「High and dry(はつ恋)」
十四歳の秋、生まれて初めての恋。相手は二十代後半の絵の先生。ちょっとずつ、歩みよって、恋人のように仲良くなっていく二人にやがて訪れる小さな奇跡。
よしもとばななさんの作品は、すごく久しぶり。
全集を固めて読んだ時期がありまして、その時に胃もたれみたいになってしまったのです。「私には重すぎる・・・。しんどい・・・。」と。それ以来、いわゆる「ばなな断ち」をしてきたのですが、表紙のかわいさに負けちゃった。ピンクと黄緑の組み合わせが素敵です。
そして、物語はポジティブな力に溢れていました。驚いた!今までの作品にも光はありましたが、どこか陰の部分が際立っているような印象が強かったので・・・。
主人公は14歳の女の子。時々不思議なものが見える、とても繊細な女の子。家族の関係も一般とは少し違う感じで、そこは、ばななさんだなあ、と思いました。アイスの新作をチェックする親子っていいなあ。
そんな彼女が想いを寄せるのは、絵画教室の先生・キュウくん。この人が、また繊細で正直で誠実な人。こんな20代後半の男性はいるのか。正直、うさんくさいな~くらいに思ってました。そしたら、ほつみさんの一言「単純ないい人で、きっと精神年齢は14歳くらいだよ」に納得。それからは、キュウくんが、すとんと受け入れられるようになりました。
じわじわと距離を縮める2人。その瞬間は、きらきらと輝いて、とても甘い匂いを放ち、砂糖菓子のように口に入れればすぐに崩れ去ってしまいそう。不思議でかわいい挿絵とともに、ぜひ味わってみて下さい。
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