れちゃうのも無理ないかなー、と思います。これは、かなり個人の趣向によるかな。
っていう、牧田と玲子の恋愛関係に気をとられて、本筋の事件はおざなりでした。私、近親相姦がダメなんで、読んでて気持ち悪かったしー。しかも、最後の方は犯人が女装してたやら、手下がバイセクシャルだわ、一体なんなんだ(笑)。
菊田との関係については、次の「ブルーマーダー」で何かしらのフォローがあるのかもしれませんが・・・。