「少し変わった子あります」
大学教授の小山が魅了されるようになった料理店は、予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるという変わったお店だった。その店に通っていた後輩が行方不明になったわけとは。
ミイラ取りがミイラになるんだろうなあ、と思っていたら、半分当たりで半分ハズレ・・・?のような気分。そもそも、主人公とは、一体誰のことなのか。本当に小山という男は存在していたのか?という何とも懐疑的な印象を受けました。
話はとてもシンプルで、毎回異なる場所で、見知らぬ女性と一度きりの食事をする、というものです。となると、自然に小山と女性の会話が中心となるわけで。森さんの作品の特徴として、お洒落・・・?というか、ウィットに富んだちょいと小粋な感じの会話を挙げることができると思うんですよ。それを丸々収めちゃった感じ。そして、毎回タイプの全く異なる女性が登場し、小山さんのハートともども私のハートもわしづかみにされてしまいます。特に印象に残ってるのが、ゴジラのお姉さんと、寡黙なお姉さん。お店が開かれている場所も魅力的。絶対高いと思う。←最終的に値段が気になる庶民。
今回は、ちょっと説教臭い文章が目立ちました。しかし、さすがはロマンチスト森。スイートなお説教がたっぷり詰まっています。
「動物は皆、ものを食べる、それは自分が生きるために必要な行為であるが、一方では、他の生命の殺生である、それを忘れてはいけない、本心から感謝をしていれば、おのずと正しい食べ方になるであろう、そういった道理がわかることが、人間である、それがわからなければ、すなわち動物の食べ方になる、動物の食べ方がいかに見苦しいものであるか、そこに存在する野蛮を、人間は隠さなければならない、そうすることで、人間たりえるのだ」
PR