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読書の記録です。

「本格ミステリ08」

本格ミステリ作家クラブ編/講談社

なんだかんだで、見かけたら読むようにしている「本格ミステリ」。もう09は出てるのかな?
残念ながら、発掘はなし。
「はだしの親父」ミステリーというよりは、父と息子のちょっといい話、って感じ。久しぶりに会う兄弟といえば、みんな腹黒なイメージが先行してしまう、私の屈折ぶりを再認識させられました・・・。
「ギリシャ羊の秘密」ウンチクに閉口した。神話は嫌いではないのですが、そこまで発想する殺人犯がいる?ジャケットのタグは、いかにもこじつけ。星座シリーズの一つらしいのですが、とても他の作品を読む気にはなれないなあ。
「殺人現場では靴をお脱ぎください」題名はおもしろいんだけど、事件のオチはぱっとしない。お嬢様探偵、執事影山、警部と個性的なキャラクターがあまり生かされていなかったような・・・。
「ウォール・ウィスパー」光の三原色を使った、紫の影の解明はおもしろかった。しかし、お父さん、現金を使った宝探しごっこはいかんなあ・・・。
「霧の巨塔」既読。のはずなのに、トリックがすっかり抜け落ちていた。そこに驚いた。
「奇遇論」死人に口なし。こんな絆で結ばれた2人は、この先うまくいくのかなあ?
「身内に不幸がありまして」既読。何度読んでも動機に脱力させられる。
「四枚のカード」手品の種と、トリックがうまくかみあっている。しかし、あの手品を見て、本当に透視の能力を信じる人がいるのか。笑。あと、犯人の知られたくなかったこととは?スケープゴートに特定の人物を選んだ理由とは?と、消化不良の謎を残したままなのがひっかかる。
「見えないダイイングメッセージ」ポラロイド写真と指紋の組み合わせがおもしろい。そして、すねた音野順がかわいい。動機や犯人のオチは普通・・・。
気になっていつつも、読めていなかった作家さんの作品が何点かあったのですが、今すぐ他のも読みたい!という気分になるものはなかったなー。残念。


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「我が森に集え狼」

秋田禎信/富士見書房

ここはキエサルヒマ大陸最後の秘境『フェンリルの森』。ディープ・ドラゴン=フェンリルを神と崇める信者に、マジクがさらわれた。オーフェンは救出に向かうが、教会の元教師と暗殺者が立ちふさがる。

マジク、ハートブレイクの巻。笑。
正直、フィエナは地味でうじうじしているし、私には魅力が感じられなかったのですが・・・。クリーオウの刺激に当てられていると、あの大人しそうな感じがいいのかしらん。
ドラゴン種族の中で、私のお気に入りがディープドラゴン!彼らは最強の戦士。魔術には、視線を用いており、無駄な音を発することもなく、静かな美しい獣。“深淵の狼”と呼ばれるように、大きな狼さんの姿をしています。そして、この巻からオーフェンご一行に、このディープ・ドラゴンの子供・レキが加わることになります。レキは本当にかわいい子でして、私だけでなく、たくさんの読者が虜になったことと思います。笑。記憶があやふやなのですが、レキって最後の方で群れに戻ったんだっけ・・・?
オーフェンたちは、マジクを《牙の塔》に登録するために、トトカンタ市を目指している途中、フェンリルの森に入る。そこには、ドラゴン信仰者が集う“偉大なる心臓”村があった。マジクは、村の巫女・フィエナを助けようとして、村の指導者・マクドガルたち信者に拉致される。オーフェンは救出を試みるが、戦闘の最中現れたディープ・ドラゴンに精神攻撃を受け、囚われてしまう・・・。と、今度はディープ・ドラゴンと一戦交えます。さすがのオーフェンも、ドラゴン種族相手では一発KO負け。ああ、カッコいいわ、ディープ・ドラゴン・・・!(信者がここにも1人)
キムラック教会絡みの謎が多く提示されています。マクドガルは、キムラックで一体何を見たのか?そして、フェンリルの森の最奥部にあるものとは?キムラック教会は、後半の死の教師との死闘が印象的でした。それ以外はさっぱり覚えてなくて・・・。この辺の話も頭に入れて、続きを読んでいこうと思います~。ドラゴン種族にもコネクションがあるチャイルドマン、すごいぜ!
当時はあんまり気がつかなかったけど、このシリーズ、さりげなく結構人を殺してますよねー。さくさくっと。でも、地人だけは何があっても死なないという。笑。
やっぱり、マクドガルって字の並び、マクドナルドって読みたくなるー。


「鬼」

今邑彩/集英社

言葉にできない不安感。おさまりのつかない気持ち悪さ。誰をも奇妙な世界に誘い込む、今邑彩のベスト短編集。

今でも覚えています。学生時代、友人のミステリマニアさんが、「今邑彩ね・・・。いい作家だけど、ずば抜けておもしろい本が無いよね・・・」というようなことを言っていたのを。同年代の友人の中で、大人びていた彼女ですが、振り返れば、玄人ぶった顔をして、ミステリ批評をしていたこと自体が、青さの証明なんだよなあ・・・。要するに、何が言いたいかというと!華やかなヒット作は無くとも、確実におもしろい本を書き続けている今邑さんはすごい!ということです。
前にもどこかに書いたけれど、ホラーとミステリーの融合っていいじゃん、と改めて記しておきたい。あの、後味の悪さがいいのさ~。
では、いくつかピックアップしてご紹介しましょうっ!
「たつまさんがころした」明るく、社交的な夏美さんが、実はものすごい腹黒だったというオチは素晴らしい。その上、騙されたフリをして、あえて教えない。春美さんの秘められた悪意にそそられます。そして、願わくば、不幸が起こって欲しいと思ってしまうのです。最恐の姉妹・・・。
「鬼」そして誰もいなくなった的な追い詰められる感じが、ホラー!・・・のノリかしらん、と思っていたら、最後にはうるっときてしまいました。それは、みっちゃんが、純粋に鬼ごっこを楽しんでいたから。最後に、彼女が微笑んでくれたから。
「黒髪」黒髪は日本のホラーの定番アイテム。あるはずのない黒い髪の毛が、いたるところに現れる導入部分は恐かったー。しかし、髪そのものがにょろにょろっと動くとは思わなかったため、恐いというよりは、滑稽な感じに・・・。しかも、途中からだんだん髪の毛がかわいくなってきて、死んでしまった時には、寂しさを感じるまでに。笑。浮気は治らない病気。
「メイ先生の薔薇」子供たちと、スプラッタな光景を結びつけるのには抵抗があります。男の言葉通り、冗談であればいいのに・・・と思った。悪意は無いのに、いちばん残酷な物語。
先の展開は見えても、着地をするその時まで目を離してはいけないのだ!


「苺をつぶしながら」

田辺聖子/講談社

人は自分が愛したもののことは忘れても、自分を愛した人のことは忘れない。結婚生活から「出所」して、ふたたび一人に。乃里子、ピッカピカの35歳。

離婚後2年目の乃里子。
仕事が軌道に乗って、女1人食っていくには困らない。気のおけない友人たちと、気軽にどこへだって遊びにゆける。出所後の生活を楽しむ余裕ができたのだ。
離婚は、彼女の男女の価値観にも変化をもたらした。もっぱら色事に関心が向いていた乃里子だが、人間としての面白みに重きを置くようになった。といって、男性に無関心になったわけではなく、今回もステキな男性が出てくる。しかし、あくまでも離婚後の剛との関係が重点的に描かれている。奔放な乃里子の恋愛を楽しみにしていた私は、正直、拍子抜けした気分でした。ロマンスが足りない・・・!剛は、ロマンス成分が無いからなあ。
女は1人がいちばん!男はともだちがいちばん!このセリフも、離婚という大きな痛みを経験したからこそ中身が伴うもの。別れたあとも、良好な関係が築けるっていいなあと思う。
家庭を持つことも、1人でいることも、どちらも尊い生き方で、優劣などない。人には向き不向きがあって、自分が一番自然にいられる場所で生きることが幸せなのだ。けれど、1人で死んでいくのは心細く、寂しい。そんな一面も突きつけられる。とはいえ、色々な生き方を選べる現代に生まれて、私は良かったなあと思う。
乃里子は、常に今の自分が輝いていると言う。昔に戻りたいなんて言わない。若いころよりも、私はずっときれいになっているんだって、胸を張って言える女性が一体何人いるだろう?「もーあかんわー、年やからー。」と言い訳めいたことを口走る私は、少し反省しなければならないだろう。
女性を輝かせるもの、それは己に対する自信だ。


「我が胸で眠れ亡霊」

秋田禎信/富士見書房

オーフェンを襲ってきたのは、魔術士殺しとして知られる女殺し屋だった。おそらく、金融業の元締めあたりが、見せしめにするために始末を依頼したところだろう。しかし、ちっとも儲かってない商売が原因で命を狙われるというのは、どう考えても割りに合わねぇぞ。

3冊目!順調~。
今回のゲストヒロインは殺し屋のヒリエッタ。
オーフェンとこのヒリエッタさんのキスシーンがあるのですが、当時の私にとってはアダルトなシーンでして。当時の印象のなごりか、今読んでもアダルトな感じがしました。しかも、オーフェンのウブな反応が、女心をくすぐります。オーフェンがもてるのが、今になってやっとわかったような気がする!母性本能をくすぐるのが上手いんだよなー。
さて、ヒリエッタの本当のスポンサーに会うために、オーフェン一行はキンクホールに向かいます。そこには、いわくつきの洋館があり、オーフェンたちは、謎の奇襲を受ける。オーフェンを狙っていた暗殺者たちが、次々に殺されていくのですが、なかなか生々しい描写でして・・・。おお、こんなに詳細に書かれていたっけなあ・・・と、驚きましたー。
クリーチャーの失敗を経て、フォノゴロスが自分自身を改造した結果が魚人間とすれば、それはちょいと弱すぎやしませんかね?と思っていた。その後、サミイは魔術士を標的にしているので、そこから逃れるために自分自身を改造したのか?という考えが出てきて、それに納得した。私はそれを支持したい!爆発後も、しばらく地下で生きていたなんて、それを最後のシーンに持ってくるなんて。秋田さんは、やはりセンスが良いな~。
地人の2人は、相変わらず余計なことをしているというか・・・。笑。ヘビの抜け殻をかぶったドーチンがかわいかった。のび太みたい。
最強と言われているオーフェンが、毎回苦戦していて、弱いのか強いのか良くわからないなあと思うことがしばしばあります。しかし、なぜか、そっちのほうが燃えるんですよねー。胸中で毒づきながら、最後には勝利するオーフェンがみんな好きなんだー!
オーフェンのバンダナって、光GENJIみたい・・・。