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読書の記録です。

「黒百合」

多島斗志之/東京創元社

父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池で「この池の精」と名乗る少女に出会う。一九五二年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たち。

「このミス」でランクインしていたことがあるため、ミステリーだ、ミステリーだという先入観があったのですが、これ実は、青春小説にミステリーを織り込んだところをウリにしているのかなあ・・・?とにかく、三角関係ウザい!が一番の感想でした。笑。香は良い子なんだけど、一彦と進の足の引っ張り合いがみにくい。
もちろん、ミステリーもあります。章の間に、昔のエピソードが挿入されていまして、それが現在の殺人事件につながります。しかし、肝心な人はぼかされ(当たり前か!)、誰が誰やら途中で混乱すること必至。「葉桜の季節に君を想うということ」でも騙されたパターンと一緒なんだよね。今回も同じで、セックスに言及していれば、それはもちろん男女を想定します。していたんですが・・・、それでは辻褄が合わなくなって、あら?と。振り返れば、日登美さんと深い仲になることは無かったわけですが・・・。まさか、お兄さんも妹がレズビアン一歩手前とは思っていなかっただろうなあ。んー、でも彼女はそれ以前に男性と付き合っていたわけだから、バイセクシャル?とか考えてしまう。
ミスリードが駄目とか、ややこしいのはあかんと言うつもりは無いのです。しかし、あまりにも登場人物を駒のように扱っている感が拭えないのです。私がひっかかっている、レズビアンやバイセクシャルに関しても、愛のかたちは様々、とはいえ、やはり一般的ではない愛のかたちがどうして生まれたのか。どうして、違うかたちの愛でなければならなかったのか。どうして、彼女は今もそこに留まっているのか。全く気持ちが見えてこないのです。中学生の恋を細かく描写するよりも、彼女たちの気持ちをもっと丁寧に描いて欲しかったなあと思います。これだけでは、ただ単に混乱させたかったから、としか感じられなくとも無理はないかと。
ところで、作者の多島さんが現在失踪中ということにびっくりした!人生いろいろっすねえ・・・。


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「鷺と雪」

北村薫/文藝春秋

帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ。

直木賞受賞作。ベッキーさんシリーズは、本格ミステリで1作読んだことがあるだけ。北村作品は、昔「盤上の敵」「スキップ」「ターン」「リセット」を読んだのですが・・・。おもしろい、というよりは、上品なミステリという印象で、あんまり合わなかったんですよねえ。いろいろ気になるのはあるんですけど。「六の宮の姫君」とか。
お嬢様・英子さんとお付の運転手・別宮さん(通称ベッキーさん)が、昭和の時代に暮らす人々のちょっとした謎を解いてゆきます。前作から引き続いて登場する人たちが結構いまして。そこは読んどけば良かったなあーと思いました。とにかく、時代背景の描写が細かく、本当に見てきたんじゃないっすか?くらいのリアルさでした。史実なんかが上手く盛り込まれているのもさすが。
「不在の父」では、家柄の違い、夫婦の溝から失踪してしまった人の話。爵位なんて今ではあって無いようなもんですよねえ。さりげなく玄関から出て行ったというトリックには納得。「獅子と地下鉄」は、そんな迷信がー!とびっくり。とにかくこの話はベッキーさんのかっこ良さにしびれました。ビリビリ。「鷺と雪」当時のカメラだからできたトリック。こう見ると、デジカメって味気ないですね・・・。と言いつつ、デジタル一眼を狙っている私。ニ・ニ六事件といえば、「蒲生邸事件」(宮部みゆき)を思い出します。最後はこう来ると思っていなかったので、びっくりしました。時代が違っていたら、もしかしたら、英子と若月さんの間で何かが始まっていたかもしれないのに、と思うと切ないエンディングでした。
そして、やはり北村さんは甘い味付けを忘れない人なのです。昭和の時代にあっても!笑。お兄ちゃんもがチャーミングでおもしろい。
とても上品で深いミステリでした。そしてちょっぴり哀しい。


「何事も―――――お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」


「我が庭に響け銃声」

秋田禎信/富士見書房

オーフェン一行、レティシャ、十三使徒、それぞれの目的を持って、最接近領を目指す。領主側では、ダミアン・ルーウが衛兵を使って待ち構えていた・・・。

気付けば、オーフェンの再読がストップしている!まずい!
さあ、この巻の最後からアザリーとレティシャの最強美女コンビが出てくるわけですが!レティシャ、いつの間にアザリーと接触してたんだろ・・・。当然のことながら、レティシャは死んでないのですが、オーフェンがそれを知るのはいつのことになるのかー。
「6人が死ぬ」という不吉な予言。十三使徒の3人とレティシャ、ロッテ、オーフェン?の予定だったのかな・・・。この辺ホラーじみた感じがします。領主側の手勢も死ぬし、十三使徒は全滅するしで、淡々と人が死んでいっているような。イールギットが死んだのが、すごく印象に残っていて、これだけは覚えていた。少ししか登場してないけど・・・。死ぬようには見えなかったんだよなあ。
蟲の剣って、結局どういう効果があったんだろう。
ロッテが意外に残ってますが、最後までいたっけな?コルゴンってどうなったっけな?レキは?
もう一度読み直しても、実は良くわかってないんだなー。


「神はいない」

「人は自立しない」

「だが絶望しない」


                      

「医学のたまご」

海堂尊/理論社

東城大学に「天才少年」として中学生が医学研究室に入った。ところが彼は実はあんまり勉強の出来ない普通の中学生だった。そんな「普通の中学生」が最先端の研究をめぐる医学界の熾烈な争いに巻き込まれていく・・・。

昨日の高校生クイズはすごかった・・・。もはやあそこまで賢いと、自分とは違う生き物って本当にいるんだなあーと感心するばかり。本作の主人公、曽根崎薫くんは14歳・中学生。高校生クイズに出てくる天才たちのような頭脳を持っているどころか、学校の勉強でもあっぷあっぷ。そんな彼がどうして模試で1位の成績をとってしまったのか?答えは簡単。彼の父・ゲーム理論の第一人者、曽根崎慎一郎氏こそが問題の作成者であり、息子は試験的に問題を解いたことがあるのだ。・・・あかんやん、曽根崎父!犯罪じゃないっすか!
ズルして良い成績をとった薫を待っていたのは、望んでもない東城大学医学部での研究だった。父の助言とクラスメートを味方につけて、なんとか中学校と医学部との2重生活を切り抜ける。・・・というわけにはいかず、藤田教授が成果を急ぐあまり、ずさんな論文を発表してしまったことから、オトナの陰謀に巻き込まれてしまうのです。しかしながら、自業自得であることも確か。佐々木君が、そう薫に突っ込むところはなるほどと思いました。厳しいけれど、最後にはちゃんと薫を助けてあげてるし。良い男になりましたね、佐々木君。
各章では、薫の父の名言がずらり。中でも、「心に飼っているサソリを解き放て」は好きだなー。解き放ちたいぜ!あと、世界観のリンクも健在。メラノーマ関連の研究ということで、「ナイチンゲール」関係者が。あと、田口センセが教授になってましたね!しかも、ほんとに出てきただけ。笑。子供向けのせいか、仰々しいセリフが減って、大変読みやすかったです。これくらいがあっさりしてて丁度いいのかも?
桃倉さんが切な過ぎます・・・。苦い勝利・・・。
ここからは蛇足ですが、日本でも、飛び級を承認するべきか?ってちょっと考えてしまいました。個人の能力に合った環境を提供したほうが、その子の能力は伸びるし、ひいては日本の学力の発展につながるのかしら。でも、頭が良ければ、比例して精神も成熟しているかというと、そうでは無いと思うんですよね。社会にでたら、人間関係の方にウエイトがあるのは明白ですから。学問の分野によっては、例えば医学や法律なんかは倫理観が問われるものもある。経験することに、ムダなことってあんまり無いと思うんだ。だから、飛び級には賛成できないなあ~。という結論に落ち着きました。ま、あんまり関係ないと言えば関係ない世界ですけどねー。(遠い目)



「まほろ市の殺人」

/祥伝社

海沿いに位置する地方都市、真幌では季節が巡るごとに怪事件が起こる。息を呑む展開と周到に用意された驚くべきクライマックス。本格ミステリの実力派四人による渾身のシェアード・ワールド。

最初は1冊ずつ刊行されていたのを、まとめてみた感じ。こうなると、「最初からまとめて1冊で出せばいいのに!」って思ってしまうのだけど、これも話題づくりだったんですかねー。
「無節操な死人」(倉知淳)春!結局のところラブストーリーではないですか!倉知さんの作風は好きなのですが・・・。アドバルーンはちょっと無理があるっていうか、アレが街中を漂って、ベランダにひっかかったり、おしり撫でたりしたのかと想像するのは、あまり気分が良くない。
「夏に散る花」(我孫子武丸)夏!なんか、ラブ色が強いなあ・・・。とちょっと食傷気味に。一緒に待ち合わせの場所に現れた時点で、こいつは何かあるな、と思っていたのだけれど、最後の殺戮シーンにはびっくりしたぜ。そもそも、主人公にあんまり魅力を感じないので、何で2人ともこんな人を好きになったのかわかんない・・・。その謎は残ったまま。
「闇雲A子と憂鬱刑事」(麻耶雄高)秋!最近読んだ麻耶さんの短編は普通続きだったので、久しぶりに変なものが読めておもしろかった!助手が殺されたのは可哀相でした・・・。漢字をモチーフにした謎解きは納得。最後のオチもありがちと言えばそうなんですが、主人公がそれを承知済みというところに倒錯感が出ていると思う。つまり、主人公が変態なのが麻耶作品の特徴だと勝手に思っている私。
「蜃気楼に手を振る」(有栖川有栖)冬!何度も書いたことがあるかもしれませんが、私、ミステリーのトリックで双子ネタ使うのキライなんですー!結構双子ネタ多いですよね・・・。しかし、今回はすごい。三つ子と思わせておいて、実は・・・。という。なんだよ!ただ、生命の神秘の上に胡坐かいてるだけじゃん!顔が一緒じゃなきゃどうすんのさ?
こうやって感想を書いてみると、あんまり季節関係ないよね?