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読書の記録です。

「ヒア・カムズ・ザ・サン」

有川浩/新潮社

真也は出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた・・・。

サイコメトラーEIJIを思い出しちゃうなー。
主人公の真也は、ものに触れるとものに宿った記憶や感情を見る能力を持っている。他人にはばれないように、かつ、人付き合いにさりげなく利用しながら、能力と上手く折り合ってきたつもりだった。しかし、真也は編集の仕事に就き、同僚のカオルの仕事に対する姿勢に打ちのめされる。人の気持ちを盗み見ることで、作家との衝突を避けている自分は、ズルをしているのではないか、と・・・。
劇団キャラメルボックスとの交流の中で生まれた作品。本編とアナザーストーリー?のような2編が入っています。
本編は、真也とカオルは好意を寄せる同僚という関係。カオルの父親はアメリカで活躍する脚本家・HAL。父親は仕事一筋で、家族をかえりみることがなかった。渡米を期に両親は離婚。カオルは父親に大きな反発を感じている。20年後、HALが帰国する。・・・が、彼の正体はHALではなかった・・・。一方、アナザーストーリーは、真也とカオルは付き合って3年。そろそろ結婚を考えている関係。カオルの父親は、同じく脚本家という設定。しかし、こちらは一気に弱弱しくなって(笑)、日本では芽が出ず、無謀にもアメリカに賭けて渡米したはいいものの、やっぱり鳴かず飛ばず。でも、対外的には活躍してるって見栄を張ってしまう親父になっています。
アナザーストーリーの方が、有川さんっぽい感じがします。恋愛要素とか、ダメな父親とか・・・。私は一途な榊さんが好きなので、本編の方が好きです。何か、健気ですよね。報われるといいんですが・・・。HALの正体は?というくだりは、ミステリーっぽくてわくわくしました。あとは、ヒロインのカオルが真っ直ぐで、悩みがあっても頑張ってて、かっこいい・・・んだけど、なぜかそんなに好きになれませんでした。真也もかなあ。能力について悩む部分も「ふーん」で終わりました。笑。うーん、ありきたりなキャラクターにありがちな話だったせいかな?
結局パラレルワールドっていっても、登場人物の造形を少しいじっただけで、大筋(主人公が彼女の父親との仲を修復させる)は同じです。なぜ、似たような話をもう一回読まなければならないのか?という不満が残りました。それなら、ボリュームを増やして長編1本か、お得意のスピンオフ、または全く別物の中篇1本にしたほうが絶対良かったと思います。


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