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読書の記録です。

「ブラック・ベルベット」

恩田陸/双葉社

東西文化の交差点・T共和国。この国で見つかった、全身に黒い苔の生えた死体。入国後に消息を絶った、気鋭の女性科学者。ふたつを結びつけるのは、想像の域を遙かに超えたある事実だった。

「MAZE」も「クレオパトラの夢」も読んでいたはず。しかし、ウィルスハンター神原恵弥シリーズという認識がないまま読んでいました。なんとなくオネエ言葉の人また出てきたな・・・くらいに思っていたかもしれません。まさか、この人が主人公だったとは!わかってなくて、すんません。ほんまにすいません。
主人公と認識していなかった神原恵弥は、バイセクシャルの男性。大手製薬会社に勤務。彼は知り合いから女性科学者の捜索を依頼され、同時に画期的な新薬の存在を探るため「アンタレス」と名乗る人物とも接触をはかる算段で、T共和国を訪れる。
イスタンブールは伏せなくていいのか?という疑問を感じましたが、とにかくトルコのイスタンブールが舞台でしょう。後半、アンタレスと接触するため、カムフラージュで観光をするのですが、景色はキレイそうだし、料理はおいしそうだし、元カレとのムードは盛り上がるし(疑惑も盛り上がるけど。笑。)、いいところだねえ・・・と擬似観光モードに入ってました。もちろん、謎の方も魅力的でした。冒頭から刺される女、日本で起こる事故、黒い苔に覆われた死体・・・。どうつながるのか?そして恩田ミステリは投げっぱなしの可能性も高いので、肩透かしのときの心の準備も怠ってはいけません。笑。あとは、橘の秘めた情熱の炎なんかが、いやーんな感じでしたね!(←どんなや)なんとなく、ゲイの恋愛の方が業が深そうですよねえ・・・。
今回は、ちゃんと物語が着地していたので驚いた!しかし、「なーんだ」とは思ってしまいましたが・・・。特に、黒い苔にはそそられてたので残念っす・・・。最後に、風のように通り過ぎた彼女の一言はさわやかで、イスタンブールの美しい色彩とマッチした終わり方で良かったと思います。今、トルコ周辺も不穏で観光にいくのはためらわれますね。いつか、安心して行けるような情勢になると良いのですが・・・。
この本の結末がたとえ投げっぱなしでも、私激怒はしなかっただろうなあと思います。ほかの作家さんが結末投げっぱなしばっかりだったら怒ってるだろうけど、恩田さんの持ち味が疑心暗鬼だと思ってるからかなあ。物語の雰囲気がとても好きなのです。恩田作品を読み返したい病が出てきました。


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