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読書の記録です。

「妃は船を沈める」

有栖川有栖/光文社

所有者の願い事を3つだけ、かなえてくれる「猿の手」。“妃”と綽名される女と、彼女のまわりに集う男たち。危うく震える不穏な揺り篭に抱かれて、彼らの船はどこへ向かうのだろう。

怪しい関係の2人・・・、いやいや、火村先生シリーズです。
車で海に飛び込み、1人の男性が死んだ。目撃者は多数いたが、車から飛び降りる人も、泳いでいく人もいなかったという。そして男には、多額の借金があった。彼にお金を貸していたのは、妻の友人で妃沙子という女性だった。妃沙子は、お金がなく身寄りの無い若い男性を家に集めることが楽しみだった。
まあ、タイトルからも想像できるのですが、犯人はこの有閑マダムなのですよ~。とあっさりネタバレをしているように見えて、本当のオドロキは他にあるざますよ!そのせいで、前半はみすみすとマダムを取り逃がす結果に終わったわけですが・・・。後半は、全く関係ない話かと思いきや、マダム再臨!しかも幸せオーラをまとっているときた・・・!せっかく掴んだ幸せを壊すのは忍びないけれど、過去の行いは自分に還ってくるということで。窓に銃弾を打ち込むくだりは、ご都合主義的な何かがありましたなー。どうでもいいけど、アリスのワトソンぶりが読んでて切ない。笑。
物語のキーポイントになる「猿の手」は読んだことがないのですが、ホラーテイストでおもしろそうだなあ。本の解釈を語りあうのって、すごいな~。私は、いつも的外れなことを考えているので、恥ずかしくって、人になんか言えないわ・・・。だから、ブログで感想なんて書いているのだけれど。
妃沙子さんの人物像があっさりしすぎていて、物足りなかったな~。もっと、憎悪と愛情が入り混じった感じがいいのにな~。でも、あの男の子たちに、愛も執着も無かったと考えれば少し納得いくかも?



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山門敬弘氏の訃報

久しぶりにお名前をお見かけしたと思ったら、訃報でびっくりしました・・・。「風の聖痕」は好きも嫌いもなく、フツーな感じだったのですが、当時ドラマガで読んでいたので、少なからず衝撃を受けました。
まだ、お若いはずなのに・・・。
ご冥福をお祈り致します。

そういえば、吉田直さんがご逝去された時もびっくりしたなあ。作品が未完のままなのは、読者にとっても悲しいことですが、作品の産みの親である作家さんが一番悔しい思いをされているのだと思います。
病魔は突然やってくるものですが、先生方、どうぞご自愛下さいますように・・・。

「“文学少女”と穢名の天使」

野村美月/エンターブレイン

“文学少女”天野遠子が、何と突然の休部宣言!?そんな中、ひとりの少女が姿を消した。行方を追うななせと心葉の前に、やがて心葉自身の鏡写しのような、“天使”が姿を現す。

だいぶ前に読み終わっていたのさー。本が手元にあると思って油断していたら、こんなに後回しになっていました。
今回は、「オペラ座の怪人」がテーマ。オペラ座の怪人は、超有名なお話ですが、私が一番に思い浮かべるものは、「金田一少年の事件簿」だったりします。で、次は映画。意外に本には目がいきませんでした。そうか、ぶっといのか・・・。
ななせの気持ちが少し報われる巻。友達をあんな形で亡くしてしまったのだから、少しは良いことがないと!ななせさんは、私の中で赤丸急上昇中ですよ~。いつも、まっすぐ相手に気持ちをぶつけるところが、清々しい。
振り返ってみると、友達の夕歌さんは、かなり波乱万丈な人生だなあ、と思います。ななせさんはあんなにオクテなのに!笑。大人たちは、最後まで大人気なくて、私まで恥ずかしくなってしまいました。悔しいことに、才能というものは確かに存在していて、持たざる者は嫉妬の炎に身を焦がすしかないから。っていうのは、わかるんだけどね・・・。そして、思い込みから生まれた誤解ってやっかいだよな、と改めて思った。弁解する余地がないよなー。
遠子先輩は、相変わらず可愛らしく、シアワセでした・・・。そうよ、文学少女は耳年増なのよっ!笑。「本を一気食いしたい」なんて熱く語るのは、遠子先輩しかいないだろうなあ・・・。小説には強くても、勉強はイマイチな遠子先輩の受験は、どうなってしまうのでしょう?美羽さんの影よりも気になるところだ!メルアドを食べちゃったところは、切なくておもしろかった。「マッチョなサーファーが、恐山から海パン一枚で・・・」はナイス!心葉と遠子先輩の関係は、恋愛というよりは、兄妹みたいになってきました。遠子先輩の前だと、歪んだ感じの心葉も、かわいくなってしまいますから。
とうとう“文学少女”シリーズも完結してしまいました・・・。ラストまで、ゆっくりと楽しんで読んでいきたいと思います。


「ぼくは、知りたいのだろうか?
 たとえそれが、どんなに辛い真実でも?
 これまで以上の苦しみと絶望が降りかかってきて、二度と立てないほど打ち据えられることになっても?
 痛みに耐えきれず、狂ってしまっても?」



「阪急電車」

有川浩/幻冬舎

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車。8駅から成る、片道わずか15分間の阪急電鉄今津線で、駅ごとに乗り降りする乗客の物語。

「図書館戦争」が、なかなか文庫落ちしない・・・。こうなったら、意地でも待ってやる・・・!
関西のそれも宝塚あたりと言えば、地元から近いんだけど~。私は、阪急よりJRを良く使うので、阪急沿線にはあんまり馴染みがないや。残念。
有川さんのラブコメは好きですが、今回は乗れなかった。私自身、高校時代の通学として、今も遊びに出る時とか電車は良く利用します。身近な素材なだけに、「あ・り・え・な・い!」という想いが勝ちましたねー。電車の中って、不可侵な領域があります、よね?だから、喋りかけるとか、それがきっかけでラブが生まれるなんて、もー、おかしいって思ってしまいます。
共感できたのは、大人の方がマナーが悪いなあ、というところ。特に携帯に関しては、大人(中でも中年くらい)の方がマナーが悪いと思います。現代は、いきなりナイフで刺されてもおかしくない時代ですから、恐くて注意できないんだよなあ。あとは、恋人を寝取られてしまった翔子さん。友達じゃないにしろ、自分が知っている人の恋人を奪い取る気持ちとは、一体どんなものなのだろう・・・?略奪愛モノを読むと、一番に感じることなんだよなあ。やっぱ、淡白なんだよなあ、私。
各章がリレー形式で、主人公だった人が、第三者から観察されている様子はおもしろかった。みんな前向きになれるところも良かった。
でも最後には、やっぱり、電車で人生変わるような出来事は起こらないよな、という結論に落ち着くのでした。


「タルト・タタンの夢」

近藤史恵/東京創元社

下町の片隅にある小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルのシェフが、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。定連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか?甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は?

パ・マルシリーズの1作目。すべての話が、パ・マルを舞台にしたもので良かった~。同じフレンチということで、どうしても「禁断のパンダ」と比べてしまいます。同じフレンチレストランをベースにしていても、料理の仕方でここまで印象が変わるのか!と。こちらはインパクトには欠けますが、最後には、ほっこりした気分で読み終えられるところが、いいところだと思います。シェフの粋な一言も好きです。
一番好きなのは「ガレット・デ・ロワの秘密」。奥さんにメロメロな志村さんが、かわいい~。好きな女性にメロメロな男性のお話は、大好物でございます。じゅるり。「割り切れないチョコレート」は、素数(ノンブル・プルミエ)がキーワードで出てきた時には、ちょっとときめきました。しかし、母のためというオチは、ちょっと好きじゃない。「オッソ・イラティをめぐる不和」で、チーズにジャムをつけて食べる、という習慣にびっくり。ワインとチーズの組み合わせを最初に試した人は、本当に偉いと思う!「ぬけがらのカスレ」では、恋人のすれちがいをシェフが取り持つ。だけどさあ、こんな回りくどいやり方、誰もわかんないぜ?
ソムリエの金子さんの俳句がまた、かわいい。「焼いて知る、タルト・タタンの高カロリー」ってな具合に。登場人物のキャラクターも掘り下げられていて、読む順番は逆になってしまったけれど、それがまた良かったかな~という気分になりました。
料理が、食べておいしい、だけじゃなくて、誰かにとって特別な意味を持つときがある。料理で語るシェフ、かっこいいです!


「「もうひとつ、いいことを教えましょう。カスレは煮返すと、おいしくなるんですよ。一日目よりも、二日目。二日目よりも三日目、とね」
だから、もしかしたら、恋だってそうかもしれない。」