「オルゴーリェンヌ」
書物が駆逐される世界。旅を続ける英国人少年クリスは、検閲官に追われるユユと名乗る少女と出会う。追い詰められた二人を救おうと、突如現れた少年検閲官エノ。三人はオルゴールを作り続ける海墟の洋館に向かったが、そこで彼らを待っていたのはオルゴール職人たちを標的にした連続殺人だった!
少年検閲官シリーズ2作目。久しぶりの上下2段組の本で血が騒ぎました。笑。最近お目にかかってなかったもんで・・・。
海に沈みゆく世界。あらゆる書物が駆逐され、厳罰の対象となっている・・・という世界観を下敷きにしたミステリです。主人公は、ミステリ作家となるべく旅を続けるクリス。少年検閲官のエノ。そして、海に沈みかけの洋館から脱出してきた少女ユユ。キリイ先生と落ち合うために訪れた街で、追われているユユを助けることになったクリス。2人はエノに助けられます。なぜ、ユユが追われていたかというと、洋館にあるガジェットを持ち出したのではないかという疑いを掛けられていたため。ユユは無実を証明するため、クリスとエノの目的はもともとガジェット・・・と利害が一致した3人は、海上の洋館へ。
プロローグの舞台でもある海上の洋館は、オルゴール職人が集められオルゴールを製作している場所。先に乗り込んできていたもう1人の少年検閲官と交渉し、ガジェットの捜索を行うクリスたち。そんな中、第一の死体が発見されたのを皮切りに、オルゴール職人が次々と殺害される。
今回の舞台は、絶海の孤島・・・とまではいかずとも、本土と洋館をつなぐ道路が水没したことにより孤立した場所・・・クローズドサークルです。干潮の時に道路が出現しますが、今回はその干潮は終わったあと。犯人は、この中にいる!と思わせておいて、実は・・・のラストです。いや、私、この人のこと前作でちょびっと疑ってたんですよ。そしたら違ってたので、今回ももう死にそうだったし対象から外してたんだよなー。うーん、ここ来ましたか!
振り返れば、第二、第三の殺人のトリックは仕掛けなので、犯人がいなくても仕掛けが作動すれば犯行が可能なのです。私は心配性なので、仕掛けが不発だったときのことを考えると、自分の目で確認しないで落ち着かないのかしらーと思ってしまうのですが・・・。でも、無茶なようでいて、できそうなトリックはおもしろかったです。第二の殺人では、紙の摩擦?の力を利用した本を使った落とし穴。第三の殺人では、オルゴールの巻き取り部分を利用した時限装置。これは、当たるかな~?という感じでしたが・・・。一番最初のボートを使った串刺しよりは好きです。これが一番無理っぽいような。トリックがおもしろかったので、ついついそっちばかり注目してしまいましたが、エノの心の迷いやら、ユユの悲しい生い立ちなど、センチメンタルな雰囲気をオルゴールが彩る美しい物語でした。前作が結構ドギツイ感じだったので、覚悟して読んだのですが・・・。いえ、予想が外れてよかったです。笑。
今回は氷のガジェットが出てきましたが、あんまりガジェットの中身は関係なかったですね。これから、どんなガジェットが出てくるのかな~と楽しみにしてます。これを超える作品って結構難しいと思いますが・・・期待してます!
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