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読書の記録です。

「鋼殻のレギオスⅢ センチメンタル・ヴォイス」

雨木シュウスケ/富士見書房

「レイフォンに関係することだよ。君に災難が降りかかろうとしている」槍殻都市グレンダンで、レイフォンの帰りを待つリーリンの前に突然銀髪の青年が現れた。一方、学園都市ツェルニではレイフォンたち十七小隊が偵察隊を命じられ、廃都市に赴くことになる。

アニメをはずみで見てしまいました。・・・アニメでした・・・。なんか、久しぶりにアニメ声を聞いたけど、違和感がありまくりです。フェリも隊長も、そんな声じゃない!・・・かといって、ドラゴンボールみたいに、実写化は問答無用。イメージを形にするのは難しいぜ。
今回は、天剣授受者時代のしがらみが絡んできます。・・・今まで絡まないことはなかったか・・・。今回も、ですね。
大きな動きとしては、グレンダンでのリーリンの周辺が騒がしくなってきたことでしょうか。あと、陛下のお出まし。リーリンの謎。グレンダンが出てくるってことは、彼女はすごいキーパーソンなのでしょうか?
あの事件をひきずっているのは、レイフォンだけではない。色々な人に傷跡を残し、その後の人生に大きな影響を与えていることが判明してきました。こう見ると、主人公だけど、本当にひどいことをした人だよ。その罪の重さが明らかになればなるほど、その罪とどう向き合うのか、レイフォンのこれからの姿勢が問われている気がします。十七小隊の存在、ニーナの実直さが、レイフォンに良い方向で作用しているのは間違いない。だから、私はニーナがいちおしなんだけどなあ。だけど、友達で終わりそうじゃん!だから心配なのさ。一番応援してるのさ。
あとはー、廃都の偵察が一応メインの話でして、レギオスに関する話もちらほら。都市の精神体ってものに関する興味も、またふつふつと湧いてきました。いつかはレジェンドさんの方も読んでみたい。
過去は、これから先も、どんどんレイフォンを追っかけてくると思う。さあ、どうするどうなるレイフォンの苦悩!悩めー!悩むのだー!
どうでもいい話だけど、前のカバーデザインの方が好きだったな・・・。


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「秋期限定栗きんとん事件」

米澤穂信/東京創元社

ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。

「夏期限定トロピカルパフェ事件」で、決別した小鳩くんと小山内さん。その後9月に、小鳩くんは同級生の仲丸さんと、小山内さんは新聞部の一年瓜野くんと付き合うことになる。互いに別々のパートナーと過ごす2人だが、10月から続く連続放火事件を追っていく内に、再び会うことになる・・・。
マロングラッセ(仮)から、栗きんとんに題名が変わっているではないか。どちらでも良いのでは・・・?と思っていたのだけれど、最後の最後で「なるほど~」というオチがありました。どっちでもいいなんて、小山内さんに怒られるなあ。上下巻を一気に読み終わってしまうくらい、飽きない展開でした。ドラマチックな何かがあるというわけではない。私の場合は、小鳩くんと小山内さんがどのようにして再会するのか、そこが気になって気になって。だって、いきなり、2人とも別の人とすぐ付き合いだすんだもの。米澤さん、この展開はすごいっすよ。笑。
最終的に小鳩くんと別れた仲丸さんの言い分が、結構良くわかる気がする。3股じゃなくて。笑。やきもちを焼いて欲しい、あるいは、相手が少しでも自分に影響されて変わって欲しい、とか。何の変化も無かったら、私ってその程度の位置しか占めてないのか・・・って寂しくなると思う。最初の方は、結構小鳩くんウキウキしてるように見えたんだけど、パスタのくだりは、確かにいかんね。人間失格だね。一方の小山内さんサイドは・・・。よくわからん!小山内さんは、ミステリー度がアップしただけで、なんか全然親近感がわかないのだよー。私の好みの女の子ではないのよう。なんでだろう・・・。もう、瓜野くんは・・・、もう、いいや・・・(なげやり)。最後になっても、特にかわいそうとも思わなかったあたり、私もなかなか薄情だと思う。
連続放火事件については、新聞部の張り込みが入って、小鳩くんが乗り出してきたあたりからおもしろくなってきたなあ。放火の法則、と犯人をおびきだす作戦。ひっぱったわりには、真犯人はあっさりしすぎていて、そこは物足りなかった。結局、また、小山内さんの復讐劇だったのか!
いまさらだけど、小市民にはとてもなれない自分を認めた2人。卒業まであと半年。十分な裏ごしがなされるのか?冬期限定のスイーツはなんだろ。おしるこ?チョコフォンデュとか?


「甘いから、好きなの。それだけよ」


「女王国の城」

有栖川有栖/東京創元社

大学に顔を見せない部長を案じて、江神二郎の下宿を訪れた後輩アリスは、神倉へ向かったと思しき痕跡を見つける。アリス、マリア、望月、織田はレンタカーを駆って神倉へ向かう。江神の安否は確認したが、思いがけず殺人事件に直面する。

長編はおそらく初読みです、有栖川さん。
火村英生シリーズだけかと思っていたので、江神二郎シリーズなるものがあることを初めて認識しました。恥ずかしい!ごめんなさい!
いやあ、長かった。笑。最近は、あっさりしたものが多かったので、こんなどっしりしたボリュームは久しぶりでした。ちょっと冗長な印象もありますが、久しぶり故か、長さを楽しむ余裕もありました。きっと良いタイミングでこの本を手に取れたんだろうな。
さて、シリーズ4作目らしいのですが、シリーズ途中からでも十分楽しめました。望月さんと織田さんの区別が付きにくかったくらいで・・・。舞台は神倉という架空の地。人類協会という新興宗教団体の総本部で、殺人事件が起こります。警察への通報を拒む幹部たち。連続して起こる殺人事件。11年前に起きた、不可解な事件。現代と過去の事件が、一丁の拳銃によってつながる場面は、とても爽快で後半は一気に読んでしまいました。さまざまな状況証拠や証言、小説の中に丁寧に散りばめられたピースが一つになる様は、本当にお見事。そして、最後には、事件の裏にもう一つの事件が!そのような匂いはしていたのですが、なるほど~と納得しました。頭脳労働だけではなく、脱出劇や鬼ごっこもあり、推理研は意外にアクティブだなあ、と感心する場面も。
謎解きをこつこつと積み上げるミステリーかと思えば、時々思い出したようにロマンチックなマリアの独白が入り、すごく浮いてました。笑。「閉ざされた城の女王様。・・・」とか。最後の「ううん、全部」なんて甘すぎて食あたりを起こしそうですよ!私がアリスだったらイチコロだよ!アリスとマリアの関係を、どう持っていこうとしているのか、そこも興味津々です。友達以上恋人未満のままか、江神さんも絡んでくるのか。でも、名探偵は、そこを超越していて欲しいかも・・・。という願望もありつつ。そこも決着をつけて欲しいなあ。シリーズ最新作が出るのが先か、私が前3作を読み終えるのが先か・・・。早くも負けそうな予感がしています。


「とある魔術の禁書目録」

鎌池和馬/アスキー・メディアワークス

自分の部屋に、純白のシスターがいきなり空から降ってきた。そのシスター姿の少女はこう言った。自分は魔術の世界から逃げてきたと。ここはアンチ・オカルトの学園都市。上条は『インデックス』と名乗る謎の少女の言動をいぶかしむが、二人の前に本当に“魔術師”が現れる。

反射的に、きんしょもくろく、と脳内で読んでしまうのですが、正しくは、インデックス。
最近、いろんなシリーズものに手を出しておりますが、これまた15巻くらいまで出ている現在も続いている長編シリーズです。読むのにどれくらいかかるんだろう・・・?笑。先にマンガの“とある科学の超電磁砲(レールガン)”を読んで、それが気に入ったため、小説も読んでみようかなあと。小説のマンガ化は、しない方がマシだと思うことが多々あるのですが、最近は絵柄もまあまあ、世界観のイメージも保って描かれるマンガ家さんをチョイスされていることが増えて、いい傾向だなあと偉そうに評価してみました。ハイムラキヨタカさんの絵も好きだしな。
そして本編。ライトノベルを読むたびに、色んな世界観を良く考えるものだなーと感心する私ですが、またまた新しい魔法観が現れました。まず、主人公・上条当麻は、学園都市の学生寮で暮らす高校1年生の男子。この学園都市は、超常現象をESPとして科学的に分析、魔法という概念は持たないアンチ・オカルト集団。学生はここで、能力の開発を受け、ESPを身につける。教師は、能力の開発をするが、能力そのものは持たない。上条は、能力はレベル0(全くない)のだが、右手にはあらゆる魔法を打ち消す力「幻想殺し(イマジンブレイカー)」が宿っているのである。これは、科学にも魔術にも属さない異能の力だと言われる。・・・という設定が土台になっております。魔法を無効化するって設定、流行ってるの?
夏休みが始まったばかり。上条のアパートに、教会から逃れてきたインデックスと名乗る少女が降ってくる。追っ手の魔術師達の狙いは、インデックスが完全記憶した10万3千冊の魔導書。上条は、成り行きながらもインデックスを放っておけず、彼女を助けることになる。
ただのボーイ・ミーツ・ガールな話に収まりそうなところを、なぜ、かつての同士であった魔術師が彼女を狙うのか、その目的と本当の考えが明かされていくところに深みがありました。守りたいけれど、そうするためには記憶を奪うしか方法が無い・・・。けれど、しがらみの無い上条が、それを打破してみせた時、彼らは無力感を味わったのかな。嫉妬しただろうなと思った。敵役の方にシンパシーを感じてしまったよ・・・。男気溢れる上条君も見所です。ライトノベルの主人公は、考え方がクールな人が増えている昨今、彼のような気持ちも行動も熱い男は貴重な存在です。
めでたし!という感じの終わり方だったので、これから先15冊分、どのような話が待っているのか・・・。“とある科学の~”から入った読者としては、もっと美琴ちゃんの出番を増やして!とお願いしたい。
一つ、苦言を呈するとすれば、「~せう」喋りでしょうか・・・。上条の喋りは、寒すぎる・・・。


「死写室」

霞流一/新潮社

映画館、試写室、ロケ先&セットの撮影現場・・・で発生する、奇怪な事件の数々。密室、透明人間、斬首魔、建物消失などVFX級の謎に酩探偵・紅門福助が挑む!

短編集!霞さんの短編集を読むのは初めてだ~。
すでに、他ブログの感想で「普通」という文字を良く見かけていまして、「そんなもんか~」と思いながら読んだ次第。本当に、普通でした。(いい意味で!)
短編の構成は、あとがきでも触れられているとおり、映画が世に出るステップの順序になぞらえられています。企画、製作、プレス・・・というように。こういう細かいこだわりは好きです。本当にたくさんの人の血と涙の上に、映画は成り立っているんだなあと感慨深い感想を抱いたほどです。
ピックアップしますと・・・。「届けられた棺」。リメイク映画で名作にはお目にかかれない、という意見に賛成!「霧の巨塔」。頭の中で一生懸命シュミレーションしてみた結果、これは・・・「あると思います!」。「モンタージュ」。これはバカミスっぽいなあ。なんじゃ、そら!と。よっぽど目が悪かったら、鏡に映ったように見えるのかなあ。「ライオン奉行の正月興行」。バカミスが垣間見られた作品。着ぐるみの中とは・・・。それにしても、トイレで見つかる他殺体が出てくると、「この殺され方だけは絶対にいやだ・・・。」と強く思います。
確かにパンチには欠けますが、全体の構成とニヒルな紅門福助(40過ぎ、独身)のおかげで、楽しめました。