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読書の記録です。

「秋の花」

北村薫/東京創元社

絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死。親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった。

シリーズ3作目。長編です。
夏祭りのお話で出てきた「私」の後輩に当たる、女子高校生2人組の悲しい運命。文化祭の準備のために学校に泊り込んでいた(生徒会のメンバーは泊り込んで準備することが伝統だったそう。)真理子が夜中に、学校の屋上から転落死してしまう。幼なじみの利恵は落ち込み、憔悴する。それから「私」の家に真理子の教科書のコピーなど、彼女の他殺を示唆するものが投函される。「私」は、母校へ聞き込みに行き調査を開始する・・・。
見回りの先生が屋上で人影を見つけ、駆けつけたときには鍵がかかっていて、当時の屋上は密室の状態であった。・・・けど、これは密室殺人の謎を解く話ではないのです。利恵の憔悴ぶりや雨の中を徘徊するなど自分を痛めつけるような行動から、彼女が何らかの形で事件に関与していることは明らかなので、どうやって屋上から突き落としたのか?というよりは、2人の間に何があったのか?という謎が主題かなあと感じました。仲が良すぎたら、かえってこじれたときが大変だよなーと思ったりしたのですが、この2人は本当に最後まで本当に仲が良かったんだなあ。それだけに、この結末はかわいそうでした。なんでこんなことしちゃったんだろう?って、私でも思う。きっと、怖くって、誰にも打ち明けられない。それもわかる。
人は誰でも間違いを犯しますが、相手が死んでしまったり、取り返しのつかない失敗だと、どうやってそれを償っていけばいいのか・・・。わかりませんでした。ごめんなさいじゃ済まないけど、謝るしかできないよ。真理子のお母さんも、娘を喪った悲しみや行き場のない怒りや悔しさを、どう消化していけば良いのだろう?円紫さんの謎解きを読んでから、しばし迷子の気分でした。でも、真理子のお母さんは、割り切れないものがあっても、答えを出したんだなあ。許すことはできなくても、救うことはできる。母親の懐の深さを感じる最後でした。
そういえば、「私」と正ちゃん江美ちゃんで、秋の散策をしてました。前作では散々江美ちゃんに文句をたれていた私ですが、主人公の「私」はもちろん怒っているはずはなく、3人で仲良くお喋りしていて良かったなあと思いました。最初はそうでもなかったけど、だんだん正ちゃんがお気に入りになってきました。さばさばした人が好きです。見ていて気持ちがいい!


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