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読書の記録です。

「あぶない叔父さん」

麻耶雄嵩/新潮社

鬱々とした霧が今日も町を覆っている。四方を山と海に囲まれ、古い慣習が残る霧ヶ町で、次々と発生する奇妙な殺人事件。その謎に挑む高校生の俺は、寺の小さな離れに独居してなんでも屋を営む、温厚な叔父さんに相談する。毎回、名推理を働かせ、穏やかに真相を解き明かす叔父さんが、最後に口にする「ありえない」犯人とは!

賛否両論の作品ですが、私は好きでした。
田舎町に住む高校生の主人公は、神社の次男。家業は兄が継ぐので、将来の夢も希望もまだなく、うつうつとした日々を送っている。そんな主人公が尊敬するのは、便利屋を営む叔父さん。叔父さんは優しく、いつも主人公の相談に適切なアドバイスをくれる。・・・ということで、探偵役は叔父さんですが、同時に犯人でもあります。みんな、わかったかな?ストレートにネタばらししちゃうと、1話を除いて、途中経過はともかく、最後のシメは叔父さんが殺っちゃってます。本人が犯人ということで、謎解きすなわち犯行の告白となります。
「叔父さん、ついつい突き飛ばしちゃったんだよね・・・(しょんぼり)」
お前かよ!と読者はツッコミを入れるわけですが、そこで叔父さんに心酔している主人公はこう思うのです。
「そうかあ、叔父さんったらしょうがないなあ。でも、被害者の名誉のために自分の犯行を隠蔽するなんて、叔父さんってなんて優しいんだ!さすがは叔父さんだなあ・・・。」
おいおい、そこは褒めるところじゃないだろ!通報だろ!というツッコミも空しく、事件の真相は闇へ葬り去られるのです・・・。ほぼ毎回このパターンで攻めてきますが、私はこのツッコミが楽しく、むしろつっこめなかった「最後の海」に不満を感じます。まさかの二人羽織が出てきたのもこの作品だったかな?叔父さんエラそうだったしなあ。
「転校生と放火魔」での四神になぞらえた放火と見せかけた隠蔽工作や、「藁をも掴む」で、犯人にタックルかけて殺しちゃったオチとか。とにかくシュールでした。
主人公の二股とかラブホのくだりは、どうも気分が良くなかったですね。チョーシ乗ってんじゃないよ!結局、どっちも大して好きじゃないんだろうね。本能を満たしたいだけで。
麻耶作品も初期のものを読み返したくなってきました。当時はよくわからないけどすごい。でも、おもしろさがわからなかった。笑。今読んだら少しはわかるかな・・・。


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