「暗い越流」
死刑囚・磯崎保にファンレターが届いた。その差出人・山本優子の素性を調べるよう依頼された「私」は、彼女が5年前の嵐の晩に失踪し、行方が知れないことをつきとめる。優子の家を訪ねた「私」は、山本家と磯崎家が目と鼻の先であることに気づいた。折しも超大型台風の上陸が迫っていた。(「暗い越流」)。第66回日本推理作家協会賞“短編部門”受賞作「暗い越流」を収録。
若竹さん、めっちゃ久しぶりに読みます。なかなかコレ読みたい!と思うものが無く・・・。
この本は、ダークなお話が収録されているそうで、期待して読みました。
「蝿男」探偵の葉村晶は、今は廃屋になっている家から、祖父の骨壷を取ってきて欲しいという依頼を受ける。依頼人は、晶に依頼する前に付き合っていた(?)男性に取ってきてもらうよう頼んでいたのだが、彼とは連絡が取れないという。その彼は以前晶に心霊スポットの取材についてきて欲しいと依頼してきた男だったのだ。廃屋の不気味さ、地下へ続く階段。突き落とされた先にあるもの。そして、振り返った瞬間に見えた蠅男・・・。ハエといえば、私は、どっかで見た一発芸(茶こしを両目にあててハエ!)なんかを連想しましたが、なるほど、ガスマスクも蠅男ですねー。犯人は意外で全然わかりませんでした。っていうか、覚えてなくて戻って確認しました。心霊スポットの取材はおもしろかった!
「暗い越流」死刑囚に届いた一通のファンレター。弁護士から差出人の女性についての調査を依頼された探偵。女性は殺人犯の向かいの家に住んでいたことが判明する。何やら賞をとった作品。私は途中まで、探偵って前の話に出てきた探偵さんかいな。ちょっと感じ違うし、名前も出てこないし、性別も謎やけど葉村さんでええんかいな。と思いながら読んでましたが、全然良くありませんでしたね。死刑囚の話じゃない。悪い奴はまだ外にいた!
「幸せの家」和やかなお鍋の取材・・・ではなく、捜査中。カントリー雑誌の編集長が殺害された。残された資料から、編集長は複数の人間を恐喝していたことが判明。編集を手伝っていた女性が、メモを頼りに容疑者をしぼっていく。・・・これは最後までオチが読めませんでした。お鍋の取材がおもしろい。お年寄り本人が騙されてないと思っていたら、問題は表面に出てこないわけで。気付いたときには、犯人の支配下にあるかもしれないし。なんかこわいなあと思った。
「狂酔」教会に立てこもる男は、シスターを相手に自分語りを始める。男は小さい頃このあたりに住んでおり、誘拐されたことがあったのだ。父親からは、誘拐されたことを口外しないようきつく口止めされていたという。そして、彼が気付いた誘拐事件の真相とは・・・。誘拐犯の少女と、彼女の子供の狂信的な思いにぞっとした。どんなにひどい目にあっても、教会は帰りたい場所だった。そして、そんな彼女のすがるような思いを知りながら(だぶん知っていたでしょう)、いいように利用していたシスターたち。彼女が教会から迫害される理由と、犯人の男とのつながり。みんなの少しずつの悪意が、積もり積もったカレーライス。カレーは何いれてもカレーの味しかしないもんね・・・。
「道楽者の金庫」古本屋でいいように使われる探偵・葉村晶。今回は、持ち主が亡くなった屋敷の古本と開かずの金庫の鍵となるこけしの回収がミッションだ。仕事は順調に終わった・・・と思いきや、襲い来るこけし・こけし・こけし!!こけしのタコ殴りにあいながら、目的のこけしをみつけた晶は、こけしの暗号を解き金庫を開ける。開かずの金庫の中身は金目のモノではない!これマーフィーの法則。まあ、今回はマニアにはたまらないキワモノ作品の生原稿だったようです・・・。めでたし?こけしの胴体部分の線を使って数字を隠した暗号モノです。私の祖父が、民芸品を買うのが趣味だったらしく、遺品整理でけっこう出てきたんです。気に入ったものはもらったりしたんですが、こけしはどうも貰う気が起きませんでした。こけしの笑顔が怖いんだよなあ・・・。「結構高いんだって、このこけし!」と言っていた母も最後にはこけし捨ててましたから。高級だろうが何だろうが、夜中起きてきて、棚にこけしがずらっと並んでたら泣く!そんな風にこけしに思いをはせていたら、犯人が誰だか思い出せなくなってしまいました。
全体的にシリアス一辺倒ではなく、時々肩の力が抜けるところがあって良かったなと思いました。葉村さんは結構気に入ったので、葉村さんのシリーズを読んでみようかな。
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