忍者ブログ
読書の記録です。

「リバーサイド・チルドレン」

梓崎優/東京創元社

カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、現地のストリートチルドレンに拾われた。過酷な環境下でも、そこには仲間がいて、笑いがあり、信頼があった。しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる。彼らを襲う、動機不明の連続殺人。少年が苦難の果てに辿り着いた、胸を抉る真相とは?

寡作の梓崎さんの新作、楽しみにしていました。
「叫びと祈り」も異国が舞台でしたが、こちらも舞台はカンボジア。主人公は日本人少年のミサキ。彼は何ヶ月か前まで日本で暮らしていたが、父親によってブローカー売られそうになり、逃亡。そのままストリートチルドレンとなった。彼らは、廃棄物の山の中からゴミを拾い、業者に引き取ってもらうことで日々の糧を得ていた。しかし、ある日仲間が死体となって発見される。殺したのは警官。だけど、ストリートチルドレンは人ではないから、殺したって罪にはならない。そんな中、今度は別グループのストリートチルドレンが殺される・・・。
唐突に助け舟が出てくるあたり、どうなんだろう?と思いましたが・・・。自力じゃないじゃん!あの旅人は「叫びと祈り」に登場した旅人?記憶が・・・あいまい・・・。
人身売買や売春、子供を道具として扱うかのような待遇。再婚するからって、父親が自分の子供を売るか?と思いましたが、あるんでしょうね・・・。貧富の差が激しく、教育が行き届いていないことによる問題。子供を守るべき大人が、子供を金儲けの道具に使うこと。大人を信用しない子供。発展途上国の問題を浮き彫りにした話でした。
あとは、ミステリー部分。最初に殺された子供は、警官が射殺したのだけど、その後はどうやら別の人間によって殺害されたようだ・・・。ということで、犯人を捜すことにしたミサキ。大人の目をかいくぐりながら捜査を進める。ところどころ、気を失ったり、幻想的な描写があるあたり梓崎さんのカラーだなあと思いました。結果的に、人間であることを証明するために殺したっていうのは、何だかピンときませんでした。すいません・・・。
事件は解決しても、ミサキたちはゴミを拾って生きていかなければならないし、急に回りの大人を信用することもできない。ただ、ほんの少し、自分の中の何かが変わった。そんな現実的な物語の幕引きが、梓崎さんが、このテーマをミステリーのエッセンスとして書いたのではないということを物語っていると思います。良い終わり方でした。


PR