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読書の記録です。

「貴族探偵」

麻耶雄嵩/集英社

信州の山荘で、鍵の掛かった密室状態の部屋から会社社長の遺体が発見された。自殺か、他殺か?捜査に乗り出した警察の前に、突如あらわれた男がいた。その名も「貴族探偵」。警察上部への強力なコネと、執事やメイドら使用人を駆使して、数々の難事件を解決してゆく。

捜査もしない!推理もしない!ただ女を口説くのみの貴族探偵。
果たして真相に気付いていたのか?本当は何もわかってないのに態度だけでかかったのか?最後までこの謎は解けないままでした。貴族たるもの、捜査などという肉体労働や、推理などという頭脳労働は、使用人にまかせるものらしいです・・・。
「ウィーンの森の物語」執事の山本が登場。推理にパンチが足りないなあー。メインの女性が怪しいのかな?と思ったりもしましたが、そんなことはなかった。女性は、貴族探偵の餌食・・・いえいえ、貴族探偵にエスコートされてゆきました・・・。山本は、年配で小柄だけれどもがっしりした体躯のベテラン執事さん。
「トリッチ・トラッチ・ポルカ」ケープから出る生首!死体にパーマ!切断された両腕!一番猟奇的でした。山本ではなく、メイドの田中が登場。この時は、えっ、山本は解雇?と思ったけど、貴族探偵は少なくとも3人使用人を雇っているようです。そっか、使用人って何人雇ってもいいんだ!使用人のいない平民には思いもよらないことでした・・・。田中は、若いお嬢さんで元気いっぱい!はきはき推理します。
「こうもり」うわー!だまされた!プチパニックを起こしてしまいました。読み返したけど、見事に矛盾がなくて降参です。本筋の謎がぶっとんでしまいました。えっと、誰が犯人でしたっけ?ってくらい。笑。常盤洋服店出されたら、誰だってそう思っちゃうよ・・・。
「加速度円舞曲」3人目の使用人、運転手の佐藤が登場。佐藤は武道の経験がある、がっちりした体型の男性。なんだか、話が普通すぎて物足りない・・・。
「春の声」強引なトリックが嫌いじゃない人はいけるかもしれない。結構な力技を見せていただきました。まあ、でも、こうでもしないと収まりがつかなかったでしょうね。最後は3人の使用人の競演でした。
どうにも、麻耶さんのミステリには、アクの強さを求めてしまうというか・・・。変態要素を探してしまうというか・・・。今回は、そういう意味でとてもソフトな読み心地でした。私としては、「こうもり」で変則的な話があったものの、全体的に少々物足りなかったです。
解説は千街晶之さん。千街さんの解説ってだけで、ミステリのグレードがアップするような気がしてしまう。


「刑事たちもお待ちかねのようだ。」

「お前の推理をご披露しなさい。」


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