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読書の記録です。

「太陽戦士サンササン」

坂照鉄平/富士見書房

暑苦しいまでの男気をみなぎらせ、異世界の勇者ジャバは、警視庁零課の咎回し来間鉄斎に、伝説の“太陽戦士サンササン”となることを強要する。ただし、勇者の姿は族メット。これこそ、未来を大きく変える運命の出会いだった!

第18回ファンタジア小説大賞準入選作品。
あとがきの要約を引用すると「お喋りメットで武装したシスコン刑事が鉄ゲタ少女を助けるために必殺ビームで戦うファンタジーアクション」・・・らしい。ここで、何か心魅かれるものを感じたなら、読んで損はないかな?と思います。
とにかく、ジャバの熱き正義の雄叫びが最高なんです。バイザーがかぱかぱ動くんです!笑。後半のタッグ再結成のところも、良い奴なんだよなあ。主人公のテツより、断然、濃い脇キャラに心奪われてしまう私でございます・・・。しかし、メインは家族愛。読む前の、メットをかぶった主人公がぼかすか敵を倒すのではなく、なんだかみなさん色々思い悩んでいます。ギャグ一辺倒だと思っていただけに、シリアス度が高いのは意外。
残念な点とは、正にそのシリアスな面なのですが・・・。まず、魔王ニカ・カジ。うーん、まあ、みんながみんな世界征服を企む必要は無いのだけれど、なんか、いまいち理解できない・・・。お姉さんの意思を継いで、闇の魔術でも人助けができるよーってことを証明したかった、ってことかいな?えーっと、で、シナの願いはテツと仲直りがしたかったと。途中まですごく盛り上がったのに、急にテンション下がったなー。まあ、ジャバが魔王を追うのも、主の命令なだけだし、テツは姉ちゃんの尻追っかけてるだけだし。登場人物に主体性を感じなかったなあ。
おおっと、こう見ると、ただの兄弟喧嘩の仲直り物語になっちまう・・・。いや、熱きジャバの男気は素晴らしいから!ってなんのフォローにもなってないや・・・。


「街中に響けばいい。世界中に響けばいい。異世界にまでも届けばいい。誰もがこの名を胸に刻めばいいのだ。」
さすがにそこまでビッグになったら、改名したほうがいいような気もする。


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「セカイのスキマ」

田代裕彦/富士見書房

麻我部中央英森学園に入学した小澤哲。部活見学の途中、古めかしい図書館に迷い込んだ哲は、オカルト同好会・四つ辻の会を主宰する宮守みこという少女と出会う。みこはクラスメイトから“狭間の住人”と呼ばれる変人だった。

「平井骸惚~」と同じ作者ですが、作風が全く違うなあ。あ、長編は読んだことないんですけど。なんか、こう、これは明らかに萌えを狙っているというか・・・。悪くはないんですけど・・・。ごにょごにょ。
物語は、妖怪(怪談)ベース?いや、民俗学なのかな?そういったオカルティックなものをベースにしていますが、哲の推理なんかは筋が通ってて良いと思います。キノコに関する話とか。それだけに、悠美のありふれた年上キャラや、何かを確実に狙ったみこのキャラクターが勿体無い。しかも、狙い撃ちきれてないところがさらに痛い。萌えなーい!うーん、帯にも「L・O・V・E!の虜」とか書いてある・・・。「はじめてをあなたに・・・」とか、どういうつもりでこのキャッチコピーを作ったのか。深読みしすぎな私。すんません。もう、私の脳内青年誌だな。笑。でも、オール新作という意味のキャッチコピーとしても、センス悪いと思うよ?
良い感じのカバーデザインだったのですが、中の挿絵があんまり上手じゃなかったので、残念でしたー。モノクロが上手な絵描きさんを探すのは大変だろうなあ。
ええっと、最後に一つ気になることが。人って、そんなに長いこと意識的に片目つぶったままでいられるもんでしょうか。どんだけウインク上手やねん。


「太陽の塔」

森見登美彦/新潮社

私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし、水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!

あの、話題の森見登美彦さん。こちらは、新潮文庫の100冊からチョイス。
色々なブログで紹介されていて、ずっと読む気マンマンだったんですよー。もう、他の本も買ってあるんです。積んであるんです。
こちらは、ファンタジーノベル大賞受賞作、森見さんのデビュー作ですかね。どの辺がファンタジーやねん、と裏手ツッコミを入れたくなるほどの、男の妄想に溢れている物語なのですが、まあ、そもそもファンタジーも妄想の産物のようなものなので、問題無いのでしょう。
小難しい言葉を捏ねくりまわして、アホらしいことをさも哲学的に語る様は、さすが変人の巣窟・京大生だなあと感心してしまいました。うん、京大はね、本当に変な人が集まるところですよね~。笑。学生の時に行った学園祭を思い出しました。
クリスマスを憎み、得体の知れない何かと戦い続ける彼ら。男汁を垂れ流しながら、脳内の妄想に遊ぶ彼ら。で、そんな主人公たちが、すごくおもしろくて、かわいく思えてきます。ちょいと私も仲間に加えてもらえんかね。
私は、岡本太郎さんの太陽の塔を、そこまですごいアートとは思えないのだ・・・。それはさておき、濃ゆい(そして汗くさい)男どもの中で、一見まともに見える水尾さんも、主人公と同じくらい濃い女性だと確信しているのです。似た者同士でも、うまくいかんものなのだなあ・・・。
余談ですが、今日手に入れたダ・ヴィンチの森見さん特集もおもしろかったです。


「我々を駆り立てる、このわけの分からない衝動は何であろう。おとなしくしていれば、普通の「幸せ」を享受し、堂々とクリスマス祭参加のチケットを手に入れることもできたかもしれぬ。「ええじゃないか騒動」などという何の脈絡もない暴動を画策する必要もなかったであろう。
我々のどうしようもない偉大さが、つまらない型にはまることを拒否したのだと煙に巻くことは簡単だ。
しかし。
しかし、時には型にはまった幸せも良いと、我々は呟いたこともあったのではないか。」
寂しいと一言で済ますのは簡単だ。でも、それだけじゃない何かがあるのだよ!わかるだろ?な?な?


「ジョン平と去っていった猫」

大西科学/ソフトバンククリエイティブ

高校二年から三年に上がる前の春休み。重とジョン平が化学室のドアを開けると、そこには見慣れない女の子が立っていた。岡崎三葉と名乗った女の子は、追っ手からかくまってほしいと二人に告げる。

正直、2巻が出ているのを発見した時は「えっ、続いてるの?」と思ったものです。しかし、思い返せば、終わりの方で意味深な忠告をされたり、何かが起こりそうな予感を漂わせてはいたんだよね・・・。このゆるゆるーな調子で、果たしてどこまで続くのか。ちょっと厳しいかも。
前作の事件の背後がすこーし明らかになった今作。一高校生の重とゆる犬のジョン平が、またまた騒動に巻き込まれます。三葉の色仕掛け(実は違う)にはまりそうになった時は、「正気を保てっ!」と活を入れながら読んでましたとも。いやー、私やったら、即先生に引き渡してます。能力の効果を差し引いても、三葉を見放さなかった重は本当にいい子だなあ、と。いい子と言えば、ちゃんと怒ってくれる相棒のジョン平もいい子。本当に魔法使いと使い魔の関係がいいな。今度の伏線は、エンダーの意味深な態度でしょうか。エンダーは一体何を知っているのかー。
またまた寧先生も登場しまして、すでに出ている3巻での出番が楽しみなところです。かわいいジョン平ラブですが、私、やはり、きれいなお姉さんも好きなのです。


「DクラッカーズⅠ」

あざの耕平/富士見書房

7年ぶりに日本に帰国した姫木梓を待っていたのは、陰を持つようになった幼なじみの物部景と、彼がカプセルと呼ばれるドラッグを常用しているという事実。カプセルの真実の効力、それに秘められたキーワード。“鍵”がかみ合った時、梓の前に姿を表す世界とは!?

第一回龍皇杯でDクラッカーズを読んだ時、ものすごい衝撃を受けました。
当時私が抱いていたライトノベルのイメージと言えば、明るくて、楽しくて、ギャグがあって・・・みたいな感じだったのですが、これの全く真逆を行く作品だったのです。あとがきにも書かれていた通り、暗くて不気味で救いの無い物語。挿絵も暗くて、かわいい女の子が出てこないのが驚き(笑)でした。それが、何故か私のツボにはまったのですよ!終わり方なんか、もうしびれました。残念ながら、受賞は逃したのですが、その後文庫化された時は小躍りするほど嬉しかったのを覚えています。ところがですね・・・。こ、これが、全然印象の違うものに仕上がっていたのです・・・!挿絵は妙にかわいい感じになっちゃってるし、おちゃらけた雰囲気だし、何よりミステリー?文庫だし・・・(ここでも偏見)!がっかりを通り越して、腹が立ってしょーがなかったのです。ちくしょう、もう続きなんて読んでやるものか。と決意して幾年後。どうしてどうして、人間とは年と共に変わってゆく生き物です。何故か、もう一度読んでみようと思ったんです。前置きが長くなって申し訳ない。感想は・・・。
・・・うん、おもしろかった!
年月が経って、冷静に読めたというのが大きな原因だと思います。まー、挿絵はまだ受け入れがたいところなのですが・・・。千絵のキャラクターを受け入れることができたから、この物語を楽しむことができるようになったのかなあ、と思います。
長編ということもあり、世界観の広がりも魅力の内のひとつ。大きな組織に立ち向かう少人数、という構図は燃えますねー。あとは景ちゃんに、もっとぶっとんで欲しい~。カプセルを噛み砕くシーンが、病んでる感じがして、やっぱりいいなあ。
えーっと、いまいちだったーのが、探偵役・千絵嬢の推理がくどいこと!笑。畳み掛けるような物語の展開が、そこで滞ってしまっているような気がして、もったいなかったなー。小鼻を膨らませる千絵さんは、かわいいんだけど・・・。
2巻の3分の2くらいまで収録されていたのですが、1巻のシメよりも圧倒的にカッコイイ切り方ではないですか!これはぜひとも続きを読まねば。梓さんの伏線も気になるところ。
しかし、改めて富士見ミステリー文庫の方向性に首をひねらざるをえない。笑。もう、なんでもありやん。


「伊達眼鏡は変装の基本じゃない。」
確かに。確かに!