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読書の記録です。

「砂漠」

伊坂幸太郎/実業之日本社

「大学の一年間なんてあっという間だ」学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。

これまた超能力が出てくるんですが、前作「魔王」と同じく物語のエッセンスとしてさらりと扱われているところが、非常に好感が持てます。
気になったのが、某大国への抗議のメッセージ。まあ、私も戦争が始まった時はトップの2人がリングに上がって殴り合いで白黒つけりゃいいのに、と思っていたクチなので、主張の内容に異議は無いのですが、ちょっとうるさい。その主張をしている西嶋君。やっぱりうるさい。でも、一番おもしろいキャラクターをしていて、途中まではとても好きでした。そう、シェパードをひきとるまでは・・・。
私は野良猫や鳩にエサをやる人種が大嫌いでして。ああいう人は、自分の気が向いた時だけ、同情したりかわいがったりして、いざその猫が、車に轢かれたり首を絞められて殺されたり病気になったりした時に見て見ぬフリをするのです。排泄物の処理もしません。死骸の処理なんてもってのほか。少なくとも私の知る範囲ではそうです。無責任な愛情ほど残酷なものは無い。西嶋がやっていることも同じなんです。飼育するあても無いのに、老犬を引き取って、飼う場所が無くて困ったから、実家に住んでる友達に飼ってもらおうなんて気まぐれ以外の何物でもないでしょう?お前は何様だ。とそう思ったのです。・・・私情が入りすぎました。反省。
軌道修正。
登場人物はそんな西嶋を始め、5人ともひとクセある奴らばかり。でも、探せばいそうな気がする。特に東堂さんがかわいいなあ。西嶋には勿体無いぜ・・・。あと、鳩麦という名前の響きがすっごく気に入りました。真面目にハンドルネームに組み入れようかと思うくらいにかわいい響きだ。途中、ハードな展開になりつつも、あくまで爽やかな路線を貫きましたが、失うということはそんなに簡単に吹っ切れるものでは無いのでは、という思いが最後まで残りました。
物語は終わってしまったけれど、どこかで、それこそ社会という砂漠の片隅で彼らは、今もおもしろおかしく生きているのではないかと思わせてくれます。


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