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読書の記録です。

「覚えていない」

佐野洋子/マガジンハウス

「金」と「愛の生活」こそ世の中の日本柱だと断じ、悪女と善人について語る。美人をめぐる男のダメさかげんを嘆き、着物の誘惑に溺れる。

おもしろそうな題名だったので、チェックを入れていたエッセイ。
最近、物忘れがひどくて、まだまだそんな年齢ではないはずなのに、時々今日が何曜日なのかさえ分からなくなる。自分が、前に処理した仕事のことを聞かれ、忘れてしまった時は、胸を張って「覚えてません!忘れました!」と言っています。最悪だ。笑。だって、忘れてしまった時は、自分のサインを見ても他人のもののようで、まったく何の糸口にもならないのです。
著者の佐野さんは、この本の発刊当時68歳。このエッセイは、50代くらいに書かれたもののようです。また、佐野洋子さんは「100万回生きたねこ」の作者であり、谷川俊太郎さんの元奥さんでもあるそうです。エッセイストとしても有名で、他にも多数の著書を残しているようです。「100万回生きたねこ」は超有名で、私ももちろん知っていますが、このエッセイを書いた人と、この絵本が結びつかない・・・!笑。絵本では情緒豊かに語られる佐野さんの世界ですが、エッセイの佐野さんは、本当にざっくばらんに切って捨てるお方のようです。
印象的なエピソードは・・・。「女の入口」で、究極の選択(?)にのたうちまわって悩んだ9歳の息子が、大きくなって何のためらいもなく見てくれを重んじるようになった。「ブルータスお前もか」の一言がツボでした。「カラオケセットと井戸端会議」。男性と女性の違いを的確についた話。これは、思わず吹き出してしまった。「山小屋の渡辺淳一」。そうか!渡辺淳一にはこのような読み方があったか!という発見。気持ちいいくらい、こけにしてます。「ねずみ版マディソン郡の橋」。「ねずみ女房」、読んでみたいなあ。こういう考察はとても好きです。おもしろい。
本当に、さっぱりしたお人柄がにじみ出ています。言いたいことははっきり言ってて、気持ちいい。そして、男性に対する深い愛情が感じられるなあと思いました。2回離婚した経験があるからこその、懐の深さなのでしょうか。
次に読むエッセイは「神も仏もありませぬ」にしよう。


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