「夜の写本師」
右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。だが、育ての親エイリャが殺されるのを目の当たりにしたことで、彼の運命は一変する。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジスト。月の巫女、闇の魔女、海の娘、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。エイリャの仇をうつべく、カリュドウは魔法とは異なった奇妙な力をあやつる“夜の写本師”としての修業をつむ。
本当は「魔導師の月」の方を読みたかったのですが、どうせなら最初から読もうと思った次第。あらすじを読んだだけでは、話のイメージをつかみにくく(私だけかもしれませんが)、つかみどころのないまま読み始めました。読み始めてからも、物語のイメージを固められないままページが過ぎてゆきました。
カリュドウは、育ての親と幼なじみを殺された復讐心から、魔導師の道を志します。彼の才能は開花し、数年で兄弟子たちにひけをとらないほどの腕前に。しかし、彼の慢心ゆえに仲間の1人を死なせてしまい、破門になります。落ち込むカリュドウに、兄弟子は「夜の写本師」への道を勧める。夜の写本師は魔術に匹敵する力を持ちながら、その武器は自らが書くもの。魔導師とは別の存在なのです。写本師としての才能もあったカリュドウは、夜の写本師になり、とうとう本丸の魔導師アンジストが支配する国へ。
・・・そして、ここからカリュドウの前世の話が始まります。実は、カリュドウは偉大な魔導師の女たちの生まれ変わりだった!女たちを恐れ、女を殺し、その魔力を奪い取ることで自らの力を増幅してきたアンジスト。生まれ変わるたびに、彼への復讐を誓うが、力及ばず敗れてきた女たち。ここで、この物語はカリュドウ1人の復讐ではなく、前世からの何代もの魔導師とアンジストとの戦いの記録であることが明らかになるのです!うーん、悪い男よのう、アンジスト・・・。だけど、女性たちも結構コロッと騙されてるんだよなー。結果、すべての魔力を失った女は、男として生まれ変わった・・・ということに、アンジストはまだ気付いてない。そこがチャンス!
他の写本師たちの力も借り、無事アンジストを倒したカリュドウ。そして年月が流れ、彼の前に1人の少女が現れる・・・。きれいなまとめ方ですが、果たして彼は転生して良いのか?悪の道に進む前にカリュドウが導いてあげるのか?その後が少々心配・・・。
独特の世界観に、覚えにくい名前(笑)、そして前世の話が唐突に始まるので、読みにくく物語に乗れませんでした。残念・・・。呪いのワラ人形の作り方とか、魔法合戦の描写はすごくステキだったのに・・・。魔法って、炎がブワーッとか光がカッ!とかってイメージだったんですが、こういう表現もあるのか~と新鮮でした。地方によって色々あるっていうのもおもしろかったー。話の構成がちょっと違ってたら良かったのになと思いました。最初に前世のさわりを持ってくるとか。あの唐突感がいただけませんでした。
カリュドウ、いい男なのに、ずっと独り者っていうのも寂しかったなあ。年のとり方が違うっていうのも原因かもしれないけど・・・。あの彼女と一緒になるもんだと思ってたので、意外でした。そのせいで(かどうかはわからないけど)、彼女バツイチになっちゃったなんて、カリュドウも罪な男だよなあ。
この人の物語についていけるのか、非常に不安を感じるところですが、とにかく次は本命の「魔導師の月」を読むことにしよう。
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