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読書の記録です。

「七人の武器屋 戸惑いのリニューアル・デイズ!」

大楽絢太/富士見書房

「アタシは、今この時をもって、エクス・ガリバーを抜けるね」。呆然としているオレの前で、ミニィちゃんが怒った。ジャンがキレた。でも、イッコの決心は揺らがなかった。イッコは前へ走ってく。オレは…オレは、どうしたらいい!?

展開は多少想像がついてしまったものの(雑誌などの前情報により)、それなりに楽しんで読めた第5巻。ここで一部完・・・だったのですが、その後二部が3冊刊行されており、私の読書の遅さが露呈してしまっているという・・・。面目ない・・・。
正直なところ、物語が始まったときは、彼らが武器屋を卒業する可能性を思いつかなかったので、進む道が枝分かれしたことに驚きました。そんな私には、ノンの言葉が印象に残りました。そう、「やりたいことが見つからない人や将来に不安を抱える人が集まってできた店」だったということをうっかり忘れていたわけです。武器屋はゴールではなく、スタート地点だったんだ。たぶん、とどまることになっても、その場所を離れることになったとしても、終着点なんてないんだよな・・・。いつでも、どこにでも行けるよね・・・。と、なんだか自分のことも一緒に考えてしまったなあ。どこかにも書きましたが、新しい環境に飛び込むのはもんのすごいエネルギーを使うので、足踏みしちゃうんですよね。ふみふみしてるうちに、チャンスは逃げていくから、しっかり尻尾をつかまないといけないんだ。
と、いうメインテーマの裏で、あのとってつけたような悪役がビミョーでしたね・・・。あまりにしょぼい。しょぼすぎて、かわいそうになってしまいました。あまりに人格がおざなりというか・・・。ま、しょーがないか(ばっさり)。
たった八ヶ月の話とは思えないほど冒険していたよなあと、マーガスと一緒に感傷的になってしまいました。えーい、まだまだ冒険は続いているのだ。これからも暴れてくれるって信じてるからね!


「今宵の天使は、愛に飢えているー」

第5巻の影の主役はノンだと思います。いや、ホントに。




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「贄の夜会」

香納諒一/文藝春秋

「犯罪被害者家族の集い」に参加した2人の女性が帰宅途中、殺害された。刑事の大河内は被害者の夫に不審をおぼえるが、なぜか公安からストップが。猟奇殺人鬼とプロの殺し屋がぶつかるとき、警察の腐敗を目にした大河内も孤独な闘いを始める。

おお、2段組み・・・。
と、いうわけで、大変読み応えがありました。最後の方の追い込みの展開がすごくてですねー、職場まであのぶっとい本を持っていって、休憩室に閉じこもって読んでいました。続きが知りたい!だけど読むの遅いから、なかなかたどり着かない!もどかしい!そんな感じ。
想像と大分違うお話でした。警察小説だとは思っていなかったなあ。スナイパーもからんできて、ちょっとハードボイルドな感じ。このスナイパーがとてもいい男なのです!大河内さんそっちのけでした。笑。なんか、普段クールな人が、女の人にころっと参っちゃうのって良いなあ・・・。長身だしー。かっこいいしー。相手の人がうらやましい・・・。
警察小説となると、やはり癒着の問題が出てきます。実際、こんな風に立ち向かうことって無いんだろうけど、大河内さんの奮闘ぶりが熱いです。同僚の刑事たちも、最初は誰が誰だかわからないんだけど、ちゃんと役割分担があって、それぞれの生活も描かれていて、後半の展開にはもうびっくりしてしまいました。えー、あんまりですよー。
あの19年前の事件、酒鬼薔薇の事件と「心にナイフをしのばせて」の事件を思い浮かべてました。心理学のあたり、多少無理があるような・・・?どんだけ犯人がその道のプロやねん、と突っ込まざるをえない。という難点が動機の核になるのですが、ここは、犯人は誰か?というところに執着せずに、大河内とスナイパーの2人が懸命にもがいている様に熱くなるといいと思いまっす。
っと、なんとか、ネタバレしないように感想が書けたかな・・・?


「命よ。自分の命に誇りを持つの」


「スロウハイツの神様」

辻村深月/講談社

猟奇的なファンによる小説を模倣した大量殺人事件から10年。筆を折っていたチヨダ・コーキは見事復活し、売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせた。しかし謎の少女の出現により…。

ああ、やっぱり同じ種類のサプライズか・・・。というがっかり感もありましたが、いい話でした。まあ、最後のほうはご都合主義的なところもあり・・・。これはミステリーというジャンルでは括れないのでは。
環がもんのすごく苦手なタイプだなー、と思ってました。もう出だしから、最後の方まで。だけど、最後の最後で、好きな人のことになるとなんで余裕が無くなっちゃうんだろうっていう独白があって、突然180℃見方が変わっちゃいました。なんだ、かわいいヤツじゃんって。それぐらい、あのシーンは良かったと思います。うん。
私は、あまり他人の領域に踏み込まないし、踏み込まれるのも苦手なので、彼らの関係はとてもしんどそうに見えたなあ。ちょっとうらやましいけど・・・。なんか、あんまり、人の生き方とか身の処し方に突っ込んだ意見を言うことってないじゃないですか。私は無いんです。なぜかというと、自分自身が今の自分に疑問を抱いていて、逆に突っ込んだことを言われた時に、ショックに耐えれられる自信が無いからなんですけど。そこが違うんかなーって思いました。迷いはあるけど、何かを持っているというか・・・。そこがあるから、言いたいことが言えるんかなー。みんながぶつかって、そんで成長して、巣立っていく。まさに青春小説。


「まぁ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね」


「サイン会はいかが?」

大崎梢/東京創元社

「ファンの正体を見破れる店員のいる店でサイン会を開きたい」若手ミステリ作家のちょっと変わった要望に、名乗りを上げた成風堂だが…。駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかりものの書店員・杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵のコンビが、書店に持ち込まれる様々な謎に取り組んでいく。

「配達あかずきん」に続く短編集第2弾!
本屋の謎は本屋が解かなきゃ!と頑張る店員さんたちが頼もしいです。よくぞここまでネタが続くもんだと思います。意外と続きそうですね~。本屋の裏側なんかは、相変わらず興味深いです。雑誌のレイアウトとか、付録とか~。そう、マンガを買った時に、時々レジでマンガのグッズをもらうのですが、これ困りますよね。しおりですらいらないってば。笑。ファッション誌の付録も、使えないものが多く、付録があるから買わないなんて時もあります。梱包したり、手渡したりする本屋さんも大変なんだな~。あからさまに迷惑そうな顔してすいませんでした。
全体的にほのぼのしつつも、表題作「サイン会はいかが?」はちょっとみぞおちに「うっ」とくる作品でした。うーん、あれはショックだろうなあ。一度失ったものは、もう戻ってこないことを思うと切なくなりました。「君と語る永遠」話とは全然関係ないのですが、そういえば広辞苑が欲しかった!ということを思いだした・・・。本当に欲しかったのか、自分。
嫌いなテイストではなく、むしろ好きなんだけれども、インパクトに欠けるのが残念。いまいち印象に残らないのです。


「ηなのに夢のよう」

森博嗣/講談社

地上12メートルの松の枝に首吊り死体が!遺されていたのは「ηなのに夢のよう」と書かれたメッセージ。不可思議な場所での首吊り自殺が相次ぐなか、西之園萌絵は、両親を失った10年まえの飛行機事故の原因を知らされる。

萌絵さんが前面に出てますなー。ぐぐーっと。
嫌いではなく、むしろ好きなんですけど。萌絵さんの思考に迫るところは、いいと思うんです。ただ、これ加部谷と愉快な仲間たちシリーズだと思っていたので、「うーん?」と・・・。これから、配分が違ってくるとしても、加部谷たちが、あーでもないこーでもない、と議論を戦わせる(加部谷が一人で喋る)ところは好きなので、ここは絶対崩して欲しくないなあ。今回の事件、不可解な場所での首吊りは、風呂敷広げっぱなしですからね・・・。もう、せめて可能性の検討が無いとやってられないですよ。結局のところ、一つの事件のトリックよりも、背後の大きな何かについての話の一部分なんでしょうね。まあ、それでいっか、と思うような登場人物の魅力や、シリーズとしてのポジションを築いた森さんの勝利か・・・。
愛ちゃん・・・。誰?って思ったけど、確かにどこかで読んだような気がするのよ、君の名前!って感じで、一体どこに出ていたのか思いだせない。どうも、忘れっぽくてだめだなー。
最後は号泣でした。ううう・・・。物語が大きな展開を迎えようとしています。登場人物が成長していくことを感じることができる。シリーズものの醍醐味ですね。


「悩みがあったら、国枝先生に相談すると良いよ」
山吹は言った。
「ああ、それは速攻で効き目ありそうですね。先生、私、死にたくなっちゃったんですけど・・・・・・」
加部谷はそこで声を低くする。
「死ねば」