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読書の記録です。

「新本格もどき」

霧舎巧/光文社

記憶喪失の吉田さんはミステリマニアの店主が作るカレーを食べるたびに、新本格ファンなら思わずニヤリのあの探偵、この探偵になりきってしまう。が、その推理は…。

・・・本格ミステリのパロディだとは思わなかった・・・。
気になるけど読んでない、というか手が回らない、という作家さん(作品)が見事に集まっていました。つまり、元ネタを知らない作品が結構あったということで、知らなくてもおもしろかったんだけど、知ってたらもっとおもしろかったのに、という悔しさを感じずにはいられない!
既読は、山口雅也さんの「13人目の探偵士」のみでした。あとがきで、一番凝った作りだ的なことが書いてありましたが、まさしくその通りで、構成が一番好きでした。ゲームブック風で、なおかつ矛盾が無いというところがすごい。と、いうことで、一番のお気に入りは「13人目の看護師」でした。次は、「雨降り山荘の殺人」「三、四、五角館の殺人」が好きでした。建物トリックといえば、大がかりな仕掛けが考えられますが、これは、建物の構造自体が・・・という発想が良いです。とにかく、いろんなトリックが詰め込まれていて、たぶん、私あと何日かしたら忘れます。笑。やったあ、もう1回楽しめるじゃん!
元の作品のパロディでありながら、吉田さんとエリさんの仲が進展したり、吉田さんの記憶喪失や変身の謎も明らかになっていきます。別個の作品として独立しているので、私のように原作を知らなくても大丈夫。また、原作のネタバレにつながるようなこともないそうなので、ご安心を。
歌野さんも、倉知さんも好きなんだけど、初期作品になかなか手がのびなくて・・・。しまったなあ。有栖川有栖さん、我孫子武丸さん、法月綸太郎さんも読めてないやー。綾辻さんの館シリーズも制覇したいのになあ。と仕方ないこととはいえ、自分の読書量の足りなさに、うじうじしてしまいます。


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「鋼殻のレギオスⅡ サイレント・トーク」

雨木シュウスケ/富士見書房

発端は、幻馴染みのリーリンからレイフォンに宛てられた手紙。そんなことはつゆ知らず、レイフォンは小隊長ニーナとのぎすぎすした関係、さらに「戦う」ことの意義について悩んでいた。一方ニーナも「強さ」とは何か、自問自答する日々を送る。そして手紙は、あちらこちらを飛び回る・・・。

バトルシーンもあるのですが、不思議にまったりじんわりと浸み込むような第2巻。やはり、このシリーズの魅力は登場人物たちが、もだえながら悩んでいるところを俯瞰して見られるところかもしれません。「んー、青春だねー。」とか思いながら、大人ぶってみたり。
1巻で、ケタ外れの強さを見せつけたレイフォン。それを見て、ニーナ隊長は小隊をもっと強くできるのではないか・・・?どうしたら、もっと強くなれるのか・・・?と悩むことになります。1人で。そう、1人で!確かに、十七小隊の面子に小隊のこれからについて語る余地なんてないけどさあ。なぜ、こいつらは1人で抱え込んでしまうんだー。
しかし、結果的に、どう対応するべきか決めかねながらも、レイフォンが良き相談相手になりそうで一安心です。シャーニッドやハーレイも、まあ、頼りにしていかな・・・?フェリが期待を裏切らないやる気の無さっぷりです。彼女はこれからどう変わっていくのだろう。フォンフォンは、レイとんよりセンスの良い呼び名だと思うの。「レイとん」は・・・ちょっと、ねえ・・・。
私、なんだか、ニーナが一番好きみたいです。まっすぐで、かわいいなあ。応援したくなるさ。
強くても、間違うことがある。強くても、不安を感じたり悩んだりする。その不安定さを見ていると、私はなぜか、とても安心できるのです。ああ、彼らは人間なのだなあと。個人がどう強くなるか、ではなく、十七小隊がどう強くなっていくのかに注目しています。ニーナ隊長がんばって!
・・・何か忘れていると思ったら、ラブ模様か・・・。うーん、現状維持?


「お前には私がいる。仲間がいる。」


「“文学少女”と繋がれた愚者」

野村美月/エンターブレイン

ある日遠子が図書館から借りてきた本は、切り裂かれ、ページが欠けていた。“文学少女”が、これに黙っているわけがなく、暴走する遠子に巻き込まれ、何故か文化祭で劇までやるハメになる心葉と級友の芥川。過去に縛られ立ちすくむ魂を“文学少女”は解き放てるのか?

ああ、遠子先輩・・・。なんてかわいいんだ・・・!
もう気分は麻貴先輩です。そりゃあ、写真だってコレクションしちゃうさ!しちゃうとも!笑。それにしても、ツインテールにチアガールのコスプレとは。おぬし、なかなかやるな・・・。
と、遠子先輩を愛でつつ、今回はいつも穏やかな芥川くんの心の闇に迫ります。し、しかも、あんなにお堅い感じだったのに(私の勝手なイメージなんだけど)、色恋沙汰ですぜ!モチーフとなる本は、武者小路実篤の「友情」。三角関係だらけです。トライアングラー!(もう古いか・・・)いつもは、「何をうじうじしてんねん。うっとうしいわー」となるところなんですが、この、苦悩する芥川くんがなんとも母性本能をくすぐるのです。「どうしたの、芥川くんっ。君は一体何に悩んでいるのっ。」という感じに。これはモテるよね、確かに・・・。なんかわかるなあ。
最後のモノローグでは、登場するたびに、あの「コノハには、きっと、わからないだろうね」というなんともムカツク台詞がリフレインされる美羽さんの名前が。とうとう次巻で出てくるのかしらん。おそらく、心葉の才能に対する嫉妬なんだろうな、と思うんだけどー。それだけで、屋上から飛び降りたり、復讐したりするだろうか?っていうか、他人のことなんてわからないに決まってるじゃないの。話もしないで、そりゃないっしょ。
いつもは私の中で放置プレイ気味な心葉くんなんだけど、後半の遠子先輩とのやりとりから、芥川くんとの関係を一歩踏み出したあたりは良かったなあと思います。なんだかんだで、私、熱い物語が好きみたいです。まあ、これも遠子先輩の粋なお言葉があったからこそで・・・。と結局そこに落ち着く。
琴吹さん、ここまで心葉がにぶいと不憫でしょうがない・・・。笑。


「一緒に乗り越えたい。
 胸が震えるほど強く願う。
 どうか、どうか。」


「空の中」

有川浩/角川書店

200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?

夏の100冊より。今シーズンは、目玉のおやじのブックカバーを狙っています・・・!
読み終わって、これはSFの皮をかぶったラブストーリーだなあ、と思った。
私は大人コンビがたまらなかったのですが・・・。「ファイターパイロットの君」で出てきた武田三尉がいる!なんだこの2人。かわいすぎる。笑。スピンアウトを読みたいって思った読者の方々の気持ちがよ~くわかりました。そして、書いてくださった有川さんに感謝。もう1回読みたくなっちゃったよー。もちろん、若い2人も甘酸っぱくてよかったです~。書き下ろしの2人のその後。蛇足になりがちなのですが、これは良かった。
と、良かった良かった連発してますが、中盤まで瞬くんの物語が痛くて痛くて、仕様が無かった。途中で読むのをやめてしまおうかと思ったくらい。それは特にフェイクとの関係で、間違った方へ間違った方へシフトしていく彼の姿を読んでいられなかった。なんでそうなっちゃうの?って。フェイクがねえ・・・。もう、本当にかわいい奴だから余計にそう思ったのかもしれない。私、真帆には、あまり同情的ではないのですが・・・。でも、彼女もいくら賢くてもまだ子供であり、本当は大人に庇護されるべき立場だったのに、矢面に立って辛い思いをしたので、それは悲劇だなあと思います。しかし、同情はできないのよ・・・。
SF的側面の「白鯨」と名付けられた知的生命体とのやり取り。それをめぐる策略と思惑もおもしろかったです。ディックが分裂してから、それを多重人格になぞらえて統合の道を探すプロセスが興味深いところでした。進化の過程も無理なく受け入れられた。この設定を考えた有川さんは、本当にすごいな、と。現実と空想の境界がうまくとけあっている。
最後に、この本の屋台骨と言っても過言ではない、宮じい。こういう年のとり方をしたいものです。年をとってるからえらいんじゃない。経験に裏打ちされた言葉だから響くんだと思う。大げさにとか、えらそうにでもなく、ただ淡々と事実のみを語る宮じいの言葉は、深い。
これは、オススメです。もう、ほとんどの人が読んでると思うけど!笑。


「僻むなって。僻んだ奴は伸びないって。」


「ワーキング・ホリデー」

坂木司/文藝春秋

元ヤン・ホストが宅配便(特別仕様車)ドライバーに転身!?血気さかんな若者と所帯じみた小学生、親子と仕事と仲間によるひと夏の贈り物。

略してワーホリ。といえば、現地で働きながら語学留学することで、一時期流行ったなあーと思い出しました。
この題名が、上記と同じ意味を指すかどうかはわからないのですが・・・。子供がお父さんのところに留学するような感じでしょうかー。習うのは、語学ではなく男塾!みたいな。今回の主人公・大和は、元ヤンのホストが転職した宅配便のドライバーならぬリヤカーひきでございます。そんな彼の前に、昔の恋人が黙って産んだ子供が現れます。こんなシチュエーション、男性だったら誰でも想像つくのかなあ・・・?面倒見の良さといい、子供がかわいくってしかたなくなったり、大和という人は、もともと子供が好きで根が優しい人なんだなあと思いました。それか物語のご都合主義か。いや、そうとでも考えないと。普通ここまで情は移らないだろうからな~。それまで存在も知らなかったわけだし。
ハチさん便の仲間もいい人たちばっかりなんだけど、私はジャスミンが大好きでした。久しぶりにヒットしたオカマキャラです。笑。
これまでのように、連作ミステリーかな?と思っていましたが、これは違いましたね。親子の物語というか。予想は外れたけれど、いい話でした。最後に、進くんが駄々をこねるところは本当に良かった。
残念なところは、主人公が元ヤンという設定上の一人称・・・。正直なところ、ドン引きでした・・・。さっ、寒すぎる・・・!
毎回、坂木さんの職業に対する観察眼はすごいなあと感心させられます。今回は、宅配便のあれこれがいっぱい詰まっていました。私も一人暮らしの時には良く利用させてもらっていたなあ。ええと・・・本ばかり詰めた、鬼のように重い箱とか送ってごめんなさい・・・。