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読書の記録です。

「レンタルマギカ 魔法使いvs錬金術師!」

三田誠/角川書店

いつきのところへ先代社長の遺産が舞い込む。ところが錬金術師ユーダイクスが相続に異を唱え、“アストラル”に魔術決闘を挑んできた。穂波のケルト魔術は届かず、猫屋敷の陰陽道は星の槍に貫かれ、神道の絶対結界も突破された。果たしていつきたちの運命は!?

夏休み!のお話です。
行方不明で、戸籍上死亡扱いとなったいつきの父・伊庭司の遺産をめぐって、かつて父の片腕であったユーダイクスという魔法使いと決闘をすることに。ユーダイクスの使う魔法は、錬金術。アストラルの面々は、苦戦を強いられますが、魔法決闘<フューデ>の勝敗の行方は・・・。
どこの会社にも、古株やらお局さんやらがいて、仕事ができなくても長くいるというそれだけで、何やらすごい能力を持っているかのような空気をかもし出しているのです。もちろん、ほとんどの人は、能力も兼ね備えているわけですが!(フォロー)ユーダイクスももちろん後者の人間。彼が、伊庭司に並々ならぬ執着を持っているのは、彼もまた、ある意味司の子供であったからなんだなあと思った。けれど、彼が最後に気づいたように、残骸を追いかけていくという生き方ではなく、対等に生きてみせるという気概を持って欲しいな。同じように、ラピスも肩を並べて生きてゆける関係になって欲しいと思う。
最初に、アディが撃退された時は、意外に衝撃を受けまして。笑。後半で再登場したときも、意外にテンションがあがりまして。アディ派な自分を発見した気分でした。穂波は、過去アストラルとどんな接点があったのか、これから明かされるのが楽しみです。いつきの社長としての自覚が固まってきつつありますが、亡霊のようにつきまとう司の影。親なら、もうちょっと子供に迷惑かけないようにしなさいよー!





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「少女七竃と七人の可愛そうな大人」

桜庭一樹/角川書店

川村七竈は、鉄道を愛する孤高の美しい17歳。親友の雪風とは、静かな友情で結ばれている。七竈は、奔放な恋に生き、すぐに旅に出る淫乱な母をもつが、可愛そうな7人の大人たちに巻き込まれて…。

人間、何度でも生まれ変われると言いますが、自分を変えるために、手当たり次第男性と関係を持つとは・・・。き、極端だなあ・・・。と呆気にとられて、物語は始まりました。
そして、七回竃で燃やして上質な炭となるように、生まれた子供は七竃と名付けられます。テストで時間をロスしそうな名前だ・・・。七竃は、とても美しく生まれ、成長するにつれ、その美しさはますます浮世離れしていきます。北海道の片隅では、生きにくいほどに。親友の雪風も、また、美しい顔をしていた。2人は、とても良く似ていた・・・。
世俗を超越した七竃、もといむくむくがとてもステキだった。ビショップとのコンビもぴったり!犬は素晴らしいですよう。七竃と雪風は、相思相愛だったのだろうか。2人の間に横たわるものは、恋とか愛という言葉では表現しきれないような気がする。別れもロマンチックです。時々帰省して、顔を合わせたら気まずいよね。笑。
七竃の母、優奈は母親であることよりも、女であることの方を選んだ人なのだなあと思った。それは、子供にとって不幸なことではあるが、罪ではない。それよりも、田中教諭が罪・・・。この人とも実は関係を持ってたんじゃないか、と私は邪推していたのだけれど、本当に好きな人とは結ばれなかったんだねえ。娼婦が唇だけは本当に好きな人にしか許さないというあれを思い出しまして、ある意味純愛ではないの・・・!と見直した直後。・・・た、田中教諭め・・・!欲情などしおってからに・・・!と台無しになった気分でした。七竃母は最後まで、好きな人は1人だったんだなあ。辻斬りになるのはごめんだけど、そういう一途さは良いと思う。最後は母がすべてさらっていったなあ。
作品に流れる雰囲気が、桜庭さんがこれまで読まれてきた本を反映しているような気がした。海外の文学作品を良く読まれているようなので・・・。哲学的で、噛んでも噛んでも味がわからぬ文字の羅列たち。


「裁判官の爆笑お言葉集」

長嶺超起/幻冬舎

裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけと思っていたら大間違い。1件でも多く判決を出すことが評価される世界で、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。

結論から申し上げますと、全く笑えなかった・・・。
お前は裁判官に何を求めておるのだ!と怒られそうですが。
世の中には、様々なマニアが存在しています。著者は、傍聴マニア(たぶん)で、これまで数多くの裁判を傍聴してきたようです。裁判官のファンになったり、裁判官にパーソナリティを見出しているあたり、すごいです。裁判官も人。いろいろ思うところがあるんだろうなーと思います。裁判に関しては、裁判員制度、死刑制度等、話題が尽きませんよね。私自身、過激な意見の持ち主なので、あまりおおっぴらに語れないのが残念でなりません。量刑って、悪しき観念です。「1人殺しただけでは死刑にならない」という話を誰しも聞いたことがあると思います。全体のバランスなんて知るかっ!と思いますよ、本当に。ええ。こんなことを考えるくらい、笑えなかったです。
裁判の傍聴、興味はあるんですけどね~。緊張感のあるところに行くと、お腹痛くなっちゃうリスクを犯してまで行く気力が無いというか・・・。また一つ、私のチキンっぷりを披露して終わりとさせていただきますです。


「工学部・水柿助教授の解脱」

森博嗣/幻冬舎

元助教授作家、突然の断筆・引退宣言の真相がここに。

いつの間にか、退職されていたんですね~。著名人のブログをこまめにチェックする習慣がないもんで、そういう事情には疎い・・・。ブログも去年いっぱいで終了され、今後、予定されている書籍は出版するけれども、インタビュー等ご本人の露出はせず、静かにフェイドアウトされる予定だそうで・・・。静かに消えていくのに、あらかじめ宣言しちゃっていいのかなあ~と思ったりしました。しかし、「俺は死ぬまで歌い続けるぜ!」とか作品が未完のまま急逝とかよりは、きれいな幕の引き方ですよね。さすが、作家家業をビジネスと割り切っておられるだけのことはあります。
と、いうようなことを匂わせる内容になっていました。この話自体、真実何割で構成されているのやら謎なんですがー。ま、大筋はこんなところなのかな?
水柿君は、売れっ子作家になってから、特に変わらない生活を送っていたそうです。収入は増えるけれども、お金を使い切ることができないんだそうだ。そして、新たにパスカルという犬が家族に加わります。夫妻が、パスカルを溺愛しているさまが微笑ましかった。特に、パスカルの肥満について、おやつを減らした方がいいとか、食べたいものを食べるのが犬の幸せだとか・・・。笑。うちでも似たような論争が繰り広げられておりますですよー。
自分のしたいように、自由に生きること。それも結局は、お金があってこそなんだなー、と何回も思ったわ・・・。笑。



「名前探しの放課後」

辻村深月/講談社

「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。自殺、するんだ」
不可思議なタイムスリップで三ヵ月先から戻された依田いつかは、これから起こる“誰か”の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと“放課後の名前探し”をはじめる。

タイムスリップと言えば、タイムパラドックスを思い浮かべて、頭がこんがらがってしまうので、めっちゃ苦手なのです。今回は、時間が巻き戻ったのが3ヶ月と、割りと短期間。その間に、同級生が一人死ぬので、それを止めたいといつか動き出すのが物語の始まり。
辻村さんといえば、もう、青春!愛!みたいな思い込みがあって、それを裏切らない、非常にクサイ匂いがぷんぷんした出来上がりでございました。これ、褒め言葉です。友達のために、とか、好きな子のために、とか。まっすぐでシンプルな思いほど、言葉にして伝えるのが気恥ずかしくなってしまいます。ありがとう、なんか真面目に言うの恥ずかしくない?でもさ、辻村さんの物語に出てくる登場人物たちは、それをさらっとやってのけてしまう。実にうらやましい話です。
自殺をする人物とは一体誰だったのか?自殺は食い止められたのか?うーん、やはり、サプライズをそこに持ってくるか~。とうなってしまいました。しかも、郁也を始め、あの人この人が登場と、ちょっとうれしくなってしまいました。特に彼女が、とても素晴らしい女性になっていたことが良かった。そうなんだよ、柔らかく笑う感じなのよ~。しかし、みんな演技派だな。どこかでぼろが出てもおかしくないのに!
私も、あすなと同じく水泳を途中で投げた人間なので、練習の場面はすごく共感できた。今25m泳げって言われたら、絶対ムリ。でも、25m泳げるようになった、っていう気持ちだけは覚えている。あすなを見守るおじいちゃんが良かった。紳士は良い・・・。うっとり。
チャラい感じのいつかと、真面目で目立つことが嫌いなあすな。接点の無い2人だけれど、いつかが一歩を踏み出すことで、つながりができて、大きな輪になった。誰かとつながることって、こういうことなんだなあと思った。
やっぱり、あらゆる物語のテーマは愛なのだ!ということです。笑。