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読書の記録です。

「鍵のない夢を見る」

辻村深月/文藝春秋

望むことは、罪ですか?彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい。そんな願いが転落を呼び込む。ささやかな夢を叶える鍵を求めて5人の女は岐路に立たされる。

直木賞受賞作とは知りませんでした。遅ればせながら、受賞おめでとうございます!
「仁志野町の泥棒」自分の子供の友達の親が泥棒だったら、子供に「仲良くしないほうがいいよ」って注意しそうなものだけど。人間の頭は都合の悪いものを忘れるようにできてるので、彼女は本当に主人公のことを忘れてしまったのかもしれない。という本筋より、同世代の子が結婚したときの何ともいえない焦りを描写した一部分が、うまいです。笑。よくわかる。
「石蕗南町の放火」私もときどき「なんで変な人にしか好かれないのだろう」と思った時期がありますが、そういう自分が結構クセ者なんだよなあ、と気付いた。妥協は必要だけど、この人はイヤだなあ。小太りでも、公認会計士の方がいいに決まってる!笑。そういや、うちの兄ちゃん、家に帰ってきたとき、もらいもののペットフードのロゴ入りトレーナーとか着てたなあ・・・。デートの時は違うと信じたい。
「美弥谷団地の逃亡者」ザ・ダメ男。この話は感情移入できなかった。なんか、女の子もアホやし・・・。
「芹葉大学の夢と殺人」オールスイリに載ってた話。改めて読むと、雄大の存在はダメ男というより、ギャグとしか思えない。「医学部に入ったあとはサッカー選手」に始まり、彼のセリフは結構笑える。実際いたら、ウケ狙いならすべってるよ、と言いたくなるところだと思う。こんな極端な人間はいないだろうけど、自分だけがかわいい人って、現代には男女問わず結構いるんじゃないかな。
「君本家の誘拐」次の年のオールスイリに載ってた話、その2。その時は「ふーん、こんな人もいるのか」って感じでしたが、もう1回読んだあとでは、「意外とこういう人多いのかな」と思いました。自分の子供がかわいくない、関心が無いっていう人もいるだろうけど、一般的には、自分の子供は大事だしかわいいと思います。それでも、イライラすることもあれば、子供がいなければ・・・と考える瞬間があるものなのかなと。ちょっと肩の力を抜いて、子育てはいい加減がちょうどいいっていうのは、こういう人のためにある言葉なのかなと思いました。すいません、全部想像でコメント上滑り。最後は正気に戻ってくれてよかったです。しかし、良枝さんは自分のことばっかりなのね。そこに気付かないとまた同じことになりそう。ダンナさんは、普通にいい人ですよね。私、育児にうるさい夫はイヤなので、将来結婚するなら、これぐらいの距離感の人が理想だなー。


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「はやく名探偵になりたい」

東川篤哉/光文社

烏賊川市のお騒がせメンバーが帰ってきた!
烏賊川市で探偵事務所をひらく鵜飼のもとには、不思議な依頼が舞い込んでくる。
大学生アルバイト、流平とともに、愚鈍なる思い込み…もとい華麗なる推理と、猪突猛進なずっこけプレー…いやいや、見事なチームワークで次々と難事件を解決!

ドラマ「私の嫌いな探偵」を見るまで、烏賊川市シリーズを知らなかった!「完全犯罪に猫は何匹必要か?」を10何年か前に読んだんですが、全く話のあらすじが思い出せない。笑。読む順番が違いますが、読むのに支障は無かったです。
私、ドラマで剛力さん演じる大家さんが好きなんで、小説ではどんな感じなのかな~?と楽しみにしてたんですが、鵜飼探偵と流平くんは出てきても、大家さんが出てこないっ!大家さんはドラマオリジナルの登場人物なのかな?残念だー。他の作品に登場してるのかもしれないけど。
「藤枝邸の完全なる密室」せっかくの密室が!と犯人に同情してしまいました。密室がさらに大きな密室でカバーされて、全く意味を成さなかった密室泣かせの事件。きれいにまとまっていて、この中で一番好きかな。
「時速四十キロの密室」浮気調査のはずが、追跡途中で調査対象が死んでしまった!むむむ、これは苦しい・・・。釣りのことは良くわかんないからなあ。トラックの荷台で血まみれになったら、トラウマになりそうなもんだけど、この鈍さ・・・もといハートの強さが流平くんの武器ですね!
「七つのビールケースの問題」これ、ドラマでやってたなー。そのおかげか、イメージが浮かんできやすかったです。酒屋の女の子の喋り方が、ラシィ(オーフェンの)とかぶってしまった・・・。
「雀の森の異常な夜」なるほど!逆やったんかーと感心。
「宝石泥棒と母の悲しみ」最後の「があがあ」と「わん」に和んだ。宝石を隠す場所としてはありがちな話だったけど、これは親子愛の話だから、いっか・・・。
鵜飼さんが頭の中で、玉木ボイスだった・・・。お笑いの部分を挟みつつも、結構ミステリとしてちゃんとしてるなあと思いました。鵜飼さんもちゃんと推理してるし。

最後に、なるべく刊行順に読むためにメモメモ。
密室の鍵貸します→密室に向かって撃て!→完全犯罪に猫は何匹必要か?→ここに死体を捨てないで下さい!→交換殺人には向かない夜→はやく名探偵になりたい→私の嫌いな探偵


「東京レイヴンズ6」

あざの耕平/富士見書房

北斗の正体は、夏目?実技合宿以来、疑念が拭いきれない春虎は、夏目に対しても今までのように接することができず、二人の仲はぎくしゃくしたものとなっていく。一方、『上巳の再祓』以降、その脅威が現実的なものとなった『D』は、陰陽庁に宣戦布告。事態を重く見た陰陽庁は『十二神将』を配置し迎撃を試みる。いち早く情報を察知した陰陽塾でも、警戒を強め、密かに準備を整える。

「Dクラ」は結局、シリーズの途中でリタイアとなりました。プロトタイプの雰囲気の方が気に入ってたもんで・・・。
そして、あざのさんの最新シリーズがこちら!陰陽師を目指す若者たちが主役です。ブログをさぼってるタイミングに読んでたので、感想は6巻からです。
ドラッグ→吸血鬼→陰陽師・・・と題材がバラエティに富んでます。それだけ引き出しが多い作家さんなのかなと思います。そろそろあざのさんも、ライトノベルの枠を超えた作品を出されるのでは?と予想しているのですが、どうかな・・・。
夏目が、(たぶん)初恋の相手の北斗かも・・・という疑惑を抱いた春虎。「なんでわかんないんだよ、ニブいにも程がある!」と1巻からみんなが思っていたことでしょう。とうとう、彼も勘付くときがやってきました。遅すぎ・・・。しかし、勘付いたら勘付いたで、変に意識して夏目とうまくしゃべれない。ややこしいヤツやなあ。まあ、これはほっといてもいいや。(←両思いには厳しい)
今回の見所は、なんといっても、後半の呪術バトル!学生が主人公なので、ドンパチばっかりやってるわけにもいかず・・・という感じだったのが、今回は「D」こと蘆屋道満と大友先生の一騎打ち!いやー、大友先生ただ者ではないと思っていたけど、何者なの?笑。やたらとカッコ良すぎでした。
蘆屋道満は、最後は何だかんだで引き分けるのかな?と思っていたら、最後はリムジンごと爆砕されてびっくりです!彼は黒幕ではなく、双角会が敵って感じになるのか?角行鬼ってどういうポジションなの?とこの裏の世界(?)の方は力関係が謎です。
あとは・・・、私、鈴鹿のキャラクターがどうにも苦手だったんだけど、今回で大きくイメージアップしました。あの口の悪さは好きになれませんが、実は友達思いで、頼りがいのある仲間で、寂しがりやの女の子なんだなーと思いました。ほんと、京子みたいにコツを掴んだら、あれほどいじりやすい子はいませんね。
幼女先輩・・・もとい、すず先輩が「鴉羽」を手に入れる(だろう)シーンで終わりです。この人も何者?少なくとも、ただの幼女好きではなさそう。笑。
ちなみに、今回の呪術バトルで、何かすごいことが起こっているんだけど、具体的に何がどうなっているのかよくわからん・・・という状態だったので、陰陽五行思想についてちょいとメモを残しておく。


「シャーロック・ホームズの冒険」

アーサー・コナン・ドイル/新潮社

ロンドンにまき起る奇怪な事件を追って神出鬼没する名探偵シャーロック・ホームズは、その怜悧な推理と魅力的な個性で読者を魅了する。近代探偵小説を確立したホームズ物語の第一短編集。赤毛の男が加入した奇妙な組合のからくりを追う『赤髪組合』、乞食を三日やったらやめられない話『唇の捩れた男』など10編。

シャーロック・ホームズは、小学生の時読んでました。パスカヴィル家の犬とか・・・。話の内容はきれいさっぱり忘れましたけど・・・。刊行の順番としては3番目になります。短編集。
「ボヘミアの醜聞」ホームズ、出し抜かれる!結婚を控えたボヘミアの王様が、とある女性とのスキャンダルの証拠の隠滅を依頼してきた。変装を駆使して写真を取り返そうとするが、女性は一足先に写真を持ち去ったあとだった・・・。いつの時代も女性は一枚上手です。でも、みんな幸せになって良かったじゃない!
「赤髪連合」加入の条件は赤髪であること。この組合はかつて赤髪の男が、自分と同じ赤髪の人々を救済するために立ち上げたそうだ。ここで働いていたある一人の男が、組合が突然閉鎖したことに驚いてホームズの元を訪れる。そんな組合あるわけないじゃん!笑。男が組合でせっせと辞書を書き写している間に、着々と作戦は進行していた・・・。あっと驚く真相です。昔の泥棒って根気があったんだなー。
「花婿失踪事件」結婚式当日に花婿が消えてしまった!彼の身に何か起こったのではないかと案じる女性が、ホームズに依頼にやってくる。実は、花婿にはとんでもない秘密があった・・・。遺産をめぐる犯罪が、この短編にもいくつか入っていて、これもそのひとつです。いくら近眼だからっていっても、継父との見分けがついても良さそうなもんだけど・・・。タイプライターの文字からの推理、お見事です。娘さんがこの事実を信じないのならば、継父の思うツボで嫌だな。天罰が下らないかなー。
「ボスコム谷の惨劇」ボスコム谷で殺人事件が起こる。容疑者は被害者の息子。これは、被害者が結構悪い人だったので、かえって良かったんじゃないのと思ったくらいでした。
「オレンジの種五つ」ホームズを1人の青年が訪ねてきた。彼の叔父は、かわいたオレンジの種が五つ届いた後から何かにおびえるようになり、最後は庭の池で溺死した。警察は自殺としたが、彼には腑に落ちない点がある。そして今度は彼自身にも、オレンジの種が五つ届いたのだ・・・。キュー・クラックス・クラン!歴史で習いました。確か、白い三角のものを頭に被っている人たちだと思うんだけど・・・。せっかく犯人のメドがついたのに、彼を助けられなくて残念。でも、こちらには天罰が下ったようで、ほっとしました。
「唇の捩れた男」ある女性が街中の建物で、仕事に出たはずの夫を見かける。夫は何かに引き込まれるようにして姿を消した。建物の窓からは、血痕。窓の下からは小銭がいっぱい詰まったジャケットが発見される。夫はどこに消えたのか?お騒がせなダンナの悪癖。乞食の変装がやめられないっていうのも情けないけど、これが女装とかSMとかイメクラとか(イメクラはこの時代にはないか)でないだけまだマシなのかも。
「青いガーネット」喧嘩のどさくさで手に入れたガチョウのえぶくろから、青いガーネットが出てきた!実はこの青いガーネットは盗品で懸賞金がかけられていたのだ。ホームズは、ガチョウの出所の調査に乗り出す・・・。ガチョウから、どんどん手掛かりを得て真相に辿り着く過程が、ザ・捜査!という感じでおもしろかったです。泥棒が間抜けすぎるぜ・・・。
「まだらの紐」ある女性が相談に訪れる。女性の姉は、しばしば夜中に口笛の音を聞くことがあった。そして、ある夜突然「紐よ!まだらの紐!」と叫んでそのまま亡くなってしまったのだ。最近、工事の関係で姉の部屋で寝ることになった女性は、夜中に口笛の音を聞いた・・・。まだらの紐!有名な作品ですが、私は題名だけで内容は知りませんでした。夜中にシューシュー言いながら、ひもを伝ってくるのは・・・。息をつめて真っ暗な部屋に潜むホームズとワトスン。どきどきします。あ、ちなみに正解は変なおじさんじゃないです。
「花嫁失踪事件」披露宴の席上から花嫁が失踪した。はしょって書くと、昔事故で死んだと思ってた元夫が現れたので、黙って逃げたっていうオチなんです。これはね、女が悪いと思うんだけど、ワトスンは男の度量が狭いとか言ってんの!何だよ、ワトスン!逃げられた方の気持ちがわかんないのかよ!私、ワトスンってもっと優しい人だと思ってたのに!と彼女のようにぷりぷり怒った私。
「ぶな屋敷」家庭教師の女性がホームズを訪ねる。家庭教師に行っている家の家人の要求に不審を抱いているのだという。その後、電報で助けを求められ、ホームズとワトスンはぶな屋敷を訪れる。義理の父親=遺産目当てという図式・・・。これも最後は天罰が下ってめでたしです。

ホームズお得意の、人物観察で職業とかいろいろ当てるやつがちょいちょい挟まるんですけど、あれを読むたびに、「えっ・・・、違いますけど・・・」ってドン引きで否定されたらどうするんだろうと思ってしまいます。まあ、ホームズのことだから、上手いこと煙に巻くんでしょうけど。あの自信がうらやましい。
コナン・ドイルの職業が医者っていうのは知ってたけど、開業したもののヒマすぎて小説を書いては投稿してたっていうのは知りませんでした。家族はやきもきしてなかったのかしら・・・。


「硝子のハンマー」

貴志祐介/角川書店

日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。すべてが不明のまま逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れる。

前の2冊をすっ飛ばしていきなり「鍵のかかった部屋」を読んでしまいました。下調べが足りなかった!
榎本登場の1作目です。ドラマでやってたけど、話の筋をすっかり忘れていました・・・。おかげで2度びっくりできた!
第一部は事件~榎本のひらめき。第二部は犯人目線での物語という2部構成です。
事件の舞台は、ロクセンビルの最上階に入る、介護サービス会社・ベイリーフ。ベイリーフの社長が死体で発見されます。死因は、昼寝の最中に頭部に受けた打撃。過去に、社長室が銃撃されてからベイリーフが入っているフロアだけ、万全の防犯対策がとられていた。さらに、受付には秘書が待機していた。人の目と監視カメラの目をかいくぐって犯人はどのように侵入したのか?凶器は何か?と謎だらけでスタートします。
青砥さんと榎本の推理の展開がおもしろかった。真相が一番びっくりなんですけど、色んな角度から推理をひろげていくのって読んでて楽しいなあと思います。解決のためのピースは揃っていたけれど、社長・業務上横領・ダイヤ・窓拭きが、強風でガタガタ揺れる窓をきっかけにつながった・・・という流れは、ちょっと強引かなあと思いました。
真犯人は、生い立ちとか読んでたらかわいそうなんだけど、榎本の言うとおり、殺してしまったら終わりだよなと思う。青砥先生は、弁護士っていう仕事柄、困っている人を助けよう!という理念は素晴らしいと思うんだけど、最後の社会に対する意見やら何やらは蛇足でした。青砥先生が頑張って、減刑してあげたとしても、彼は更正するのだろうか・・・っていう疑問が残りました。巻き添えで死んだ彼の友人が一番かわいそうだよなあ。せっかく大学に受かったのに。
ルピナスVの役割っていうのが、介護のためだけじゃなくて、横領した金品を隠すために必要だったというのが皮肉です。社長も結構なワルでした。専務もワルです。副社長もワルではないけど、そんなにいい人でもなさそう・・・。大丈夫か、ベイリーフ!
榎本って私が抱いていたイメージと違って、熱い男だなあと思った。あと、青砥先生との関係もちょっといい感じ?くらいに思ってたんですが・・・。こんなに好きだったんだー!と私の方が恥ずかしくなってしまいました。青砥先生の方は、気になる人っていうレベルみたいですけど・・・。あと、ビリヤードがうまい!オシャレ!まあ、推理しながらショットを外して、「もう1回・・・」ってないわな。オタクっぽいイメージが崩壊しました。