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読書の記録です。

「びっくり館の殺人」

綾辻行人/講談社

クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、〈リリカの部屋〉で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に!それから10年、事件の犯人は捕まらないままだというのだが…。

「十角館の殺人」(しかも読了したのは6、7年前)から、全部すっとばして「びっくり館」へ・・・。ホントは順番通りに読もうと思ってたんだけど!だけど!図書館にないんだもの~。と、いうのは言い訳で、出ている分を全部読む根性が無いだけかも。
ミステリーランドとはいえ、中村青司という謎の建築家が設計した屋敷にまつわる事件であることに間違いない。と、いうわけで、ちょろりと探偵役の彼も出てくるのですが、ホントにちょろりやな。笑。
残念なところは、トリック自体にびっくり館の構造が深く関わっていないところでしょうか。結局は、ちょっと肩透かしな感じの種明かしでしたからね。それよりも大きな謎が、ラストのあおいちゃんの変化かなあ。俊生に洗脳されたとしか思えない!ああ、あの後どうなってしまうのかしら・・・。はらはら。そんな感じに、見所はトリックよりも、そんな悪魔の子となったちょっとアブナイ感じの俊生くんかもしれません。見所と言えば、おじいちゃんの腹話術シーンも必見ですよ!新名さんと一緒に「うっ」となってしまうこと請け合いです。笑。
意外に、今まで読んだミステリーランドの本の中で、一番読みやすかったです。しかし、仮にも子供向けの本で近親相姦ネタを持ってきて良いのだろうか・・・。




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「クリスマスにさようなら」

浅暮三文/徳間書店

ミステリー、恋愛、音楽、冒険ファンタジー。四つの要素が奏でる、あなたへの素敵なプレゼント。四匹のテディベアをめぐる、心優しきクリスマス・ストーリー。

なるほど、そうジャンルわけできるな!と後で気がついた。
浅暮さんといえば、シュールな作品というイメージだったのですが、この本の短編はどれもスタンダード。・・・なだけでなく、どれもめっちゃええ話なんですよ~。目次のくまさんマークのコンテンツが、かろうじて「浅暮さんだな~」と感じるポイントでした。かわいい~。
本の題名からも推察できるように、テディベアと主人の別れを描いています。ゴミ捨て場から始まるシーンを読んで、どうしよう、すごく残酷なんじゃないの・・・?と読むのをためらいました。しかし、「いらねーや、捨てちゃえ」ぽいっ、と捨てられたわけではなく、それぞれのドラマ、そしてのっぴきならない事情が明らかにされてゆきます。安心しました。むしろ、彼らはうちのぬいぐるみ達よりも大事にされ、主人の心の支えとなって、人生の大事な部分に関わっているのです。私、今まで覚えている限り、ぬいぐるみに相談したことは無い!笑。そんな私からすれば、tものすごい愛着です。特に、マルチェロのシフォンのかわいがりようがとても良い。それだけに、別れは切ない・・・。
まあ、最後に水をさすようで何なんですが、リンダだけはブレックを連れていけたのでは・・・?と思ったり。まあ、ぬいぐるみのことを忘れるくらい、切羽詰ってたんでしょうね~。


「“文学少女”と飢え渇く幽霊」

野村美月/エンターブレイン

ある日、文芸部の「恋の相談ポスト」に「憎い」「幽霊が」という文字や、謎の数字を書き連ねた紙片が投げ込まれる。心葉を巻き込み調査をはじめる遠子だが、見つけた犯人は「わたし、もう死んでるの」と笑う少女でだった。

久々の遠子先輩は・・・、やっぱり・・・、か・わ・い・い!
いやはや、悲しい運命(正しくは夏夜乃の嘘)に翻弄された雨宮家のみなさまは本当にお気の毒なのですが、本を読み終わって思い浮かぶのは、遠子先輩のラブリーな数々の奇行!流人を取り合う女の子たちに、夏目漱石を熱烈にオススメするなんて、素敵すぎる。笑。そして、マクドナルドの童話全集が焼けそうになったときは、「ウェルダンの本は美味しくないんだからー!」と必死に火消しする。前作に引き続き、遠子先輩の本への並々ならぬ愛情が感じられます。尊敬。嵐が丘は「ガラスの仮面」で読みました。が、これを読んだといってはいけないか。
やはり、引き続き遠子先輩の生態は謎に包まれています。妖怪なら妖怪でいいんだけど、妖怪も火傷するのかしら・・・?という疑問が。家族は?とか、まだまだシリーズを通して明かされてゆくのでしょう。心葉の方は放置です。彼の過去に関心はないな。
・・・なんだか遠子先輩だけひいき目になっちゃいましたけど、他にも気になるポイントちゃんとありましたよー。例えば、琴吹さんはもういい加減、心葉に告白してしまえばいいのに!!とか。シリーズ2冊目にして読者をこんな心境にさせるなんて、すさまじい怨念だと思いませんか・・・。あと1点。麻貴先輩が小説を書くという設定はちょっと無茶かなあ・・・。


「ボトルネック」

米澤穂信/新潮社

恋人を弔うため東尋坊に来た僕は強い眩暈に襲われ、崖下へ転落した。気づけば見慣れた金沢の街中に。自宅に戻ると、存在しないはずの姉に出迎えられた。ここは「僕の産まれなかった世界」らしい。

自分が世界にいなかったら・・・、と考える人はなかなかいないのでは。
考えたとしても、私がこの世界に産まれていなくても、大して変わりはないのではなかろうか、というところで終わりだと思う。まさか、自分がいないことで、世界が良い方に変わっているなんて、考えもしないだろう。ましてやリョウは、世界に無関心であることを身上として、流されるまま自分からは何もアクションを起こすことはなかったんだから。何もしなかったことが、マイナスの要因であったと知ったリョウの衝撃はかなりのものだと想像できます。振り返ると、世界にとって自分は存在しない方がいい、排除するべき邪魔なもの、ボトルネック、だと彼に突きつけるための物語です。なんて残酷な。
ただ、サキの世界でうまくいっていることがサキの言動のおかげだからといって、リョウの世界でうまくいかなかったことが、リョウの言動のせいだと結論付けるのは、私は間違いだと思うのですよ。彼はすごくネガなので、そう思っちゃったみたいですけど。大体、ノゾミ自身が、自分のあり方を人に求めるところが、もーダメダメなんだってば。お前が何になればいいかなんぞ、知るか!てめえで決めろ!って感じですよ。フミカが悪だくみしてるからって、旅行について行くなんて無理やし。それで、ノゾミに恨まれてもね、それは逆恨みですってば。・・・と、私がリョウ寄りの人間なので、ちょっと自己弁護してみました。
終わり方自体は、ブラックだけど気持ち悪くなるほどでもなく。しかしですね、タイミング良くリョウの携帯が鳴るところで、私の携帯もブーブー(マナーモード)震えたもんだから、どっきりびっくりして背筋が寒くなってしまいました。あれは怖かった・・・。
ところでところで、馴染み深いスポットがいっぱい出ていて、にやりとしてしまいました。ジャスコ周辺は生活エリアでしたから。懐かしいな~。


「片耳うさぎ」

大崎梢/光文社

蔵波奈都は小学六年生。引っ越してきた父の実家は、古くて大きなお屋敷で、どうしても馴染めない。しかも、このお屋敷には不吉な言い伝えがあるというのだ。弱った奈都が頼ったのは、ひとりの謎めいた女子中学生だった。

「晩夏に捧ぐ」の感想を忘れてしまいそうになりながら、シリーズ外の作品を。かわいい題名とは裏腹に、ちょいとブラックな旧家の過去が暴かれます。表紙はこんなにほのぼのしているのに・・・。
奈都のあまりのびびりように、てっきり家に一人ぼっちなのかと思っていたら、親戚いっぱい住んでるじゃん!ってつっこんじゃいました。笑。うーん、私も田舎の祖父の家は寒くて暗くてあんまり好きじゃなかったですけど・・・。こんなに怖がりだったかなあ・・・。
さゆりのキャラクターが少々受け入れにくかったかなー、と。だって、めっさ傍若無人じゃないっすか。年下の子が怖がってるのに・・・。とちょっと引いた目線で見てしまいました。その好奇心が無いと、物語が成り立たないわけですが!必要な人材なのですが!
舞台は主に蔵波家。の屋根裏。私、てっきりあの部屋は蔵なのかと思ってたんですが、見当違いでしたー。物語の説明でも、屋敷の内部は入り組んでいるので、どこをどう進んだか地図で追いかけるのをあきらめました。わかんねー。
最後にはまるーく収まって、後味良く終わっています。しかし、どうしても子供じみた印象を拭えない・・・。せっかく黒い題材を扱っているのだから、なんかスパイスみたいに、ぴりっと一つ欲しかったかなー。