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読書の記録です。

「私的生活」

田辺聖子/講談社

結婚→離婚。乃里子33歳。わたしの私的生活は、彼に侵されてしまった。「愛してる」よりも「もう愛してない」と告げることの、難しさ。

結婚してから、3年が経った。
乃里子と剛は、時々ケンカをしながらも2人の生活を楽しんでいた。しかし、剛の独占欲の強さや、親戚との付き合いのわずらわしさ・・・といったことから、だんだん2人の間にズレが生じてくる。乃里子はこれ以上、剛に優しくすることはできない、と「演技」をやめることを決意する。
ゴロちゃんと美々の再登場は、幸せ太りという印象だけ残して、あっという間に終了。笑。
結婚は忍耐だ、という言葉を良く耳にしますが、まさにその通りだなあと思った。剛と乃里子は、体も心も息のあったゴールデンコンビだから、余計に。お互いに、もっとこうして欲しいのに、という要求があるけれども、それをどこまで我慢できるか。あるいは、相手の要求をどこまで自分が譲歩できるか。それが、乃里子のいう「やさしさの玉」なんだろう。
乃里子は、マンションにつられて剛と結婚を決めたけれど、金持ちと結婚するってことが、あるいは、独占欲の強い男と結婚するってことが、どんな生活になるか、全然想像しなかったんだろうなあ。いやー、あれだけ殴られて、良く結婚する気になったなあ。笑。どっちかっていうと、乃里子の度量の大きさを感じることの方が多かった。いつの時代も、男にモテる女は、懐の深い女の人だよなー、やっぱり。
剛は、本当にやきもちやきで、乃里子の愛されっぷりがうらやましいくらい。笑。けれど、それが行き過ぎて、暴力をふるってしまったり、日記を盗み読みしてしまったり。乃里子が「困ったなあ。それはルール違反でしょう。」という独白があって、それは、すごく私も共感した。今で言うと、ケータイを盗み見るようなもんでしょう?私、それは絶対にやだ。結婚も同棲もしたことないから、想像の域を出ないけど、一緒に住んで、共有のものが大半を占めたとしても、侵してはいけない領域が誰にもあると思うの。それを、プライベートって呼ぶんじゃないのかなあ。
それにしても、結婚してもなお男の影が消えない乃里子。すげえ。


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「我が命にしたがえ機械」

秋田禎信/富士見書房

水と人の都市、歴史との邂逅点、麗しのアレンハタムへと、再びオーフェンはやってきた。苦い思い出が残るこの街へと…。

オチを綺麗に忘れてた!2度もだまされたぜ、ステファニー・・・。
順調に読み返しています。すぐ飽きるかなあと思っていたのですが、5冊くらい一気に読めるような気がしてきたー。
この題名、機械と書いてドールと読みます。しかし、これが殺人人形のことを指しているのであれば、人形と書いてドールと読んだ方が内容にあっているような・・・と思ったのですが、これだとカワイイ感じになっちゃうか。
思えば、オーフェンの女難の相は最初から出ていたのです。笑。1巻はアザリーで、ここではステフということに。で、次ではヒリエッタ。しかし、オーフェンの口から「恋」なんて単語が出てくると、すごい違和感を感じますねえ。
この巻では、ドラゴン種族の1つ、天人の遺跡が舞台になります。私は、このシリーズの世界観の設定がとても好きでして、その中でもドラゴン種族と魔術の設定が特に好きです。なんていうか、かっこいい感が出てますよね!我ながら頭悪い感想だ・・・。ウィールド・ドラゴン=ノルニルは、人間に良く似た姿形をしており、瞳は鮮やかな緑色。扱う魔術は、文字を媒体にしたもので沈黙魔術(ウイルド)とも呼ばれているそうな。彼女たちが、人間の魔術士を殺すために作り出した人形が殺人人形。殺人人形ってストレートなネーミング。笑。草河さんの挿絵はなかなか不気味でよろしいですよ~。あれが、「きゃはははははっ!」と甲高い声で笑うところを想像すると、ほんとにゾクッとします。
今回もちょっぴりミステリー仕立てで、最後の天人たちの真意に関する一考察がおもしろかった。
あと、オーフェンの魔術って意外にバリエーション豊かだったんですねー。「我は放つ光の白刃」が一番有名で、あとは「我は踊る天の楼閣」「我が指先に琥珀の盾」とかは覚えてて、「我は見る混沌の姫」「我導くは死呼ぶ椋鳥」「我が左手に冥府の像」「我が契約により聖戦よ終われ」なんかは忘れてましたー。オーフェンも主人公だから、何か響きが良くてカッコいいの言わなきゃいけないけど、ハーティアみたいに「光よ!」とかの方がとっさの時に絶対便利だと思うんだよね。
クリーオウとマジクが、犬みたいにオーフェンに懐いているのが微笑ましい。オーフェンもまんざらではないという、いちゃいちゃ感。笑。ある意味、ボルカンとドーチンへの武力行使も、愛。愛です!


「太陽の坐る場所」

辻村深月/文藝春秋

高校卒業から10年。クラス会に集まった男女の話題は、女優になったクラスメートの「キョウコ」。彼女を次のクラス会へ呼び出そうともくろむが、「キョウコ」と向かい合うことで思い出される、高校時代の「幼く、罪深かった」出来事。

ふふん、お主の手の内はわかっておるわ!
・・・という心構えで読んだ本。期待を裏切らないオチでした。笑。辻村さんは叙述トリックが好みなのかな?ただ、今回は当たり前のことながら、読んでいると人物像にズレが生じるので、わかりやすいと言えばわかりやすい。でも、どっちがどっちかを考え出すと少々混乱気味に。
今回は、物語に浸れなかったな~。私は、彼らと同年代ですが、高校時代のことにこんなに人生振り回されていないもんで。さらに、私の高校時代、地味でしたからー。紗江子ポジションだな。
天の岩戸に閉じこもるアマテラスのように、同窓会に一度も出席しないキョウコを引っ張り出すべく、同窓会常連組みが動きますが、彼女に会った者から企画を降りていく。自由になれたんだなあ、と思った。同窓会はいいものだけど、無意識の内に何かの義務感にかられていたんだなーと。真崎くんは、章立てもしてもらえず、かわいそうかなと思ったけど、小物には小物の扱いってことかーと納得。
リンちゃんは、確かに同性から見ても、考え方の筋が通っていてかっこいい。しかし、私の内の妬み根性が頭をもたげる・・・!というのもあるし、すべてを見透かすような、リンちゃんの人間離れした洞察力は、私には少し恐かった。そのため、響子の方に肩入れしてたかなあ。確かに、やったことはひどいんだけど、自分の好きなようにする代わりに、しっぺ返しもきちんと受け止める。毅然とした態度も、これまたかっこいい。最後に、リンちゃんが頬を膨らませるところは、人間臭くて少しほっとした。
おそらく、彼らは2度と会うことが無いのだろう。そう予感していても、何十年後かに、また彼らの道が交わればいいなあと思わずにはいられない。


「いつか、私は自由になるだろうか。誰も私を縛らず、どこにも囚われることもない。扉は私の内にこそあり、そしてまた、私の内にしかない。」


「科学の扉をノックする」

小川洋子/集英社

小川洋子が研究者と研究室の取材を通して書き下ろす、科学入門エッセイ。

小川さんと同じく、文系の私にとって、理系は永遠の憧れです。
私が生きている世界は、地球は、宇宙は、どうやってできたのか?私はなぜこんな姿なのか?なぜ、あの動物はあんな姿なのか?自分の成り立ちについて、誰もが一度はちらりと考えたことがあるはず。だけど、それを突き詰めて考える人は、あまりいないのではないでしょうか。ひとつの?に情熱を傾けた人たち、それが科学者だと思います。
本書には、そんなプロフェッショナルな人たちと小川さんの対談が収められています。ジャンルは多岐にわたり、天文学、鉱物、遺伝子学、放射光、粘菌、遺体科学、最後に小川さんの趣味でスポーツ(笑)。
どれも、魅力的な題材で興味深かったのですが、特に「天文学」と「鉱物」「遺伝子学」がおもしろかったなー。特に、「天文学」のお話を読んでいる時は、心がどこかに旅をしていたような感覚でした。自分はなんと小さいのか、宇宙はなんと広いのか。そう考えると、日ごろの悩みがふっとぶようでした。そうか、悩んだときは、宇宙の本を読めば良いではないか!と発見しました。笑。あと、とりあえず地球外生命体は、仮に存在していても、私が生きている間には地球を訪れないであろうことに安心しました・・・。
あと、良くわからないものには頭に「ダーク」をつけるという話もおもしろかった。「サムシング・グレート」のお話も。「スプリング・エイト」の話が一番難しかった!ですが、小さいものを見ようとすればするほど、大きな装置と目にも見えない速さのエネルギーを必要とする矛盾は、確かに私も美しいと感じられました。他にも、初めて聞く単語や概念がいっぱいで、しかもわかりやすく解説してあって、とても良い刺激になりました。これが入り口なんて、すごいなあ。
小川さんは、終始、プロの仕事に驚き、感心し、また人としての魅力を雄弁に語っておられます。私もまた、偉大な科学者たちの虜になってしまったのですが、それにも増して、小川さんの大ファンになってしまいました。理知的でありながらチャーミング。そして、何の抵抗もなくその世界に入り込める素直な姿勢。そんな小川洋子という作家の魅力を前面に引き出した1冊ではないかと思います。オススメ。

本とは全く無関係なのですが、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というゴーギャンの絵の題名を思い出しました。哲学と科学は、意外に追い求めていることは同じなのかもしれない。


「ぼくと彼女に降る夜 ナイトサクセサー」

八街歩/富士見書房

清夢騎士(スガム ナイト)は、容姿、成績、運動、すべてにおいて人並み。決して目立たず平凡な少年を15年演じてきた。しかし、彼の偽りの人生は、ある日一変する。“魔乖術師”と名乗る魔法使い同士の戦いに巻き込まれたのだ。

平凡を演じてきたんですって!私なぞ、素で地味なんだけど!
平凡を演じていた少年・ナイトが、魔乖術師同士の戦いに巻き込まれ、1人の少女の面倒を見ることになります。それがヨルさん。彼女は、魔乖術師のトップ「魔王」の座を争う戦い「魔宴」なるものに参加していて、ナイトくんは、彼女が勝ち抜くのを助けることになります。現在、日本にいる魔乖術師は「闇」のヨルと「滅」。それに、魔乖術師を狩る「魔女猟人(ヤクト・ヘクス)」も現れる。果たして、戦いの行方は・・・!
まあ、こんな感じの話で、設定は悪くないんですけど、どうも、ナイトとクラスメートの掛け合いとか、ヨルとナイトの掛け合いとかがうざったい。しかし一番の問題は、衝撃のラスト!勘違いかよ!笑。
まあ、ざっと説明すると、ナイトは初恋の恩師を、間違えて倒してしまったんですが、後でその間違いに気づいたんです。しかし、この勘違いに気づいてからのナイトの態度の変わりっぷりが、ひどい。そりゃあ、ヨルもさっきまで戦ってた敵をいきなり「治せ」と言われたら、「は?何言ってんの?」ってなるわな。笑。しかも、そのあと、「どんな姿になっても、先生はキレイだよ・・・。」とかクサイセリフを吐いて、3回もチューしやがって・・・。なんなんだよ、コイツら・・・!ナイトの最低っぷりはもとより、自分を蘇らせるためにヨルを利用しろとけしかけたアイリスも最低。さらに、ヒロインであるヨルも、あれだけナイトのヘタレっぷりを見せつけられたにも関わらず、まだ、ヘタレのことが好きときた!
なんなのこの人たち・・・?
そして、うちの兄弟は何がおもしろくて、これを最新刊までそろえたのか・・・?