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読書の記録です。

「三匹のおっさん」

有川浩/文藝春秋

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!腕に覚えありの武闘派二名、機械をいじらせたら無敵の頭脳派一名。かつての悪ガキが結成した自警団が、今日もご町内の悪を斬る!

おじさんを書かせたら、天下一品!の有川さん。待望の還暦小説です。
「1話」不正取引事件。「2話」痴漢(強姦未遂?)事件。「3話」結婚詐欺事件。「4話」動物虐待事件。「5話」未成年脅迫事件(と表現していいのかな?)。「6話」マルチ商法。町内にはびこる悪を、めっためたにやっつける、勧善懲悪もの・・・と、すっきりとはいかないのが意外。後味が悪いのはキライじゃないのですが、なんとなく、テーマ的にすっきりハッピーエンドでしめそうなイメージだったので・・・。どの事件も、実際に当事者になったならば、あとをひきそうですよね。
キヨの孫の祐希と、ノリの娘である早苗がくっついたのは、さすがラブコメの女王の貫禄を見ましたね!じわじわ伏線をはっての5話は胸キュンでした。うまい。笑。
また、じわじわくるのは恋愛模様だけではない。ゲーセンの店長がしっかりしてきたり、祐希とキヨの関係が良くなったり。キヨのところの嫁さんは、最後の最後に改心。人間みんな成長して変わっていくところが良かったな。ちなみに、三人の中では、キヨさんが一番かっこいいと思いますー。姿勢が良い人って憧れです。
残念な点としては・・・。とにかく、祐希のファッショントークがうっとうしかったことかなあ。私の勝手な先入観の話になるんですが、大学に必ずチェックのシャツを着てくる先生がいらっしゃったんですよね。それから、チェックのシャツを着まわす人間は非オシャレである!というイメージが植えつけられてしまったんです。なので、えんじとモスグリーンだろうが何色だろうが、チェックシャツをはおるというコーディネイトは私にとっては非オシャレ。しかも赤×緑って、クリスマスカラーじゃん・・・。あと、ウォレットチェーンも、私の中では非オシャレアイテムなんですよう。そんな祐希くんが、あれがいい、これがいいと語りだすたびに、「非オシャレなくせに!エセオシャレなくせに!」という反発が生まれるという・・・。笑。
調子こきましたが、オサレ人間ではないくせに、文句つけてすいません(土下座)!


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「プリンセス・トヨトミ」

万城目学/文藝春秋

このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった・・・。

ちょっと前に読んだのですが、なんだか感想が書きにくくて放置してました。記録程度にちょろりと。
会計検査院の3人もなかなかインパクトのある人々だったのですが、一番インパクトがあったのって、やはりセーラー少年なんですよね。詰襟を着ることに違和感があるだけで、男の子が好きってわけでもない。わからない。というところが新鮮だったのかなあ。ニューハーフというよりも、女がメンズもの着るのに、男がレディスを着て何が悪いという感覚が近いのかしら。私は男がスカートはいたっていいけどね。スネ毛の処理はちゃんとしろよ!これ、夏に短パンはいてる男子全員に言いたいんだけど、足見せる時は男であろうとスネ毛剃って下さい・・・!理屈じゃないんだ。生理的に受けつけないんだ。
あと幼なじみの茶子さんも、男前でかっこよかった。私はこの2人が好きだったなー。
大阪国を巡るあれこれは、確かにおじさんたちの熱き戦いだなあと思うのですが、結局それがどうしたという感想が残るのですよ。税金つぎ込んでまでこのシステムを維持する意味があるのか、最後まで疑問だった。
あれだけ不審な動きをして、女性たちが気付いていないわけもなく。知ってて、知らないフリをしてあげてるんだっていうから、恐れ入ります。やはり女は強い。


「道徳という名の少年」

桜庭一樹/角川書店

桜庭一樹のゴージャスな毒気とかなしい甘さにアーティスト野田仁美が共振してうまれた、極上のヴィジュアルストーリー集。

本の装丁がとても凝っていて、挿絵もたくさん。本の厚みは薄いので、絵本に近い感覚。しかし、内容は(絵も含めて)色っぽい香りがします・・・。
「1、2、3、悠久!」名前が1って・・・。2って・・・。3って・・・。今まで色々な名前を見ましたが、数字はないなあ。さすが、桜庭一樹は違うぜ・・・!町一番の美女が産み落とした、父親のわからない子供たち。3と悠久はやがて愛し合うようになり、3は悠久の子供を身ごもります。彼は道徳(ジャングリン)と名付けられる・・・。
「ジャングリン・パパの愛撫の手」ジャングリンは戦争に行き、両腕を失くします。その後、戦地から帰ってきて幼なじみの女子と結婚。夜、彼らが行う儀式とは・・・。「バターの夜」という表現がとても印象に残りました。ジャングリン・パパの目の色が黄色く濁り、とろとろと溶けてゆく。かさかさした腕を愛した女の子。変態的プレイには、正直気分が悪くなった。
「プラスチックの恋人」ジャングリンの子供、ジャングリーナの話。ジャングリーナは街を飛び出し、女装のロック歌手となり、大スターに。話の内容、思い出せない・・・。それくらい印象に残らなかった。
「ぼくの代わりに歌ってくれ」ジャングリーナの息子、ジャンは戦地で死ぬ。あまりにもあっけなくてびっくりした。ここで血族も終わり?
「地球で最後の日」実はスターの親戚であると教えられた少女は、スターの屋敷へ向かうが・・・。終わりと思ったら、親族がまだ残っていた。一番現代に近い話?若気の至りですねえ。
うーん、最近こんなんばっかだなー、と食傷気味です・・・。血の繋がりに、変態プレイはもういいので、前みたいに少女の話を読みたいなー。この路線が続いたら、桜庭さんの本は近いうちに読めなくなるだろうな。





「猫を抱いて象と泳ぐ」

小川洋子/文藝春秋

伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。触れ合うことも、語り合うことさえできないのに…。大切な人にそっと囁きかけたくなる物語。

今年は小川イヤーにするって言ってたのに!私のウソツキ!せめて1年が終わる前に、あと1冊読まなければ!
「ダ・ヴィンチ」のプラチナ本にも選ばれていた作品です。ちょっと不思議な題名だと思っていましたが、読後は本当になんて素晴らしい題名なんだと思い、感動しました。これはオススメです。
小川さんの紡ぎだす言葉は、冷静で、ひんやりと冷たく、まるで女子シャワー室のタイルのような肌触りを持ちながら、それでいてやさしい物語を作り上げていくのです。
主人公は出生時、くっついた唇を剥離する手術を受け、その時移植した皮膚が足の皮膚だったため、唇から毛が生えている少年。少年がチェスを教わるのは、廃バスの中で暮らすたっぷりと太った元運転手のマスター。マスターの飼い猫、ポーン。後に少年の相棒となる鳩を肩にとまらせている少女・ミイラ。デパートの屋上で一生を終えた象のインディラ。
世界から少し、はみ出してしまった登場人物たち。でも、彼らには自分の居場所があって、そこで生きてゆくのだ。特に少年リトル・アリョーヒンの家族が温かくて、救われたような気持ちだった。お祖母ちゃんが本当にやさしい人。
これはチェスの物語で、もちろん対局や棋譜の話、対戦の様子が描かれているわけですが、私にはまったくわからない。笑。そもそも、私のボードゲーム暦っていったら、オセロに五目並べ・・・終わり。って感じなので。そんな私でも、なんだかよくわからないが、これはいい対戦なんだな!?という雰囲気は伝わってきました。夏に沖縄で青の洞窟に行ったのですが、海って静かで恐かった。表面を漂っていただけだけど、私は無力で力を入れれば入れるほど逆効果で。結局、私は手のかかるお客さんだったわけですが・・・(苦笑)。チェスを海にたとえるならば、私はリトル・アリョーヒンのように自由には泳げない。不安で心もとない気持ちでいっぱいになってしまいます。そして、溺れる。笑。
中でも、マスターとの対局と老婆令嬢との対局が好きです。老婆令嬢は、最後にあんなオチが来るとは思ってなかったんで・・・。めっちゃ、いいエピソードなんですけど、とにかく私は悲しかった。知りたくない結末だったなあ。知りたくない結末といえば、本書のエンディングも、あたたかではありますが、やはり私はとにかく悲しかった。思い出したら泣きそうです。
最後まで、彼はチェス盤の下でチェスを指し続けた。それは彼にとって何よりも幸せなことなのだろうけど。


「少年はデパートの屋上で、海を泳いでいた。水面は頭上はるかに遠く、海底はあまりに深く、水はしんと冷たいのに少しも怖くない。怖くないどころか、ゆったりとして身体中どこにも変な力が入っていない。ああ、自分は唇だけになっているのだ、と少年は気付く。」


「図書館戦争」

有川浩/アスキー・メディアワークス

正義の味方、図書館を駆ける!公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる法律として『メディア良化法』が成立・施行された現代。超法規的検閲に対抗するため、立てよ図書館!狩られる本を、明日を守れ。

ぶーぶー言ってたら、星の廻りが良かったのか、親切な方から借りることができました。ラッキー。
話の途中までは、マンガで読んでいたので、あらすじはまあその通りでした。マンガは原作に忠実だったんだなあ・・・と感心したほど。「別冊~」では、登場人物がフィーチャーされている感じでしたが、本編はやはりと言うべきか当たり前と言うべきか、図書隊の戦いとかメディア良化法の影響やら真面目なテーマにウエイトが置かれていました。堂上と郁に関しても、まだまだぎこちない関係で、まだ郁は堂上が王子様だとは知る由もなく・・・。笑。なぜか好きになれなかった堂上が、意外に好きになれました。クマ殺し!たぶんラブに関しても、シリーズを通してじわじわと深まっていく過程を追っていったならば、「別冊~」でのノロケにもついていけたのかもしれないですね。読む順番って大切なんだなーと身に染みました。今頃・・・。
世界観が入念に作りこまれていて、有川さんはきっと図書館や司書業務について良く調べられたのだと思います。現実をきちんと下敷きにしてフィクションのルールがきちんと出来ている。それだけですごい!似た感じだと、こちらの世界では、東京都の「青少年育成条例」の「非実在青少年」なんかが記憶に新しいところです。結局アレどうなったんだろう。
「メディア良化法」も極端ではありますが、ありえなくはない話ですよねー。戦時中みたいな感覚かな。自分の読みたい本を読む。これが読書の喜びであり、そのような読書にこそ意味があると思います。だけど、子供が読む本に、大人がフィルターをかけてあげなきゃ、っていう気持ちもわかるんだよなあ・・・。私が子供だった頃とは、あきらかに過激の度合いが桁違いだと思うんですよ。バイオレンスにしろ、性描写にしろ。大人が読んでも眉をひそめるようなモンを、正しい知識が備わってない内に得てしまうのは確かに問題だよなーとも思うのです。だから、非常に難しい問題。有川さんが、どのように決着を着けるのか楽しみです。
図書隊が正義、メディア良化委員は悪、っていう明確なラインが無い展開がいいなと思ったり。メディア良化委員のやり方は卑怯で、その点は「悪役」っぽいですけど。なんでキミたち紳士じゃないんだ!
今後、確信できることがひとつ。私、小牧はどうしても好きになれないようです・・・。